「こんなもの作った!」の展示会 Maker Faire Tokyo 2026に参加してきました

2026年09月29日 火曜日


【この記事を書いた人】
doumae

IIJ 技術統括部長 最近はインターネットの技術を紹介するのがお仕事です。元々プログラマ、サーバ・データセンター・ネットワーク・セキュリティ・モバイルといろいろやってきました。

「「こんなもの作った!」の展示会 Maker Faire Tokyo 2026に参加してきました」のイメージ

自分が欲しいものや、面白いと思うものを、自らの手で作る。さらに、その作品や作り方をほかの人と共有する。こうした活動に取り組む人たちを「メイカー(Maker)」と呼び、その広がりは「メイカームーブメント」と呼ばれています。

Maker Faireは、メイカーが自分の作品を持ち寄る展示発表会です。電子工作やロボット、AI、3Dプリンター、クラフトなど、扱う分野はさまざまです。会場では作品を見るだけでなく、作った本人から発想や仕組みを直接聞くことができます。

2026年9月5日、6日に開催されたMaker Faire Tokyo 2026にも、「こんなものを作った!」というメイカーの熱意が詰まった作品が集まりました。

https://makezine.jp/event/mft2026/

個人から企業まで、さまざまな背景を持つメイカーが参加する中、IIJは、特に「学生Maker」を応援するコンテスト「Young Maker Challenge」に協賛し、「IIJ賞」を贈りました。この記事では「IIJ賞」をお贈りした作品と、それ以外に堂前が個人的に気になった作品を紹介します。

※以下のコメントは、審査員を務めた堂前が会場で出展者さんから伺ったお話をもとに書いています。堂前の聞き間違いや理解不足により、実際の作品や作者の意図とは異なる内容が含まれているかもしれません。出展情報のリンク先から各製作者さんのWebサイトなどにリンクしているので、そちらも一緒にご覧ください。

~なんでも食感生成~ VRレストラン「Yummyverse」 (東京農工大学-電脳レストラン)

https://makezine.jp/event/makers-mft2026/m0202/

「存在しない食べ物の食感を体感する」作品です。
存在しない食べ物って……「デニムケーキ」や「ドラゴンの肉」などなど。生成AIをフル活用して、VRの「見た目」、食べ物を食べる「音」、噛んだ時の「振動」を作り出し、体感させる作品です。
この一年でAIができることが飛躍的に増えたことを感じています。社会全体で、「AIをどのようにリアルと関係させるか」について、様々な検討が行われています。そういった文脈の中でこの作品は「食感」という新しい領域にチャレンジし、それをMakerらしい作品にまとめ上げた点に着目しました。

お話を伺うと、もともとは、食べ物を食べることが難しい高齢者に「食べる」という感覚を持ってもらうための研究として始まったとのことです。その「食感」をAIで生成している途中で、「AIなら存在しない食べ物の食感も生成できるのでは?」と思い立ってこういう展示になったということでした。
そこから「コンクリートの食感ってどんなだろう」という方向までぶち抜けるところに、マッドサイエンティスト的な何かを感じました。そんなところもMaker Faireにふさわしいと思い、IIJ賞をお贈りすることにいたしました。

Tac Photo (Tac Project)

https://makezine.jp/event/makers-mft2026/m0212/

「デジタルフォトフレームってあまり見かけなくなったじゃないですか」と開発者がおっしゃっていました。確かに、一時期「デジカメで撮った写真を飾りませんか」みたいに、各社がデジタルフォトフレームを販売していました。携帯電話ショップでも「ご一緒にフォトフレームはいかがですか」ぐらいの勢いで、3G通信対応のフォトフレームが配られていたのを思い出します。

開発者さんも、3G対応のデジタルフォトフレームを離れて暮らすご家族のもとに置いていらっしゃったそうですが、それが3G停波で遠隔からの更新機能が使えなくなり、代わりになるフォトフレームを開発されたそうです。
ここで私が面白いな、と思ったのは、フォトフレームをスマホから設定する際、Bluetoothのような近距離無線を使うのではなく、設定を書き込んだNFCカードをフォトフレームに読み取らせる設計になっている点です。例えば新しい写真を追加した際に、写真自体はオンラインの写真共有サービスに保存しておきながら、それを参照するための設定をNFCカードで送付する、というように使うのだそうです。これなら、NFCカードを複数使い分けることで、過去の写真を手軽に見返すこともできます。

「ないから自分で作った」というのはとてもMakerな行動だと思いますが、単に製品を再現するだけでなく、ユースケースに合わせた改善を加えているところに、注目をしました。

フラッシュメモリ製コンピュータ (KIOXIAブース)

https://makezine.jp/event/makers-mft2026/kioxia/

半導体メーカーKIOXIAさんのスポンサーブース内で展示されていた作品です。
コンピュータの中心的な部品であるCPUは、半導体でできています。また、スマホで写真を保存するストレージや、microSDカードなどの中身である「フラッシュメモリ」も半導体です。
ですが、計算を行うCPUと、情報を記録するフラッシュメモリでは構造が全く異なります。CPUならCPUとして、フラッシュメモリならフラッシュメモリとして設計段階から別々のものを作ることが当然でした。

ところが、この作品では、フラッシュメモリとして完成した半導体チップを使ってCPUを作っている……最初、何を言っているのかわかりませんでした。
詳しい話は、開発者の方がWebで公開されている発表資料をご覧ください。

フラッシュメモリ”だけ”でコンピュータを創りたい
https://drive.google.com/file/d/1I5PvD5oA-7BgLR8Rz8Ezs7K6TKS9panb/view?pli=1

Kernel/VM探検隊@北陸 Part 8
https://kernelvm.connpass.com/event/367760/

私なりに重要なポイントを要約すると、こういうことのようです。

  • フラッシュメモリには情報を記憶するための「セル」という構造がある
  • 通常、セルに新しい情報を書き込むときは、消去→書き込みという手順を踏む
  • 消去をせずに情報を上書きすると、書き込んだ値と異なる情報が記憶される

この結果が、論理回路の「AND」と同じ結果を示すのだそうです。
さらにここから次のように展開します。

  • ANDを反転(否定)すると、「NAND」という論理回路になる
  • NANDを多数組み合わせれば、あらゆる論理回路が作れる

あらゆる論理回路が作れるのであれば、CPUも作れるはず……ということで、実際にCPUを作ってしまったそうです。
これはもう、尊敬の念を込めて「変態」と呼ばせていただきます。
もちろん構造上、効率がいいとは言えないと思いますが、それでも会場ではフラッシュメモリで作ったCPU上で、オセロの思考をするプログラムが動いていました。
開発者さんのその後の発表を見ると、フラッシュメモリを使ってGPUを作ることにもチャレンジされているようです。

にちか
https://x.com/lxacas

おわりに

Young Maker Challengeの審査員の皆さんともお話ししたのですが、Maker Faire全体を見渡して、昨年から今年にかけて急速にAIが浸透してきたなと感じています。
AIの使い方は大きく二つに分かれます。一つは「作品の中にAIを組み込む」方向、もう一つは「作品の制作にAIをフル活用する」方向です。今回IIJ賞をお贈りした「Yummyverse」は前者のパターンです。この方向では、判定にAIを使った「もじバスター!」(筑波大学 情報・プロダクトデザイン領域)にも注目しました。AIによる判定に対して、屁理屈をこねてAIを言い負かせればOK、という設定は、AIとの付き合い方として面白いと思いました。

筑波大学 情報・プロダクトデザイン領域
https://makezine.jp/event/makers-mft2026/m0146/

また、作品の中にはハードウェアの設計からソフトウェアまでほぼ丸ごとAIを頼りにして開発されたものもあったとのことです。伝聞ですが、開発者の方は「Maker Faireに参加することはAIにできない」とおっしゃっていたそうです。これも一つのAIとの役割分担かもしれません。

Young Makerカテゴリは、Maker Faire Tokyo全体の中でも特に新規の出展者が多いカテゴリだそうです。Young Makerとして出展した方が、翌年以降一般のMakerとして継続参加されている姿を見かけます。来年も、多くの学生メイカーさんが参加してくださることを心待ちにしています。

doumae

2026年09月29日 火曜日

IIJ 技術統括部長 最近はインターネットの技術を紹介するのがお仕事です。元々プログラマ、サーバ・データセンター・ネットワーク・セキュリティ・モバイルといろいろやってきました。



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