みまもりを支える位置情報の “ちょっと怖い話”
2023年03月02日 木曜日
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どうも名古屋支社の北河です。
普段はアジャイルな日々で情報発信をしていますが、今回はいつもと趣向を変えて位置情報に関係する話をしたいと思います。
位置情報は私が所属している名古屋技術4課が得意とする「みまもりサービス」で必須な技術要素です。そんな位置情報を扱ううえで知らないと背筋がゾッとする怖い話をしたいと思います。
位置情報でハマる測地系問題
位置情報を使ったみまもりを実現する場合、大抵は地図にプロットしますよね?
そんな地図にプロットする時に意識しないといけないのが測地系です。
測地系って聞いて何を思い浮かべますか?おそらく大半の方が “何それ?” ってなると思います。
でも、位置情報を扱う時はちゃんと意識しないと下図のようなパチンコガンダム駅が生まれちゃうんです。怖いですね。
出典: Internet Watch
懐かしいですね。パチンコガンダム駅。
2012年のiOSアップデートでマップの地図データがGoogle Mapsから自社データに置き換わったんです。そうしたら、このような異世界地図が生まれてしまったのです。
なぜこのような異世界地図が生まれてしまったのか?
実際のところは当事者しかわかりませんが、データから推測すると出典データの測地系を意識していなかった、または測地系変換に不備があったと考えられます。
ということで、そんな怖いことが起きる測地系をちょっと掘り下げてみましょう。
測地系の世界はカオス
そもそも測地系とはなんでしょうか?
ナビタイムさんの説明が簡潔で分かりやすいので引用します。
測地系とは
国土交通省の国土地理院では、「測地系とは、国またはいくつかの国からなる地域単位で採用され、測量、地図作成、土地の管理、大規模土木工事などの基準となる測地体系」と紹介されています。
簡単に言うと地球上の位置を緯度経度で表す際の基準です。
日本で主に使われている測地系は、日本測地系、世界測地系の2種類あります。出典: ナビタイムジャパン
日本測地系と世界測地系が出てきましたね。これがカオスの元凶です。
日本測地系が生まれたのは明治時代です。当時の測量技術とベッセル楕円体(1841年)がベースになっていますので、当然精度は現在よりも落ちます。
世界測地系は現在の測量技術とGRS80楕円体(1980年)がベースとなっていますので高精度な訳です。
2つの測地系の差分ですが、地域によって差はあるものの東京あたりであれば 450m ほどのズレとなります。
豆知識
世界測地系と一言で言っても、米国の世界測地系はWGS84、日本の世界測地系はJGD2011(日本測地系2011)と厳密には楕円体パラメータが少し異なります。誤差と考えても支障がないため、まとめて世界測地系と呼ばれています。日本測地系の後ろに数字が入っただけで世界測地系扱いになるので頭がおかしくなりますね。
更にカオスの深淵を覗くと、日本の世界測地系にはJGD2000(日本測地系2000)もあります。JGD2000とJGD2011は同じGRS80楕円体となりますが、JGD2000をベースに東日本大震災で地殻変動が大きい地域に位置ズレパッチを当てたのがJGD2011となります。なので測地系警察の方と会話をするときは十分意識しない現行犯逮捕となります。
なぜパチンコガンダム駅が生まれたか?
ここまで読んでもらえればイメージついたかと思います。
このような異世界地図は “地図業界あるある” ではありますが、よく目にする地図を作るには様々な出典データを寄せ集め整合を取ることで、初めて地図として機能します。
例えば、「道路ネットワーク」「郵便番号」「住所」「POI」「規制情報」「市街図」など大小合わせて100以上のデータを組み合わせて初めて普段目にする地図になるわけです。
当然全てを手作業で整合取ることは出来ませんので、座標や名称を頼りに半自動で行いますが、パチンコガンダム駅はおそらく駅(鉄道)データとPOIの測地系が異なった状態で座標マッチングを行った結果、異世界に飛ばされたのでは?と推測します。
出典毎に測地系が異なるってのは普通にありますから。
まとめ
測地系は怖いってことが伝わったでしょうか?IoTみまもりに関わらず、位置情報を扱う時は “測地系は何か?” を常に意識したいですね。
一般的に使われる、GNSS と GoogleMaps・OpenStreetMap・Mapbox を組み合わせるのだけであれば特に意識しなくても良いと思います。この辺りは世界測地系で統一されていますので。
しかし、これらを使わずオープンデータなど座標付きデータを扱う時は要注意ですね!
それにしても、個人的な話にはなりますが地図データは楽しいです。テンションが上がります。全国分のデータをぶん回したい気持ちになります。
IIJでも地図に関わる仕事が出来るといいなーと思いをはせながら今回の話は以上とします。
ではごきげんよう。
執筆者Twitter | @nk_tamago ※意見は個人のものです |