3Dプリンタ【私の愛用している技術系アイテム】
2022年06月13日 月曜日
CONTENTS
あいさつ
突然ですが皆様、お船は好きでしょうか?
私は地元が港町だったこともあり船は好きです。
そんな私の家にはこのような形の船がゴロゴロ転がっています。
https://youtu.be/_epwuDI9FBI
「3DBenchy」という船があり、これは3Dプリンタ性能評価で用いられる船です。
今日私が寄稿させていただくのは、船…もとい、3Dプリンタです。
私の愛用アイテム
3Dプリンタ
ものを作ることの敷居を下げる
シロッコファンの印刷直後と組み立て後の写真です
何かモノを作りたいと思い立った時、多くの方はホームセンターと100均で過ごすことが多いのではないでしょうか。たぶん多くの方に同意いただけると思いますが、モノを作るというのは非常に労力がかかります。
金属部品を作ろうとした場合
- 旋盤
- フライス
- 溶接器具
- プラズマカッター
- 複雑な加工ならマシニングセンタ
などが必要で一般家庭での製作は難度が跳ね上がります。最近ではMiSUMiの加工サービスがあり設備が無くても作れるようにはなりました。
ではプラスチック、もっと言えば樹脂で何かを作ろうとしたときはどうでしょう。これであればプラモデルを作ったことがある人であれば道具もそろってそうです。
- 各種やすり
- リューター
- 熱溶解型接着剤
- 黒歯カッター
しかし先ほどの金属加工と比較すると一つ足りないものがあります。そう「マシニングセンタ」です。複雑な形状を樹脂成型するにはこれまで値段的な意味で高い場所にありました。しかし、近年のMakers達、先駆者たちの活躍によって、3Dプリンタは徐々に価格は下がり、さらにオープンソース化が進んでいます。
最初の出会いと2度目の出会い
最初の出会いは2010年の頃です。在学していた大学に大きな機械が導入されてそれが3Dプリンタだと知りました。当時は19インチラックのフルサイズと同じ重さ、高さほどもある巨大なものでした。残念ながら在学中はメンテナンスがたびたび入り使える機会はないまま卒業しました。
次の出会いは2020年の頃です。当初モノづくりの設備がある場所をお借りして、その中で初めて3Dプリンタを触らせてもらったのがきっかけでした。大きさは19インチハーフラックに入るぐらい、しかも手で持てるほどの重さでした。自分でデータを作り、出力されていく様子をじーっと眺めていました。マシニングセンタとは異なる、樹脂が積層されていくことで出来る形がそこにはありました。そこから私の3Dプリンタとの付き合いが始まりました。何度も通いつめ雨の日も暑い日も張り付いて、新しい技術に触れていました。
そして我が家に迎えることになったのが、先ほどご紹介した3Dプリンタです。選定の理由は割と単純明快で「その時一番触れてた時間が長いプリンタで使い勝手が分かってたから」でした。
簡単だけど突き詰め始めると難しい3Dプリンタ
いざ家に迎えてみるとわかるのですが、設備の整った場所と自宅は異なります。自宅で稼働し始めると、簡単ではあるのですが難しいのです。特定の形状のモノを出力するには簡易に出来るのは事実です。しかし、造形物に精度や強度などを求め始めると急に難易度が上がります。正確な水平が必要だったり、湿度を下げたり、温度を管理するなど、その奥深さを思い知りました。総造形時間180時間の印刷物で、残り20時間などの途中で地震などがあった日は発狂しそうになりました。
船の量産とチューニング
3Dプリンタで作り出す造形物の完成度を左右する要素は個人的に次のものだと考えています。
- ハードウェアの良し悪し
- ソフトウェアの良し悪し
- 設置環境の良し悪し
- 3Dプリンタで利用する素材の特性
ハードウェアは様々な機種が発売、さらにはオープンソースでも日々磨かれています。安価で小型な機種から、ミドルレンジ価格のモノ、さらに通称「10万円のグミ(※)」などもあります。
(※参考)https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1908/19/news113.html
ソフトウェアも純正ソフト以外のスライサーと呼ばれるソフトは日々改良が加えられています。しかしこれらソフトウェアから吐き出されるGコードを直接弄り温度を絶妙に調整することもあります。設置環境は特に湿度が大きく影響を与えることから、除湿器でカラカラに乾いた風を送っています。水平を保つために数ミリの鉄板を挿入してシネックスゲージで確認するなどしています。素材は植物由来のPLAもあれば、強度と切削加工向きなABS、最近では金属粉末が入り焼結処理することで金属部品が作れるものや、自作された導電性フィラメントなど様々な樹脂があります。
…どうでしょう?これほど多くのパラメータがめんどくさいなと思う人もいれば面白そうと思う人もいるかもしれません。私は後者で、いかに美しく自分の理想の船を印刷できるか悩み続けながら3Dプリンタを弄っています。
自分で作ることでわかるモノづくりのすごさ
流石に船ばかり続けているわけではないので、たまには別のモノを作ってみたりします。例えば十分な強度が確認できたパラメータで壊れた鞄のバックル部分を印刷した時がありました。すると、しばらく使う分には問題ないのですが、なぜか同じ場所ばかり割れて壊れるという現象に悩むことがありました。
調べていくと、曲げ部分を直角に作ったことで曲げた時の力が分散できず起こる破断だとわかりました。残念ながら機械設計の知識を持ってないために起きたのですが、こうやって3Dプリンタを使ってバックルを作ろうと思わなければ、この工夫は一生気づく機会が無かったかもしれません。
様々な作例に刺激される日々
このような経験があり、3Dプリンタの情報や制作物を日々追いかけています。ある時はモーター駆動型のカムについての紹介を見て実際に公開されたデータを印刷してみて、バリ取りの難しさを知る。ある時はフィギュアを熱積層型で作っている例を見て、自分も作ってみようと思ったり。ある時は流体力学的に計算された高耐圧パーツを各所に散りばめ、スイカを粉砕する人を見て尊敬する。
そんな流れを見る中で最近気づくのは、日本語の情報が増えてきたと思います。英語の情報はもちろん豊富ですが、多くの日本人Makerたちが増えて情報が公開されているのだと感じます。作り方やパラメータも共有され、同じものが欲しい人はそれを作る。触発された人がさらにすごいものを作る。そして3Dプリンタ以外の工法も取り入れてどんどんモノが発展していく好循環ができつつあると思います。
3Dプリンタというのはただの道具でしかないのですが、不思議なことに長い時間使う中で、技術者としての視野を広げる素敵な道具だと私は感じます。もしかしたら私がどこかで投稿している3Dプリンタパラメータが役立ってくれていると嬉しいなと思いつつ、今日も我が家のプリンタは船を始めとするベンチマークを印刷しています。
私のお気に入り道具、3Dプリンタの紹介でした。最後まで読んでいただきありがとうございました。