デザイン思考 ~新サービス・ソリューションを目指して~
2020年09月17日 木曜日
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はじめまして。IIJの佐藤 雅子です。
私は、新サービス・ソリューションの企画・推進に携わっています。
新サービス・ソリューションを生み出すためには、いろいろなアプローチ方法がありますが、今回はその中から「デザイン思考」を取り上げます。
デザイン思考は、昨今、世の中でも注目されていますが、私が実際に取り組んでみて感じたこと・考えたことを紹介します。
デザイン思考とは
そもそも、デザイン思考とは何かというと、イノベーションのための方法論です。
過去のデータや経験に頼らずに、ユーザインタビューや観察、体験などを通して、ユーザが本当に求めていることや潜在的なニーズに着目し、そこからアイデアやコンセプトを生み出していくというものです。
私は、初めてデザイン思考でアイデアを考えてみた時、最初に想像もしなかったアイデアに行きつき、アハ体験のようなものを感じました。
いつも、このような体験につながるわけではありませんが、その面白さと革新的なサービス・ソシューションを生み出す可能性を感じ、社内でデザイン思考を実践したり、社内に展開するためのワークショップを実施したりするようになりました。
デザイン思考を使いこなすスキルも必要
新サービス・ソリューションを生み出そうと、まだ世の中に存在しないものや未知なものに取り組んでいると、ユーザインタビューをしてみて、テーマ設定が広すぎたと気づいたり、インタビュー対象が正しくなかったことに気づいたりすることがありました。
初めてインタビューした時は、うまく聞き出せずに終わってしまったこともありましたし、まとめたコンセプトをユーザに見せると、想定よりも改善のフィードバックをたくさんいただくこともありました。
(思い返すと、いろいろ失敗していますね。。)
でも、デザイン思考は、好奇心と遊び心をもち、まず行動してみて改善する心構えで臨みましょう、Fail Fast, Learn a Lotで行いましょうと言われています。
やってみながら改善していけばいいのです!
(私はプロジェクトマネジメントを専門にしていて、綿密に計画を立てることが身についていたので、Fail Fast, Learn a Lotの考え方に慣れ、それらの使い分けができるようになるまでには、少し時間がかかりました。)
しかし、改善する手前の段階で、デザイン思考をうまく進められていない状態自体に気づけなかったり、その結果、改善できなかったりという状況、つまり、デザイン思考を使いこなせていない状況が有りえると思います。それが、いつもアハ体験が起こるわけではない原因の1つだと私は考えています。
その為、私は、デザイン思考を使いこなすスキルも必要だと考えています。
デザイン思考を使いこなせるようになる前に、「デザイン思考をやってみたけど、あまりいいアイデアが生まれなかったな」と感じてしまう方がいたら、とても残念です。
チームでの実践が難しい場合もあるかもしれない
デザイン思考では、多様性のあるチームで実践した方がイノベーションが生まれやすくなると考えられています。
でも、環境によっては、周りを巻き込んでチームで実践するのは敷居が高いと感じる方もいるのではないかと思います。
1人で出来る練習方法の紹介
すぐに周りを巻き込んでチームで実践することが難しい場合、それにデザイン思考を使いこなすスキルも必要という観点からもおススメするのが、普段から1人で練習しておくことです。
※デザイン思考として、普段から1人で練習しておきましょうという考え方はありません。個人的な考えです。
今回は、その練習方法を紹介します。
この記事を読んでくださっていて、同じような思いを持っている方がいたら、参考にしていただければと思います。
デザイン思考で定義されている発見、詳細化、探索、実験、展開というフェーズに沿って、紹介していきます。
発見:ユーザに対して深い共感を見出す
自分自身の行動の振り返り
本当は、ユーザを理解して共感するフェーズですが、ユーザを理解する練習のために、まず自分自身の行動を振り返ってみます。
ここでは、自分の一日の行動を振り返り、感情をグラフ化します。
さっと考えてみることが大切なので、手書きで書いてみることをおススメします。
例は、夏のリモート勤務のある一日です。
以下のような一日でした。
- 朝はマラソンをしようと思っていたのに断念してしまいました。そのままリモートで仕事を開始します。
- リモート会議が続き、ヘッドセットを長時間つけていた為、耳が痛くなってしまいました。
- お昼は、夏休み中の子供とランチをしました。リモート勤務だからこそ出来ることなので、短い時間でも満足できました。
- 夕方には疲れが出てきましたが、寝る前にヨガをしてリフレッシュできました。
ストーリーの深堀り
次は、一日の中で、特徴的・重要だった出来事について、「なぜそのような行動をしたのか」「どういう思いだったのか」ということを掘り下げていきます。
今回の例では、マラソンを断念したところを掘り下げてみます。
- 走らない言い訳は、コロナの感染が心配、暑い…。
- 本当は走って健康を維持したいと考えている。健康には気を付けている。
- マラソンは続けられていないけど、ヨガは続けられている。
⇒同じ運動なのに、なぜかヨガは続けているといった矛盾があるところにヒントが隠されている可能性があるので、そこを更に掘り下げていきます。 - ヨガは夜にテレビを見ながらやっているので続けられているのかもしれない。
楽しみながらできるとか、他の要素があると、がんばれるのかもしれない。etc.
詳細化~探索:ユーザの抱える課題を明確にしてアイデアを探求する
課題のリフレーム
次は、気になったことに焦点をあてて、それをより良くできないか、いくつかの視点で何かできないかを考え、まとめます。
今回の例では、マラソンを断念したところに焦点をあてて、より良くできないかを考えます。課題を「どうすれば毎日のマラソンを楽しく継続的にできるか?」と設定してみます。
アイデア創造
次は、課題に対してアイデアを出していきます。
アイデアの質を気にするとアイデアが出てこなくなるので、アイデアをたくさん出すことを意識します。突拍子がないものでも思いついたら、まず書いて、楽しんでいきます!
アイデアは、違ったものの組み合わせで生まれるので、可能性がないと思ったアイデアから次のアイデアが生まれることもあります。
今回の例では、4つのアイデアを考えました。
実験:早い段階でユーザからフィードバックをもらい改善する
振り返ってみて、良かった点や改善点を書き出してみます。
本当は、ユーザからフィードバックをもらうフェーズなので、誰かに見せてフィードバックをもらえると、なお、いいです!
今回の例では、4つ目の「マラソンのおススメコースを選ぶことができる」というアプリケーションのアイデアに対して振り返ってみます。
このアイデアでは、家の近所を走っているとマンネリ化してきて楽しくなくなっていたことに着目し、毎日、いろいろなおススメコースが提案されて、そこから走るコースを選べたら楽しいなと思い、考えました。
そして、振り返ってみて、「おススメコースに、美味しいお店や素敵なお店を通るコースがあるとよい」という改善点を考えました。
以前から、知らない路地に入っていき、美味しそうなお店や素敵なお店を見つける散策も好きだったことを思い出したのです。
展開:関係者にアイデアを表現し、解決策の実現性を高める
振り返った結果を踏まえ、アイデアを1つ選び、4コマ漫画のようにストーリーをまとめていきます。
アイデアを選ぶ時は、有用性、実現性、革新性の3つの観点で評価します。
ストーリーをまとめる際は、以下の観点を意識し、そのアイデアの前後の変化がわかるように表現します。
- どんなことを掘り下げたのか
- どんな課題を設定したのか
- どんなアイデアを思いついたのか
- アイデアによってどう変化するのか
今回の例では、「マラソンのおススメコースを選ぶことができる」というアプリケーションのアイデアに対して、振り返ったことを踏まえてストーリーをまとめてみました。
以下のようなストーリーにしています。
- マラソンをやりたいけれど、がんばることができていない…。
- どうすれば毎日のマラソンを楽しく継続的にできるか?
- 「マラソンのおススメコースを選ぶことができる」というアプリケーションを使って、美味しいパン屋さんを通るコースを選んで走ってみる。
パン屋さんの前を通ると、パンの美味しそうな匂いがしてきてパンが買いたくなり、パン屋さんに立ち寄り、買って帰る。 - 走り終わってから、美味しいパンを食べて、仕事をスタート!
仕事もはかどり、明日はどのコースを走ろうかウキウキしている。
本当は、アイデアを実現させるために、このストーリーを関係者に共有し、アイデアやコンセプトを理解してもらい、協力をお願いしていきます。
実際のプロセスより簡略化しており、1人で考える方法にアレンジしているのでアイデアの幅は広がりにくいですが、この方法で、デザイン思考の大きな流れは練習できます。
世の中の商品やサービスを見る気持ちにも変化が
デザイン思考を知ってから、私は、世の中の商品やサービスに対して、どうしてこのアイデアが生まれたのか、こんなニーズがあったのではないかと思い巡らすようになりました。
きっと、1人で出来る練習方法を繰り返していくと、そのようなワクワクする気持ちになってくると思います。
そして、デザイン思考を使いこなすスキルが身に付き、実際にデザイン思考を実践する時には、アハ体験を感じ、新しいアイデアが生まれるようになるのではないでしょうか。
IIJでワクワクするサービス・ソリューションが生み出せるように
現在、エンジニアが直接お客様にインタビューさせていただくなどして、デザイン思考も活用しながらサービス・ソリューションを企画中です。
快くインタビューに協力していただけるお客様と出会い、本当に感謝しています。
そのようなお客様のためにも、IIJでワクワクするサービス・ソリューションが生み出し、ネットワーク社会に貢献できるように、私も日々、邁進していきます!