Starlinkとhome 5Gを色々と比較してみました
2024年12月02日 月曜日
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【IIJ 2024 TECHアドベントカレンダー 12/2の記事です】
ブログを書くようになって、Starlink導入の相談を受ける機会が増えてきました。個人・法人に関わらずStarlinkに興味を持ってくれる人が増える事は嬉しいものです。そのなかでよく比較・検討の話題に上がってくるのはNTTドコモが提供するhome 5Gです。僕は会社のオフィスでhome 5Gを実際につかっているので、これをStarlinkと比較する事にしました。
home 5GとStarlinkそれぞれの環境と計測方法について
home 5G は現行機種のHR02でIIJがある飯田橋のオフィスビル18階フロアで使用しています。Starlink は第1世代時代のアンテナ(UTA-211)とWi-Fiルータ(UTR-201)の組み合わせで、白井のIIJデータセンターに設置したものを使う事にしました。2箇所を継続的に計測するために、Google Cloud内で構築した仮想サーバにsmokepingを導入、それぞれのネットワークの先にあるRaspberry Piとの遅延を計測する事にしました。
アーキテクチャを比較してみる
図にしてみると両者はとても似ていて、違いは無線区間の実現方法だけのようにも見えます。
どちらも回線とISP・Wi-Fiルータまでセットで提供され、契約するだけでインターネットが利用できる環境を提供してくれます。設置についてはStarlinkは屋外の開けた場所にアンテナを設置する必要がありますがhome 5Gは携帯電波が届く屋内だけで完結できるという違いがあります
ルータの仕様を比較してみる
ルータ部分は細かいので表にしてみました。
回線種類 | home 5G | Starlink |
ルータの型番 | HR02 | UTR-201 |
LAN側のIPv4ネットワーク | 192.168.128.0/24 変更可能 | 192.168.1.0/24 変更不可 |
LAN側のIPv6ネットワーク | グローバルユニキャスト(/64) | グローバルユニキャスト(DHCPv6-PDで配布されたものから/64) ユニークローカルユニキャスト(/64) |
IPフィルタ(暗黙ルールは強制適用) | あり | なし |
コンテンツフィルタ | なし | あり(DNSを利用したもの) |
DNSサーバ(IPv4) | 192.168.128.1をDHCPで配布、変更可能 | 192.168.1.1をDHCPで配布 変更可能 |
DNSサーバ(IPv6) | ルータの「リンクローカルアドレス」240a:40:0:5008::9 240a:40:0:5008::a をDHCPv6で配布(3個のIPアドレス) 変更不可 | ルータの「ユニークローカルアドレス」をDHCPv6で配布、変更可能 |
NAT設定 | 2種類から選択、タイマー調整可能 | 詳細不明 |
WAN IPv4アドレス | 「IPv6シングルスタック方式 」192.0.0.2を割り当て | 100.64.0.0/10 からDHCPで割り当て |
WAN IPv6アドレス | LAN側と同じプレフィックスから自動割り当て | 自動割り当て、LAN側とは別のプレフィックス |
気になるところを挙げていくと、
- UTR-201はIPアドレスの設定を変更する事ができません、お仕着せの設定のまま使う事を想定しているようです。
- DHCPで配布するDNSサーバの設定に関してHR02はIPv6のDNSサーバを変更できません(管理画面にメニューがない)。IPv6が有効なクライアントはIPv6のDNSサーバ参照が優先されると思うので、管理者の意図したような挙動にならない可能性があります。
- IPv6はグローバルユニキャストアドレスがついていますが、インターネット側からは直接通信ができません。このフィルタは解除できないようです。
CGNATについて
どちらもインターネットへの出口でNATされるわけですが、NAT後のソースポート番号の割り当て方に違いがありました。
StarlinkはNATされたあとのソースポート番号は端末側と関係なくランダムな値になるのに対して、home 5Gは端末側と同じポート番号でアクセスしていました。
IPアドレスの共有利用についてはStarlinkの方が積極的にみえます。home 5GはIPアドレスの共有をしていない、共有していたとしてもできるだけ端末側と同じポート番号を使うような挙動になっているようです。
通信品質(遅延)を比較する
今回インターネット側からsmokepingで計測しているのですが、そのままでルータのフィルタに邪魔されて通信できません。そこで以前にブログで紹介したNetmakerをつかいVPN経由で通信できる状態にしてからから計測しました。ちなみにNetmakerは以前紹介したときからサービス形態が大きく変わっています。今回はオンプレ構築の無償版で構築しています。Netmakerは便利なので、再度紹介したいと思っています。
home 5Gの計測結果はこんな感じになりました。
Starlinkの計測結果はこんな感じです。
平均RTTではStarlinkの方がhome 5Gよりも15%ほど良い結果になりました。一方でStarlinkの方が値の変動が大きい事もわかります(黒いモヤモヤの広がりが大きい)。Starlinkは性能が異なる複数バージョンの衛星が混在しているので掴んだ衛星による影響もありそうです。
結論
今回home 5GはLTE環境での計測だったので、5G通信を使う本来の性能はもっと高いのかもしれません。ただStarlinkとどっちを使う?という場所に5Gが来ている保証もないのでどちらを使うのか悩む事になりそうです。Starlinkを多拠点展開しているお客さんの話を聞くと、日本中のどこでも安定した性能が期待できるのはStarlinkという印象を持ちました。屋外にアンテナを設置して引き込むという手間はかかりますが、するだけの価値はあるかと思います。
最後に自宅のフレッツ回線を同じ方法で計測したものと、home 5Gのダウンロード速度を計測したものを載せておきます。参考になれば幸いです。
自宅のフレッツ環境を計測、途中で大きく数字が改善しているのはIPv4接続をPPPoEからIPoEに切り替えた影響です。PPPoEでの計測は混雑時間帯の劣化が厳しかったので急遽IPoEに切り替えました。切り替え後は7msあたりで安定しています、ただ絶対的な遅延はPPPoEの方が少し良いというのが悩ましいです。
飯田橋のhome 5Gでのダウンロード速度(午後3時頃に計測)
正直home 5Gに期待する性能としては今一つという結果かと思います。Starlinkは平均して200Mbpsぐらいの速度は期待できます。
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