Starlinkの動的IPアドレスはどれくらい変化するのか?調べました
2025年01月20日 月曜日
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Starlinkは固定IPアドレスを提供するサービスはなく、動的IPアドレスで提供されています。アドレスはDHCP等で更新されますが、実環境はどれくらいの頻度でかわるのか?データを収集してみました。
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Starlinkが提供するIPアドレスについて
IPアドレスの仕様についてはFAQにわりと詳しく説明されています。
https://www.starlink.com/jp/support/article/1192f3ef-2a17-31d9-261a-a59d215629f4
要約するとこんな感じになります。
IPv4
- 「デフォルト」と「パブリック」2種類のポリシーがある
- デフォルトはCGNAT用のIPアドレス 100.64.0.0/10 から配布
- パブリックはインターネットから直接アクセス可能なIPアドレスが割り当てられる
- パブリックが使えるのは「優先」がついたプランのみ
IPv6
geoip情報から取得した日本のIPアドレス範囲は以下になります。
65.181.4.0/24,JP,JP-13,Tokyo, 65.181.5.0/24,JP,JP-13,Tokyo, 65.181.6.0/24,JP,JP-13,Tokyo, 65.181.7.0/24,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.104.0/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.104.128/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.106.0/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.106.128/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.109.0/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.109.128/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.124.0/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.124.128/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.125.0/25,JP,JP-13,Tokyo, 206.83.125.128/25,JP,JP-13,Tokyo, 2406:2d40:3000::/40,JP,JP-13,Tokyo,
実機から取得したIPアドレスと比較するとIPv6のSLAACは2406:2d40:3000:0000::/64 から 2406:2d40:3000:ffff::/64 の間、最初の16bit 分を使うようにみえます。そうするとDHCPv6-PDで配布される範囲は2406:2d40:3001:0000::/56 から 2406:2d40:30ff:ff00::/56 ということになるかと思います。
以上からIPv6に関してはほぼ16bit分のPrefix空間が確保されているようです。
IPアドレスの収集について
今回、3か所(白井・大阪・松江)で収集しました。期間は大体1ヶ月です。IPv4の割り当て方法やネットワーク機器などが違うので表にしました。
設置場所 | ルータの種類 | IPv4アドレス |
白井 | Starlink標準ルータ | デフォルト |
大阪 | SEIL/X86 | パブリック |
松江 | Starlink標準ルータ | デフォルト |
収集方法はそれぞれのStarlink配下にある機器からインターネット上の機器にアクセスしたときのIPアドレスを記録します。1時間間隔で収集してすることで、時間と共に変化するIPアドレスがわかるようにしました。
デフォルトポリシーを使っている白井と松江はアドレスが変化しました
白井で変化したときの記録はこんな感じです。
これをみるとIPv4アドレスが変化したタイミングでIPv6アドレスも変化したようにみえますが、機器は
2406:2d40:30**:**00::a97 (DHCPv6によるルータからのアドレス配布) 2406:2d40:30**:**00:ce7e:d8c6:fdc4:2e5e (RAによるIPアドレスの自動設定)
と2個のアドレスがついている状態から
2406:2d40:30**:**00:ce7e:d8c6:fdc4:2e5e (RAによるIPアドレスの自動設定)
と1個だけになっているようです。
Starlink標準ルータの環境ではIPv6アドレスはRAによる自動設定されたIPv6アドレスとDHCPv6で配布されてIPv6アドレスの2個がついています。IPv4アドレスが変化するとDHCPv6によるIPアドレスの配布が一時的に停止し、アドレスは1個に減ります。その後DHCPv6配布が復活し、元のIPアドレスに戻っているのではないかと考えられます。
パブリックポリシーを使っている大阪は変化しませんでした
大阪はSEIL/X86をつかっていてDHCPv6によるIPv6アドレスの配布をしていません。最初からIPv6アドレスは1個で計測期間中は変化しませんでした。IPv4アドレスについても変化しません。
計測期間中に変化した回数を確認、そして、、
約1ヶ月の間、記録し続けた所、白井と松江は10回近く変更がありました。一方で大阪は一度も変更がありません。
設置場所 | ルータの種類 | IPアドレス | 1ヶ月間の変化 |
白井 | Starlink標準ルータ | デフォルト | 10回 |
大阪 | SEIL/X86 | パブリック | 0回 |
松江 | Starlink標準ルータ | デフォルト | 9回 |
ここでふと、「Starlinkの標準ルータはファームウェアのアップデートと再起動が頻繁にある」という事を思い出しました。試しに明示的にルータを再起動してみたところ、IPv4アドレスが変化しました。なるほど、、
この事から、デフォルトポリシーのIPv4アドレスを使っている場合、Starlink標準ルータを再起動すると利用されるIPv4アドレスは変化しますがIPv6 Prefixは変化しないという挙動になるようです。
長期間Starlink標準ルータを再起動させなければIPv4アドレスは変化しない可能性もありますが、ファームウェアのアップデート・再起動は強制なのでIPv4アドレスは不定期に変わると考えたほうがよさそうです。
パブリックポリシーのIPv4アドレスを使っている場合にはルータを再起動しても変化しないと考えられます。
ちなみにhome 5Gでは
HR02の環境ではルータを再起動する度に、IPv4アドレスもIPv6アドレスも変化しました。変化しないようなコントロールは難しそうです。