Metaverseは誰のもの?

2021年12月24日 金曜日


【この記事を書いた人】
田口 景介

社会人生活の半分をフリーランス、半分をIIJで過ごすエンジニア。元々はアプリケーション屋だったはずが、クラウドと出会ったばかりに半身をインフラ屋に売り渡す羽目に。現在はコンテナ技術に傾倒中だが語りだすと長いので割愛。タグをつけるならコンテナ、クラウド、ロードバイク、うどん。

「Metaverseは誰のもの?」のイメージ

IIJ 2021 TECHアドベントカレンダー 12/24(木)の記事です】

「いつもいつもDocker, Kubernetesの話ばかりで飽きちゃったよ。別のネタでもいい?」

なんて話をしたのは、一ヶ月ほど前のこと。今年もIIJではアドベントカレンダーの開催が決まり、暇人めぼしいブロガーを求めて声がかかったというわけだ。仕方ない、かわいい堂前ちゃんからの相談とあっては断れない(なお中身は(略)。

ところで思い出してほしいのだが、2021年11月と言えばFacebook社が社名をMetaに変更することを発表し、突然我も我もとMetaverseなる単語に飛びついていた頃だ。筆者もMetaverseには少なからぬ興味を持って注目していたので、この騒動に乗っかってブログを一本書こうと考えたのが冒頭の下りだが、どうもおかしい。NFT?土地売買?それはどこのMetaverseの話なんだ?

筆者も長年IT業界に身をやつした端くれとして、ご多分にもれず人並みにゲームを嗜んでいる。今はELDEN RINGの発売を楽しみに待ちながらDark Souls3で素振りを繰り返す毎日だが、しばらく前までは某MMORPGをのんびりと楽しんでいたものだ。費やした時間はたかだか8,000時間程度のライト勢に過ぎないが、それでもMetaverseと呼ばれるものが何かはゲームライフを通じて身を持って理解しているつもりである。その経験から言えば、現時点でMetaverseとしてまず筆頭に挙げられるのは間違いなくフォートナイトであり、それを率いるEpic Gamesがトップランナーと言えるだろう。他にも候補となるゲーム、プラットフォームは存在するかもしれないが、ある程度そこで「生活」した人でなければコメントするのは難しく、筆者にその資格はなさそうだ。ただ、いずれにしてもその中心にあるコンテンツはゲームなのだ。Metaverseがあったから人が集まってきたのではなく、人気のコンテンツにかつてないほど人が集まった結果、ゲームプラットフォームがMetaverseへクラスチェンジしようとしているのだ。

ところが、メディアを通じて伝えられるMetaverse界隈のニュースは、どれもこれもまるでSecond Lifeの再来だ。その様はクラウド黎明期に雨後の筍のごとく登場した数多の似非クラウドサービスのごとし。それとも、業界先行でうまく商業ベースにのらなかった立体テレビのようなものだろうか。

などと、軽く感じた憤りのまま一筆書いてみようかと思ったのだが、筆者ごときが物申すまでもなく、メディアはMetaverseを新規ビジネスとして一から立ち上げたい勢力と、すでに実現している世界を発展させてMetaverseを盛り上げたい勢力できれいに二分され、同じキーワードを使っているにもかかわらずまるで水と油のように交わることなく、それぞれの論説が繰り広げられていた。実際のところ、ビジネスの成否がどうなるかは見通しようもなく、新解釈版Metaverseが勝利する可能性を否定するつもりはまったくない。しかしこの有様では本ブログが公開される頃には早々に話題の賞味期限が切れ、すっかり冷めていてもおかしくはない。もしそうなったら悲しいことだ。

それにしても、我々はなぜ加熱するMetaverse騒動に不快感を覚えるのか。それは、Metaverseが親しい友人と付き合うための空間であるにもかかわらず、そこに見知らぬ人が上がり込もうとしているように感じられるからだ。FacebookやTwitterのような疎な人間関係をつなぐSNSと違い、Metaverseはもっと密な人間関係のためのSNSであり、その発展型として機能している。しかもリアルな友人が集うだけでなく、互いに本名も年齢も所在も知らないまま親しくなり、交友関係が広がっていくさまは今までにない刺激的な体験だ。そうした人間関係を大事に感じているほど、昨今のMetaverse騒動を「おもしろくない」と感じるのだろう。

Metaverse市場はZ世代が牽引すると言われている。確かに現状を見るとそう考えるのは自然だが、個人的には本当に成功するMetaverseは世代を超えて受け入れられると信じている。そうでないとおもしろくないというのもそうだが、Metaverseがもたらす交友関係を広げるパワーというのは、Z世代よりもむしろ社会人にこそ受ける可能性があるからだ。なにしろ成人してから友人を増やすのは大変だ。結婚して所帯を持ってからはもっと大変だ。仕事上の人間関係は広がっていっても、それを交友関係と呼んだものかどうか。そんな社会人にとって、Metaverseはとても魅力的な社交場となる可能性を秘めていると期待している。

だから、そんなMetaverseを、現実世界を仮想化した単なるレプリカで済ませてほしくないと感じるのだ。

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田口 景介

2021年12月24日 金曜日

社会人生活の半分をフリーランス、半分をIIJで過ごすエンジニア。元々はアプリケーション屋だったはずが、クラウドと出会ったばかりに半身をインフラ屋に売り渡す羽目に。現在はコンテナ技術に傾倒中だが語りだすと長いので割愛。タグをつけるならコンテナ、クラウド、ロードバイク、うどん。

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