夏の甲子園中継から見たIPv6普及状況

2019年12月05日 木曜日

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IIJ 2019 TECHアドベントカレンダー 12/5(木)の記事です】

はじめに

IIJは、 朝日新聞社と朝日放送テレビならびに運動通信社が提供する高校野球の情報サイト「バーチャル高校野球」の試合動画のストリーム配信を担当しています。Yahoo! JAPANの春の甲子園ライブ配信の報告(※1)に触発され、今年の夏の甲子園大会の配信サーバのアクセスログを基にIPv6の利用状況について調べてみました。

※1)IPv6でのライブ配信とリクエスト傾向 ~ 選抜高校野球大会の配信事例 #IPv6. Yahoo! JAPAN Tech
Blog. 2019年8月13日. https://techblog.yahoo.co.jp/entry/20190813720409/

今年の夏の甲子園の概要

甲子園での本戦は、2019年8月6日から22日にかけて、14日48試合が行われました。8月22日の決勝戦では、約700Gbpsの最大トラフィックを記録しました。この日は決勝戦の一試合しかありませんでしたが、日毎のアクセス数でも過去最高となりました。

HTTPライブストリーミングでは、クライアントのプレーヤーがプレイリストに追加されていくセグメントファイルを順次ダウンロードして再生します。今回は、配信サーバのアクセスログから正常に配信されたセグメントファイルの記録を抽出し、リクエスト数や転送したコンテンツのバイト数を集計しています。ユニークユーザ数は、クライアントのIPアドレスとユーザエージェント(リクエストに含まれるブラウザのタイプやバージョンを示す情報)のユニークなペア数としてカウントしています。また、ユーザエージェントを分類して、モバイル(スマートフォンとタブレット)、PC、その他(ゲーム機、ボット、フィーチャーフォン、未知の端末)に分けています。モバイルとPCはあくまでクライアント端末の種別です。したがって、モバイル端末が4Gなどの移動通信網を使っているか、それともWi-Fi経由で固定ブロードバンドを使っているかまでは分かりません。

図1は日毎のリクエスト数、転送バイト数、ユニーククライアント数を、モバイル、PC、その他の端末に分けて示したものです。その他の端末はほとんど識別できない程少ないので、以降はモバイルとPCについてのみ見ていきます。

図1 日毎のリクエスト数、転送バイト数、ユニーククライアント数

日毎の視聴数は曜日や試合の話題性と展開などによって増減します。図中土日休日は背景をグレーにしています。以前は週末には自宅でテレビ視聴をするユーザが多くアクセスが大きく減りましたが、今年は10~12日の三連休には減っていますが、17~18日の週末には逆にアクセスが増えています。アクセス数や転送バイト数では、日によってモバイルが多い日とPCが多い日がありますが、大体半々ぐらいです。一方、ユニーククライアント数だと断然モバイルが多くなります。これは、モバイルでの視聴はクライアントあたりの視聴時間が短いためです。

IPv6の利用状況

図2は、図1の日毎のリクエスト数、転送バイト数、ユニーククライアント数のそれぞれに対するIPv6の占める割合を、全体、モバイルのみ、PCのみについて示しています。ここから、モバイルのIPv6割合がPCに比べて高く、日に依らずぼぼ一定である事が分かります。一方、PCでは日に依って多少の増減があり、その影響で全体のIPv6割合が増減していると考えられます。全体の平均では、リクエスト数の24%、転送バイト数の26%、ユニーククライアント数の32%がIPv6です。

図2 日毎のリクエスト数、転送バイト数、ユニーククライアント数に対するIPv6割合

次に、クライアントのIPアドレスから対応するAS番号(事業者番号)を調べ、トラフィック量(転送バイト数)でトップ10の接続提供事業者について、その全体に対する構成比率とその事業者内でのIPv6割合を表1に示します。全体で見ると、トラフィックが多いのはOCN、ソフトバンク、KDDI、ドコモの順となっていて、この4社で全体の61%を占めています。モバイル端末に限ると、ソフトバンク、KDDI、ドコモ、OCNの順で、この4社で全体の77%を占めています。

表1 トラフィック量トップ10事業者

各社のIPv6割合を見ると、事業者によって大きく異なる事が分かります。ソフトバンクが目立って多く、特に、モバイルでは60%近くがIPv6となっていて、積極的にIPv6利用を展開している事が分かります。その一方で、IPv6割合がゼロの事業者も少なくはなく、事業者による温度差がかなりある事が分かります。(なお、フレッツ光ネクストのIPoE接続の場合はVNE事業者のIPアドレスに集約されるので、IPv6ユーザがいてもその事業者にカウントされない場合があります。例えば、So-netユーザのIPv6 IPoEトラフィックはJPNE社に集約されKDDIにカウントされます。)

また、IPv6の利用によって通信品質に違いがあるか、ビットレートや再生遅延などを調べてみましたが、有意な差はみられませんでした。アクセスログの限られた情報からは、端末や動画再生ライブラリなどの違いによる影響の方が動画再生時の通信品質にとって大きく、通信部分の違いは分からない程度に小さいと言えそうです。

Yahoo! JAPANの今年の春の甲子園のライブ配信の報告では、リクエストの平均IPv6比率は19%でした。今回のリクエストのIPv6比率は24%なので、5ポイント程増えています。しかし、ヤフー社の報告では、ライブ中継動画をYahoo! JAPANトップページに掲載した影響からか、モバイルの割合が5%程度しかなく、今回の結果と比較するのは難しいと思われます。

まとめ

今回のデータは、過渡期にある国内の一般ユーザへのIPv6普及状況のスナップショットと見ています。コンテンツが高校野球なので視聴者層に偏りがあるのは確かですが、連日百万前後のユニークユーザが観測されていて、相当幅広い利用者が含まれています。

ここから言えるのは、コンテンツ配信でIPv6は普通に使えるようになってきている事と、コンテンツ事業者間にも通信事業者間にもIPv6推進には温度差があるものの、積極的なところは相当進んでいるという事です。

コンテンツ側の配信系をIPv6対応すれば、現状で1/4程度はIPv6になります。また、IPv6に起因するトラブルも減っていて、数年前とはだいぶ状況が違っています。

通信事業者においては、将来の設備の簡素化やコスト面でのメリットを考えて積極的にIPv6への移行を展開している事業者がいる一方で、まだ、様子を見ている事業者も少なくありません。

IPv6利用のための環境は整っているので、何かトリガーがあれば急速に普及が進む可能性があります。来年の状況がどうなっているか、夏の甲子園が楽しみです。

長 健二朗

2019年12月05日 木曜日

IIJ 技術研究所に所属。インターネット計測とデータ解析などの研究に取り組んでいる。

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