知ってました?夏の高校野球、実は地方大会からネットで見られるんです。

2021年07月13日 火曜日


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IIJ Engineers Blog編集部

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はじめに

夏の風物詩、高校野球。今年は、全国で開催されている地方大会の抽選会にはじまり2カ月間にわたって170以上の球場で行われる約2400試合がインターネットで無料配信される(※)のをご存知ですか?

(※)当社は、朝日新聞社および朝日放送テレビが提供する高校野球の総合情報サービス「バーチャル高校野球」のネット中継に、本年もIIJの動画配信プラットフォームが採用されたことをお知らせいたします。
バーチャル高校野球では、地方大会の組み合わせ抽選会や6月26日より開幕の地方大会(一部)、約2400試合をインターネットで無料配信します。

──プレスリリースより一部、抜粋。詳細はこちら

高校野球の総合情報サービス「バーチャル高校野球」の画面サンプル

地方大会が全国で一斉に開催される7月、多い時には100試合以上も同時に配信されるそうです。全国、津々浦々の球場から一体どうやって試合映像を集めて、誰がどのように配信しているのでしょう──そこで今回は、夏の高校野球の配信に携わっているIIJの配信チームのみなさんに配信の裏側についてインタビューしてきました。

登場人物の紹介

  • 柄沢 憲  ネットワーク本部 xSPシステムサービス部 兼 JOCDN株式会社
    • 高校野球の配信では事務局責任者として関係各社との調整や問い合わせの対応、当日の配信に従事。また今年度新たに開発した中継管理システムの開発責任者
  • 菊池 有純 ネットワーク本部 xSPシステムサービス部 コンテンツ配信サービス1課
    • 配信関連案件の営業支援、社内外の折衝、サービス建て付け、開発案件のPM的なことなどいろいろ。
  • 佐藤 淳 ネットワーク本部 xSPシステムサービス部 コンテンツ配信サービス1課
    • 配信関連案件の技術調査・技術支援から高校野球のようなコンテンツ配信運用まで、配信案件にかかわる色々を対応。

これまでに経験のない配信数

──今年の夏は、何試合くらいインターネットで配信するんですか?

柄沢:今年は約2400試合になる想定です。これまでの実績で言うと、2018年は694試合(最大同時、約20試合)、2019年は874試合(最大同時、約25試合)、2020年は1093試合(最大同時、約45試合)と、ここ数年でインターネット配信する試合数が増えてきました。

──去年の1000試合から倍以上の2400試合!今年は急に配信する試合数が増えたのですね。

菊池:夏の高校野球は、全国大会である「全国高校野球選手権大会」と各地で開催される「地方大会」で構成されています。全国大会は高野連(日本高等学校野球連盟)と朝日新聞社が、地方大会は47都道府県の高等学校野球連盟と朝日新聞社が主催しています。

朝日新聞社と朝日放送テレビがバーチャル高校野球としてインターネット配信を開始したのは2015年からで、地方大会はこれまでも各地の地元の放送局が撮影や放送をしていましたが、それぞれの事情もありインターネットでの配信は一部の試合に留まっていました。これまでのインターネット配信の実績が積み上がってきたことを受けて、今年は多くのテレビ局がインターネット配信にも協力してくださることになり、一気に2000試合を超えることになったのです。

また、試合数の多い地方大会は、複数のテレビ局が分担して中継しているところもあります。朝日放送のネットワークに参加されているテレビ局の他に、独立局、ケーブルテレビ局など、様々なテレビ局に参加して頂くことになり、今回インターネット配信に協力してくださるテレビ局は70局を超えています。

──2400試合もすごいですが、テレビ局70局というのもスゴイ数ですね。今、予定している配信スケジュールで、同時・最大試合数はどれくらいあるのですか?

佐藤:大体、同時100試合くらいでしょうか。20年間、配信の仕事に携わっていますが、私の知る限りでは、この数を同時に配信しているのは見たことがないですね。

ピーク時100試合、同時進行の配信の裏側

──同時に100試合!この数を同時に配信できるのはインターネットならではですね。この数の試合を一体どういう役割分担で配信しているのですか?

佐藤:当日の配信は次の流れで行っています。

バーチャル高校野球 インターネット配信までの流れ

佐藤:上記の役割分担の通り、IIJの担当は各テレビ局から送られてきた映像を受け取り、トランスコード(変換)して配信サーバに載せるまでです。なので、試合当日、IIJの配信チームのメンバーは本社で待機し(※)一人で複数の球場を担当します。
(※)リモートワークも併用しています。

ただ、ここに表れていない事前準備がかなり大変です。配信する球場・放送するテレビ局が決まると、それにあわせてトランスコーダーや配信サーバの調整(どの球場の映像をどのサーバに送るのか)の割り当てをし、設定をテレビ局や配信サイト担当者に情報共有します。

実はこのトランスコーダーや配信サーバの調整がけっこう肝でして、大変な作業でもあります。一台のトランスコーダーで処理できるストリーム(映像データ)には上限があるため、複数のオンプレミスのトランスコーダーとクラウドのトランスコーダーをうまく組み合わせて、性能の上限を超えないように割り当てる必要があります。

その調整に着手する段階では、まだ試合日程が決まっていないのですが、過去の試合日程などのデータや朝日新聞社さん、朝日放送さんからのヒアリング情報をもとに同時配信試合数などを予測し、トランスコーダーや配信サーバの台数・スペックを調整していきます。

同時に多数の球場から配信を行うにあたり、機材構成や運用体制を整える上で、この綿密な予測と調整がとても重要になってきます。IIJ配信チームの作業の中でも一番大事な業務ではないでしょうか。

菊池:一般的なライブイベントの配信では、役割分担は「映像を制作する人」と「映像を配信する人」程度でシンプルです。一方、高校野球の配信では上記の通り登場人物がとても多くなります。図の中には含まれていませんが、毎試合の画質チェック・音チェックをされている方など、実は裏側で活躍されている方もいらっしゃいます一つの試合データをタスキのように順々に渡していく作業を、何百・何千と試合の数だけやっているようですね。非常に泥臭い作業になりますが、IIJだけでなく配信に関わる全員が頑張っていることでもあるので、ぜひご紹介したいですね(笑)。

──試合が配信されている裏側では、様々な役割の人が活躍しているのですね。ちなみに、本番の配信だけでなく、リハーサルもやっているんですか?

佐藤:はい、リハーサルは事前配信テストと最終配信テストの2種類を行っています。事前配信テストは、主に各局からIIJまでのネットワークの疎通確認と、配信に関する設定が間違っていないかの確認です。それ以外に、配信開始・終了などの連絡を誰がどう行うかなども確認しています。

最終配信テストでは、本番と同じ環境で実際に球場から映像信号を流し、テレビ局のエンコーダーからIIJまで映像が届くことを確認します。こちらは配信にかかわるすべての球場分をテレビ局と協力して実施します。今回は170球場を超えています。

──170球場?! リハーサルだけでもすごい量ですね・・・過去、何かアクシデントなどありましたか?

柄沢:以前はインターネット回線の通信速度が足りないなどのトラブルもあったのですが、回を重ねることでネットワーク系のトラブルは減ってきていますね。

佐藤:とはいえ、球場で利用している映像機器の突発的なトラブルは毎年のように発生します。トラブル発生時の原因の究明・切り分け作業はIIJのエンジニアが担当しているので、配信だけでなく映像系の知識も必要になってきます。

──予期せぬトラブルもありますよね。でも回を重ねることで解消されるトラブルもあるのですね。予期せぬ・・・と言えば、当日、雨が降って試合が延期になったときはどうしているんですか?

菊池:協力局からいただいた情報を元に、運営各社で体制や準備の再調整をすることになります。スケジュール変更によって試合が行われる球場が変更になることもあり、雨天順延で日程変更が発生すると大変なんですよ。

──実際、地方大会ってどれくらい見られてるのですか?また、反響などあれば聞かせてください。

佐藤:試合によってかなりばらつきがあります。やはり全国大会と比べると地方大会の視聴者は少なくなるのですが、有力な選手が出場しているときはかなりトラフィックが出ることもありますね。

柄沢:高校卒業後に地元を離れた人から「母校の試合が見られた」とか、「(テレビがないところでも)仕事の休憩中に高校野球が見られて嬉しい」といった感想をもらったことがあります。個人的には、地方大会のインターネット配信で母校の校歌を28年ぶりに聴けたのは良かったですね(笑)。

確かに卒業してから母校の校歌を聴く機会はめったにないですからね。日本全国の地方大会が視聴できるバーチャル高校野球ならではの意外な?!楽しみ方ですね(笑)。甲子園に出場しなくても、地方大会で母校の校歌が聴ける・・・じゃなくて母校の試合がインターネットでリアルタイムに観られることを多くの人に知ってもらいたいですね。今日はお話どうもありがとうございました。

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