JANOG41 Wi-Fiチーム報告書1(事前準備)

2018年07月10日 火曜日


【この記事を書いた人】
佐々木 英嵩

IIJ ネットワーク本部IoT基盤開発部 センサーネットワーク課 入社以来、SEIL/SMF関連の業務に従事しています。 SEILとRX-7をこよなく愛してます。

「JANOG41 Wi-Fiチーム報告書1(事前準備)」のイメージ

こんにちは、JANOG41 NOC(Wi-Fi)チームの佐々木です。
本記事では無線LAN提供する上での事前準備に着目してお話をしていきたいと思います。
昨年末のアドベントカレンダーで公開した「JANOG41無線LAN提供」の続きとなります。

Wi-Fiチームでは今までにいろいろなイベントで無線LAN提供を行ってきましたがどの回を取っても「時間」と「(想定外の)トラブル」との勝負でした。
そのため「始まるまでの準備」と「始まってからの機転」が無線LAN提供において非常に重要となり、その中でも特に準備が8割方の勝負を決めると言っても過言ではありません。
ここでは私たちWi-Fiチームがイベントの「前日までの準備」としてどういう作業を行っているのかをご紹介します。

6ヵ月前

部材の選定と準備

必要な部材の検討と調達を始めます。

この時期にあったイベント無線LAN提供での反省を踏まえながらJANOG41に向けて必要なものの洗い出しを行います。

現地調査

百聞は一見に如かずとの言葉にもあるように会場の状況は実際に見てみないとわかりません。
そのため、入念な現地調査が必要になります。
現地調査では以下の事を中心に確認を行います。

  • 施設の構造
  • 既設ネットワーク
  • 電源
  • 養生方法(壁養生、床養生、ゴムマット)
  • 搬入口と搬入経路

広島国際会議場は電源が充実しており、既設のネットワークを利用させてもらうことが出来たので、当日に電源の増強工事や部屋を跨ぐような大きな配線作業が必要ありませんでした。

機材の持ち込みなどで搬入する必要があるため、当日の混乱のないように搬入口と搬入経路に関してもしっかりと確認します。

3ヵ月前

メンバー召集とチーム結成

3ヵ月前になり、いよいよ本格的に動き始めます。メンバーを募集し、チーム分けを行います。
今回は以下のようなチーム編成になりました。このチーム分けに沿って作業を進めます。
ホストとしてただ無線LANを使ってもらうだけではなく見て楽しんでもらいたいとも考え「見える化」つまり、運用監視ツール構築・開発にも力を入れてます。

チーム名 業務内容 人数
統括・諸々
  • 各チームの進捗管理や対外調整
2人
L3ネットワーク構築
  • 管理用ネットワーク設計
  • GW用ルータ設定
4人
L2ネットワーク構築
  • 各種SW設定(PoE, core)
  • AP設定
4人
運用監視ツール構築・開発
  • 展示用ダッシュボード画面作成
  • ログ監視用基盤作成
  • 転送量モニタ画面作成
  • 設営状況管理ツール作成
  • Machinist&SACMカスタマイズ
6人

※ただし設営・撤収時はこの枠にとらわれず柔軟に作業します。

定例ミーティングの開催

この時期から定例ミーティングを開催し、各チームの進捗確認を行います。

ネットワーク設計

現地調査の結果などを踏まえながらネットワーク設計と無線APの設置レイアウトを考えます。
固まってきた設計・情報は図に落とし込み、関係者に共有します。
なるべく多くの情報が共有できるようにネットワーク図、L2構成図、配置配線図などに細かく情報を記載しておきます。
ここに掲載した図はblogの為に制作したものではなく、実際にメンバー間での情報共有に利用したものです。

運用監視ツール構築・開発

今までのイベント無線LAN提供での経験を元に運用監視に必要なツールの構築を行います。
例)weathermap, zabbix(以前のイベントより)

自社サービスと組み合わせたり専用の新規ツールの作成も行います。
例)machnist, 無線LANコントローラ(以前のイベントより)

(ツールに関して別の記事で紹介します)

1ヵ月前~2週間前

ホットステージ構築とテスト

ネットワークの設計が終わり、使用する機材が揃ったらホットステージ(本番模擬環境)の構築を行います。
当日は設定する時間などがないため、このホットステージで使用する設定や動作確認を一通り行います。
実際に組むことで設計や設定の不備や考慮漏れなどを未然に防ぐことができます。

1週間前

ホットステージ解体~梱包~出荷

会場への運び込みに備えてホットステージ解体と梱包作業を始めます。
梱包する際には設置・展開を一番に考えて部屋や場所ごとに部材をまとめます。

箱には宛先を書いておくとともに内側に部材リストを貼り付けます。
非常に時間がかかる作業ですが、ここに時間をかけることで当日はこの箱を持っていくだけで展開・撤収作業をスムーズに行うことができます。

SWに関しても事前にポートアサイン表を貼り付けておくことで結線作業時間の短縮や刺し間違いの防止につながります。

配送業者と協力して荷物の搬出を行います。
今回は広島国際会議場までJITBOXを利用しました。JITBOXは「ボックス」と呼ばれるカゴ台車をチャーターするタイプの輸送サービスです。
JITBOXを使うことで大量の荷物をまとめて運ぶことができるため、配送事故による部材の紛失を未然に防ぐことができます。

 

2日前

最終ブリーフィング

全員が直前で集まれる最後のミーティングなので、タイムスケジュール、配線・配置、移動経路などに関して最終確認を行います。
このイベントでは特に天候面で不安があったため、緊急の際の対応方法に関してもここで共有します。

1日前

現地入り

現地への移動に当たっては不測の事態に備えて飛行機と新幹線に分かれて広島に向かいます。
東京は前日からの大雪のため、飛行機が飛ばないのではないかとヒヤヒヤしました。

また広島でも雪が降っておりました。

最終的には飛行機組も新幹線組も無事到着することができました。

荷物の確認と仕分け

広島国際会議場に着いたらすぐに荷物が揃っているかどうかの確認を始めます。

 

当日の作業をスムーズに始めるため、この時点でコンテナから段ボールを降ろして行き先ごとにグループ化を行い、すぐに運べるように代車に載せておきます。

※ここで1つ事件が起きたのですが…(これは次回の記事で)

当日

タイムスケジュール

今回は09:30作業開始で12:30には一般入場開始となるため、約3時間で基幹部分とメインホールの構築を終える必要があります。
並行作業を行う必要があるため、以下のようなスケジュールを組んでいます。

NOC設営

ホスト部屋には我々が運用するためのNOC(ネットワークオペレーションセンター)が設置されるため、真っ先にインフラの整備を行います。
NOCには各監視ツールを表示するためのディスプレイや短焦点プロジェクタなどが設置され、現在の状況を常に表示するようにしています。
また連絡用のトランシーバも置かれており、音声ベースの情報も常に流れています。

ダクトスペース立ち上げ

BBチームの記事でも紹介があったインターネット向けのゲートウェイは、ダクトスペースと呼ばれる場所に設置されます。
そこにWi-Fiチームも各会場のハブとなるSWを設置します。
他にも監視サーバなどがいるイベント無線LAN監視クラウドに接続するためのVPNゲートウェイとなるSEILも設置しております。

作業開始

実際の会場と図面を照らし合わせながら作業を始めます。
実はほとんどのメンバーはここで初めて会場のファシリティを見ることになるため、最初の方は念入りに図面を見ながら徐々に会場に感覚を慣らして作業を進めていきます。

今回、JANOG41では4つものフロアに会場がまたがっていたため、移動する際には以下のような移動経路となっており会場構造を覚えるのが非常に大変でした。

配線と養生作業

来場者の安全面に配慮しながら素早く配線作業と養生作業を行います。

PoE SW結線と立ち上げ

AP立ち上げの肝となるPoE SWの立ち上げを行います。
ここではホットステージで書いたポートアサインに従ってSWへの結線を行います。

AP設置

APの設置方法は場所に応じて多種多様です。
大半のAPは譜面台に固定する形をとりますが一部のAPはアンテナマストに取り付けたり椅子や台などに直接置く場合もあります。

そして会期

ここまでで事前準備と当日の構築作業が完了し、無線LAN提供ができる状態となりました。
次の記事で会期中の様子に関してお話をしていきたいと思います。

佐々木 英嵩

2018年07月10日 火曜日

IIJ ネットワーク本部IoT基盤開発部 センサーネットワーク課 入社以来、SEIL/SMF関連の業務に従事しています。 SEILとRX-7をこよなく愛してます。

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