携帯電話はどうやってMVNO設備へ接続しているの?

日付:2016年07月07日 木曜日
テーマモバイル
執筆者大平 智弘

はじめまして、モバイル&ブロードバンド技術課の大平です。
私はMVNOに関する設備の検証や運用などに従事しています。
本記事では、主に携帯電話がMNOと呼ばれる携帯電話キャリアの設備からMVNOのネットワークにどのように接続されるか紹介します。

最近、MVNO、格安SIMといった言葉がインターネットや家電量販店で見受けられるようになり、MVNOによるモバイルインターネット接続サービスへの認知が少しずつ進んできました。
しかしながら、キーワードとして何となく知っている方々がまだまだ多いように感じています。
そこで今回、そもそもMVNOって何か、MVNOユーザはどのようにインターネットへ接続しているのか紹介したいと思います。

MVNOとは?

簡単に言えば、eNBやNodeBと呼ばれる無線基地局などを持っていない事業者のことで、MNOから設備を借り、自社設備との相互接続によってインターネット接続サービスを提供しています。接続方法にはMVNO網内に、4GではPGW、3GではGGSNと呼ばれるパケット交換機や認証設備を配置したレイヤ2接続、認証設備だけを配置したレイヤ3接続があります。IIJではサービスの自由度を高めるため、通信ポリシーなどが制御できる前者を採用し、個人のお客様に対してはIIJmioというブランドでサービス展開しています。

携帯電話からMVNOのネットワークへの接続シーケンス

普段、スマートフォンの電源をいれるとすぐに、動画を見たりゲームしたりできるように見えますが、それまでに携帯電話と網の間でデータを流す通り道を作っています。
今回は、4Gのシステムを例にとってデータ通信が利用できるまでの道のりを紹介します。
ただし、MVNOが借りている設備はMNOが運用してることから、全てのメッセージを確認できるわけではありません。
下の図に示すようにMVNOではPGWや認証設備だけでなく、携帯電話の通信速度を制御するPCRF、PCRFから伝えられるメッセージを実行するPCEF(今回は物理的にPGWに内包されていることとします)、通信量をカウントするOCSと呼ばれる設備も用いられています。これらが連動することにより、細かい制御が可能となっています。図には一部のモバイルパケットコアの設備を示しましたが、実際にはルータ、スイッチ、CGNAT、DNS、顧客管理システムなどがあったり、冗長化されていたり、拠点も複数あったりして、多くの設備が存在しています。同時に、それらに異常が無いか監視するシステムも動いています。また、MNO側ではeNBやそれを収容するSGW以外にMMEやHSSなどといった装置も存在します。

mob_NW_r1

下図に携帯電話からMVNOの設備への接続シーケンスを表しています。
SGWやPGWでは、GTPv2-C、認証設備ではradius、PCRFやOCSではdiameterなどといったプロトコルが用いられており、それに応じたメッセージが送受されます。IIJ_mob_seq_r2

  1. SGWを通して、携帯電話からIPアドレスとDNSアドレスの割り当て要求が来ます。PGWでも携帯電話に設定しているAPNというネットワークを識別するものを設定していて、それを見て正しいPGWに着呼します。
  2. ここでユーザの認証をします。MVNOの設備によっては認証が複数実施されることもあります。
  3. 携帯電話に応じた、高速通信、低速通信などの通信ルールを割り当てます。
  4. 許可された通信量を提示するための最初のメッセージを送ります。
  5. MNOを通して携帯電話へIPアドレスとDNSアドレスの割り当て応答を返します。
  6. ユーザの通信が始まるというメッセージです。
  7. 許可された通信量を提示します。例えば、一気に数GB提示せず、いったん10MB配ってユーザが使用し終わると、次の10MBを配るといった制御を繰り返し実施したり、Quota-Holding-Timeと呼ばれる属性を用いて一定時間通信していない状態を検知したりできます。

このようにして、データを流す道を作って、インターネットへ接続できるようにしています。
これはあくまで一例であり、例えば5番のメッセージの前に6番のメッセージを送るといったシーケンスもありますし、ユーザが設定しているAPNの認証の後に、MVNO事業者がより細かくAPNを分けて認証しているケースなどがあります。

まとめ

今回、携帯電話からMVNOへの接続について、簡単な構成と接続シーケンスを紹介しました。
この記事がMVNOに対する疑問点解消や認知の向上に寄与できれば幸いです。
今後も携帯電話に関する設備について書いていきたいと思います。

略称

モバイル設備には略語が多く、今回の記事に用いたキーワードについて紹介します。

    • eNB: evolved NodeB
      4Gの無線インタフェース(基地局と携帯電話間の接続方法などのルール)に対応した無線基地局のこと。3Gでは、4Gと異なる技術が用いられており、NodeBと呼ばれる。
    • SGW:Serving Gateway
      eNBを収容したり、3Gとの制御メッセージを交換したり、MMEと呼ばれる移動管理装置からのメッセージに基づいて、データの制御をしたりするパケット交換機。
    • PGW:PDN Gateway
      4Gのシステムで携帯電話で使われる通信手順を終端して、IPのネットワークに接続する、IPアドレスを割り当てるなどの機能をもつパケット交換機。S/P-GWとして物理的に同じ機器に収容することもできる。
    • GGSN:Gateway GPRS Support Node
      3Gのシステムで携帯電話で使われる通信手順を終端して、IPのネットワークに接続する、IPアドレスを割り当てるなどの機能をもつパケット交換機。物理的にPGWと同じ設備を用いて、その中で機能を分割して利用することもできる。
    • PCRF:Policy and Charging Rules Function
      通信のポリシー(高速通信/低速通信など)を決定し、PCEFへ実行を指示する機能。
    • PCEF:Policy and Charging Enforcement Function
      PCRFからの通信ポリシーを実行する役割を持つ機能。物理的にPGWと同じ設備を用いて、その中で機能を分割して利用することもできる。
    • OCS:Online Charging System
      リアルタイムに通信量をカウントする機能。残りの通信量はQuotaと呼ばれる。
    • APN:Access Point Name
      モバイルネットワークとIPのネットワークの間にあるPGWを指定する機能。ユーザから見ると3Gも4Gも同じAPNである一方で、事業者内では別々に管理するために、仮想APNを用いていることもある。
    • CGNAT: Carrier Grade NAT
      通信事業者が事業者網内でNATを行うこと。ISP shared addressとして100.64.0.0/10が確保されており、ユーザに割り当てられる。

参考

IIJで以前に紹介されている関連記事について示します。