VidMeet1 announcement from Amsterdam

2017年09月20日 水曜日


【この記事を書いた人】
山本 文治

1995年にIIJメディアコミュニケーションズ入社。それより映像とインターネットの間をさまようエンジニアとなる。2005年よりIIJ勤務。2017年よりVidMeetを主宰。SNSはLinkedInにて。

「VidMeet1 announcement from Amsterdam」のイメージ

IBC2017視察のためアムステルダムを訪れています。毎日の最高気温は15,6度程度で、冷涼な空気と少し色づき始めた木の葉に秋の訪れを感じます。天気雨が降ったかと思うと高い空と夏の雲が広がり、気象にも異国情緒を感じます。

アムステルダムはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)の本拠地でもあります。幸運にも今シーズンのオープニングセレモニーが行われるRCO Opening Nightに出張日程が重なり、9月14日夜のコンサートを楽しんでくることができました。簡単にレポートしましょう。

コンセルトヘボウを正面から望む。トラムの停留所や自転車で疾走する人々の姿がアムステルダムならではの景観を演出する

RCOが本拠地とするコンセルトヘボウは1888年に落成したホールです。アムステルダム中央駅からトラムで15分ほど南下したところにあり、芝生が広がるミュージアム広場に面して位置しています。内部に足を踏み入れると正面のパイプオルガン、そしてやや高めに作られているステージが目に入ってきます。メイン客席は後方(ホール正面)に向かって水平に並び、両翼にバルコニーが張りだすスタイルです。

RCO Opening Nightはコンサートシーズンの幕開けにあたるイベントで、簡単な食事やドリンクが提供されるなど社交パーティとしての一面も持っているようです。今回はマキシマ妃が参列することが事前にアナウンスされており、ドレスコードも指定されていました。私もタキシードを着用してコンセルトヘボウに向かった次第です。パーティで歓談しようにも、相手がいないのがつらいところですが…。

正装した参加者のために、カメラマンが記念写真を撮影するブースも用意されている。筆者も撮影を依頼した

コンサートはまずモーツァルトの楽曲がいくつか、休憩を挟んだ後半はドヴォルザークの交響曲第8番が演奏されました。前半はヨーロッパの空気が色濃く感じられる一方、交響曲からは近現代的な構成を覚えるところがあり、その対比が興味深い経験となりました。同じオケ・同じ指揮者・同じ会場での演奏で、作曲家の時代や作風、テーマの作り方が異なることを改めて知るなんて面白いですね。(同僚との綿密な打ち合わせの結果敢えて選んだ)会場後方の席で鑑賞しましたが、各パートの楽器からの音がしっかりと分離して聴こえてきたのも驚きでした。

このコンサートの模様はPrimeSeatでもお楽しみいただけます。
こう書くと私がまるでPrimeSeat関連でコンサートに行ったように思われるかもしれませんが、あくまで偶然、自腹参加です(笑)。

RCO OPENING NIGHT -2017- (Live & On Demand) | RCO Live PrimeSeat Special | PrimeSeat

個人的にはソプラノのディアナ・ダムラウがバルコニーに登場して「フィガロの結婚」のアリア「スザンナは来ない」を歌った場面が、演劇的な瞬間を感じさせて良かったですね。

さて、このページは「エンジニアブログ」であることを思い出しましょう。アムステルダムへやってきたのはIBC2017にてVideo over IP関係の技術を調査するためです。関連のセミナーにも参加しましたが、Video over IPの新しい規格「SMPTE ST 2110」が承認される運びとなったことがアナウンスされていました。実際には2110-10/20/30が先行し、今後出版されるようです。

規格の出版前という状況にもかかわらず、各メーカはSMPTE ST 2110へのキャッチアップを大きくアナウンスしています。IPへの移行は業界でのコンセンサスが形成され、メーカとしては当然備えるべき技術となってきています。IPへの対応をアピールするようになったメーカは増える一方で、チェックするのも大変です。

IBCの会場は例年RAI Amsterdam。イベントホールは15もあり、位置関係の把握は困難を極める

そんな中、IPへ対する「熱さ」を感じさせたのが「IP Showcase」です。規格化団体が共同でオーガナイズしたイベントですが、各ベンダーが集まりインターオペラビリティのデモを実施していました。その一角で間断なく開催されるミニセミナーには多くの聴衆が集まりました。特に導入事例を紹介するセッションはホットトピックであり、幾重にも人垣ができ部屋に収容しきれないほどの訪問者がありました。

IP Showcaseの会場。会期の5日間中に、実に92回ものセッションが実施された。奥にインターオペラビリティデモ会場が見える

SMPTE ST 2110によるVideo over IPのプロトコルスイートの(一旦の)完成は、始まりでしかありません。メーカの開発者に話を聞くと、実用上の問題はまだ大きく残されているように思われます。またVideo over IP機器同士の発見・登録やコネクションを規格化するAMWA IS-04, IS-05にもスケーラビリティやセキュリティなどの課題があるとのコメントがありました。また、現状SMPTE ST 2110でカバーされるビデオの種類は非圧縮のみです。TICOやJPEG2000, VC-2やLLVCといった軽圧縮・高品質系の圧縮アルゴリズムをいかに標準化し、規格に取り組んでいくかはこれからの活動になります。

日本国内でも各メーカがVideo over IPへのコミットメントを深めています。当然のことながら各社によって開発にかけてきたコスト(時間や労力)には多寡があります。また技術的なアプローチも様々です。しかしそんな中でも「どのようにVideo over IPというマーケットをプロモートするか」という問題意識は、各社間で暗黙のうちに共有されているように思います。

そこで、「VidMeet」というイベントを始めることにしました。日本でも展示会を中心にしてVideo over IPの技術が紹介されるようになってきましたが、公開の場でのレクチャーやデモの機会はまだ限られているのが現状です。Video over IP市場はこれから熟成していく段階にあり、必要な人(ニーズ)に必要な人(知恵)が出会う必要があると感じています。

一方、IIJではこの数年Video over IP技術の実証実験に取り組んできました。そこで得られた知見をユーザにフィードバックする時期が到来したと感じています。つまり、Video over IP技術はreadyであることを広くデモンストレーションできる段階に到達しています。

今回開催する「VidMeet1(ビッドミート・ワン)」はユーザとメーカ、ソリューションプロバイダとの出会い、実地デモ、そして議論ができる場を意図しています。参加者には、ぜひ積極的な参画をお願いします。

VidMeet1は10月4日(水)の13時30分より17時10分までの予定で、IIJ本社にて開催されます。参加費は無料(事前登録制)となっておりますので、ぜひ下記のリンクを辿っていただき、内容の確認と登録をお願いしたいと思います。

VidMeet1 | IIJ

当日皆さんにお会いできること、またプログラムやデモンストレーションをお届けできることを楽しみにしております。なお、当日のドレスコードはありません。気軽にお越しください。
Happy VidMeeting!

山本 文治

2017年09月20日 水曜日

1995年にIIJメディアコミュニケーションズ入社。それより映像とインターネットの間をさまようエンジニアとなる。2005年よりIIJ勤務。2017年よりVidMeetを主宰。SNSはLinkedInにて。

Related
関連記事