IIJ Bootcamp 2026 – AI時代にハンズオン研修で学んでほしいこと
2026年09月28日 月曜日
はじめに
IIJでは毎年7月から8月にかけて、初心者向けの研修として「IIJ Bootcamp」を有志で開催しており、今年でなんと8年目になります。
もちろんIIJには人事部主催で行われる通常の技術研修もありますが、それとは別に「横断的な知識をつけてほしい」「現場で使っている技術をぜひ触ってほしい/教えたい」というそれぞれの思いから毎年有志で開催しています。
2026年度は合わせて講師22名、TA20名での実施となりました。この場を借りて、本当にありがとうございました。
受講者は技術系の新人や改めて興味があって学びたい人など70〜80名ほどで、背景や経験も様々です。
今回はIIJ Bootcampの全体像や目的、主催としてどんな思いで開催しているのかをお話ししていこうと思います。
CONTENTS
IIJ Bootcampについて
IIJ Bootcampは、IT系であればどの分野でも少なからず必要になる「Web」にフォーカスし、横断的で幅広い技術をハンズオンで実際に触ってみる研修内容になります。
2026年度はイントロダクションを含めると9カテゴリ、31講義を実施しました。内訳は次のとおりです。
カテゴリ
- イントロ
- 開発ツール
- CI/CD + 構成管理
- 監視・モニタリング
- データベース
- Webサーバ構築
- バックエンドアプリケーション
- フロントエンドアプリケーション
- 認証・セキュリティ
カリキュラム表
各カリキュラムの資料は、以下のページで公開しています。
https://iij.github.io/bootcamp/
| 01. イントロ | イントロダクション 2026/06/29 15:00~16:00 |
事前準備1 2026/07/07 16:00~18:00 |
事前準備2 2026/07/21 16:00~18:00 |
||
|---|---|---|---|---|---|
| 02. 開発ツール | (もくもく)git+githubハンズオン 2026/07/28 13:00~18:00 |
開発環境をDockerで構築 + Docker Compose 2026/07/29 14:00~16:00 |
|||
| 03. CI/CD + 構成管理 | GitHub Actionsハンズオン 2026/07/29 10:00~12:00 |
ansibleによるIT自動化 2026/08/26 15:00~17:00 |
Kubernetesハンズオン 2026/08/27 13:00~15:00 |
||
| 04. 監視・モニタリング | 監視Overview 2026/07/31 14:00~15:00 |
Prometheusハンズオン 2026/08/03 10:00~12:00 |
Splunkハンズオン 2026/08/03 15:00~17:00 |
Lokiハンズオン 2026/08/04 10:00~12:00 |
OpenTelemetryハンズオン 2026/08/04 14:00~16:00 |
| 05. データベース | データベースOverview 2026/07/30 14:00~15:00 |
MongoDBを触ってみる 2026/08/05 15:00~17:00 |
リレーショナルDBを触ってみる 2026/08/06 10:00~12:00 |
||
| 06. Webサーバ構築 | HTTP Overview 2026/08/07 13:00~15:00 |
Apache/NginxでWebサーバーを立てよう 2026/08/18 13:00~15:00 |
SSL/TLSハンズオン 2026/08/19 10:00~12:00 |
DNSハンズオン 2026/08/20 13:00~15:00 |
|
| 07. バックエンドアプリケーション | バックエンドアプリ Overview 2026/08/21 13:00~14:30 |
FastAPIを使ったAPIサーバ作り 2026/08/24 10:00~12:00 |
GoでWebアプリを作る 2026/08/24 14:00~16:00 |
並行処理を実装してみよう 2026/08/25 10:00~12:00 |
テストプログラミングハンズオン 2026/08/25 15:00~17:00 |
| 08. フロントエンドアプリケーション | 素のJavaScript + DOM入門 2026/08/28 14:00~16:00 |
Reactを触ってみよう 2026/08/31 14:00~17:00 |
LLMでWebアプリケーションを作ろう 2026/09/02 14:00~16:00 |
||
| 09. 認証・セキュリティ | セキュリティと認証の話 2026/09/01 13:00~15:00 |
アプリに認証を導入するハンズオン 2026/09/03 13:00~15:00 |
セキュリティハンズオン 2026/09/04 13:00~15:00 |
各カテゴリの「Overview」は座学になっており、そのカテゴリの基礎や歴史、俯瞰的な説明をします。
その他は全てハンズオンで、講師からの説明を聞きながら資料に沿って各自で手を動かしてもらいます。
Overviewは概ね1時間、ハンズオンは1時間〜2時間の講義となります。
開催の様子
ハンズオンの流れ
講義は全てオンライン上で行われます。8年前に始めたときは会議室でやっていましたが、コロナ禍を経てオンラインになりました。
講義中は「講義パート」と「手を動かすパート」に分かれており、講師の説明のあと各自で資料を見ながらハンズオンを進めます。
オンラインだと受講者がどこまで進んでいるのか、どこで詰まっているのか分かりにくいため、講義の進み具合を可視化する「Visual Bootcamp」が実装されています。
受講者がハンズオンのチェックポイントごとに「できました!」ボタンを押していくと、講師側の画面で何人通過したか、誰がどこまで進んだかが分かります。講師はこれを見ながら追加で時間を取ったり、分かりにくかった部分を説明したりします。
ハンズオン中にトラブルや分からない部分があった場合は、「TA待機チャンネル」と呼ばれる場所で助けを求めるとTAが飛んできます。
受講者の多くはLinuxやDockerに慣れていなかったりするためチャットだけでは解決が難しく、TAが会議を開いて画面共有しながら一緒にトラブルシュートをします。全員がハンズオンの内容を通せることを大切にしているほか、先輩と一緒にトラブルシュートすること自体が大きな経験になります。
ハンズオン環境
ハンズオン研修の開催にあたって一番苦労するのが環境です。まず受講者の環境差異があり、PCは概ね最初に配られるWindows PCですが一部MacやLinuxな受講者もいます。またWindowsでも無線/有線LANの違いやVPNの有無、会社オフィスなのか自宅のリモートワーク環境なのかの差異でトラブルに繋がるケースが多くあります。
8年前の第1回は各自のPCにnodeやrubyといった実行環境をそれぞれインストールしてもらう形でした。しかし2時間のうち環境準備だけで1時間以上かかり、トラブルも頻発しました。。IIJ Bootcampは受講者全員がハンズオンを通せるようにトラブルを全て解決する姿勢でやっていますが、とはいえトラブル対応に気を取られ、すんなり環境構築が終わった人が放置気味になってしまうのは良くありませんでした。
そこで2~3年目以降はDockerに環境を統一し、最初の「事前準備」で各自Docker環境を作る手伝いをするようになりました。
最初はDocker Desktopを推奨していましたが後にライセンスが変わり、商用利用は有償になります。そのため社内のVM環境にLinuxを構築してもらったり、WSL2にubuntuを立ててその上にDocker環境を作ってもらうようにしました。
ただWSL2はVPNや社内のproxyサーバなどと噛み合わせが悪いことがあり、環境の差異に起因するWSLのトラブルシュートに多くの時間が取られてしまいました。社内のVM環境もリソースが限られる上に、自分でVMware上に構築する必要がありハードルが高いです。
そこで近年は社内のSRE部隊の協力により、SRE部隊が運用するKubernetes基盤上でKubeVirtを使ったVMを提供する形を推奨しています。
ssh用の鍵登録やkubectl/virtctlのインストールで若干詰まる場合もありますが、一度ログインできる環境ができてしまえば環境差異もなく本当にトラブルが減りました。
ちなみに毎年やっているので忘れそうになりますが、それまで「Docker」を聞いたこともないような人が混じる背景や経験もバラバラな受講者50人以上に対して、kubevirt + ubuntu + dockerな環境を作らせるのは並大抵ではありません。毎年かなり偉大なことをやってるのでは?と思ってしまいます。それだけ大変なんです…
カリキュラムの変遷
IIJ Bootcampのカリキュラムは毎年見直しており、新しい講義が増えたり削除される講義もあります。また例えばDjangoがFast APIに変わるなど、それぞれのトレンドを追いかけて変わることもあります。講義の増加や変更は、概ね各講師の趣味によるところが大きいです。
注意しているのは、全体の講義数が増えすぎないことです。Bootcampは横断的な知識習得を目的としており、食わず嫌いせずに可能であれば全ての講義を一通り体験してもらいたいと思っています。もちろん現実的にはスケジュール都合などで難しいのですが、できる限り全ての講義に参加できるように講義数が増えすぎないようにしています。
以下は年度ごとに変遷をまとめたものです。
| 年度 | 講義数 | 追加 | 削除 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 6カテゴリ, 24講義 | – | – |
| 2020年度 | 7カテゴリ, 26講義 | (+5) セキュリティの話, セキュリティハンズオン, Ansible, Apache, Nginx | (-4) jQuery, Rails, 動的アプリのホスティング, Let’s Encrypt |
| 2021年度 | 8カテゴリ, 28講義 | (+5) DB Overview, Prometheus, 認証ハンズオン, DepOps Overview, Apache+Nginx | (-3) Node, Nginx, Apache |
| 2022年度 | 9カテゴリ, 30講義 | (+3) 並行処理ハンズオン, Splunk, 単体テスト | (-1) Angular |
| 2023年度 | 9カテゴリ, 30講義 | (+0) | (-0) |
| 2024年度 | 9カテゴリ, 30講義 | (+2) SSL/TLS, DNS | (-2) jenkins, 脆弱性解消ハンズオン |
| 2025年度 | 9カテゴリ, 31講義 | (+3) OpenTelemetry, LLM, セキュリティハンズオン | (-2) FastAPI, svelte |
| 2026年度 | 9カテゴリ, 31講義 | (+2) Loki, FastAPI | (-2) Java, Redis |
こうして見ると、2021年度くらいまでは試行錯誤の跡が見えます。元は「動的アプリのホスティング」としていたものを「Apache+Nginx」に再編したり、セキュリティのカテゴリが追加されたりなどですね。またAngularやRails、jQueryなど、IIJ内部で比較的使わなくなっていった技術を削ったりしています。
2025年度からはLLMハンズオン、当時で言う「Vibe Coding」が追加されました。内容はLLMにプロンプトを投げてブロック崩しなどのブラウザアプリを作成するものです。初回は社内で整えたAI活用基盤を活かして、ローカルに構築したLLMを使っていました。負荷に耐えられるか担当者がドキドキしていたのを覚えています。
AI時代にIIJ Bootcampで学んでほしいこと
IIJ Bootcampの開催にあたって、受講者にはいつも以下を学んでもらうための研修と説明しています。
- Webに関連する技術を一通り触ることで、自分のメインレイヤ以外にも知識を広げてほしい
- 技術のバックグラウンドと得意不得意を知ることで、俯瞰的な視点を持って技術選択してほしい
また明示していない目的として、とにかく「手を動かすことのハードルを下げる」があります。
あらゆる技術やツールは座学や説明記事を読むだけでは理解が進まず、手を動かしながら試行錯誤することで初めて血肉になります。
IIJ Bootcampではその第一歩目を支援することで、手を動かすことへのハードルが少しでも下げられたらと思っています。
しかし昨今は特に生成AIが目覚ましい進歩を遂げており、IT技術者はもはやAIなしで仕事はできません。
AIに聞けば最適な技術選択を教えてくれますし、使い方も丁寧に教えてくれます。AIが作成したコードが完璧に動作し、AIの言うとおりにコマンドを実行すれば目的が果たせる時代です。そんな時代に手を動かして技術を習得する意味はあるのでしょうか。
IIJ Bootcampのイントロダクションでは、毎年新人向けに「この先技術者として生きていくためには」というテーマで小話をしています。
今年は「AI時代にIIJ Bootcampで学んでほしいこと」と題して、言葉足らずながら話をしました。その中では、AI時代の我々の仕事を「意思決定と実装」としています。
「意思決定」は言わずもがなです。AIの助けを借りながら、その環境において最適な選択肢を選び、責任をもって意思決定を行う必要があります。またAIは基本的に聞かれたことしか答えてくれないので、体系的な知識は相変わらず重要です。
「実装」は少し注意が必要で、ここでは単なるコーディングなどではなく「現実世界で動くようにすること、現実世界からフィードバックを受け取ること、フィードバックを反映すること」としています。
我々エンジニアの仕事は現実世界の課題を解決することです。対象となるドメインの理解を深め、技術により解決策を提示し、そこに生まれる現実世界との摩擦を解消することが仕事です。これはAI時代でも変わりません。
こんなAIの時代であっても、手を動かして現実世界に技術を「実装」する能力は大きな武器になるはずです。せっかくIIJに入ってきてくれた若手の方々に、先輩からのせめてもの手助けとして、その第一歩を後押しできていれば幸いです。










