エコパスタジアムでのWi-Fi導入 ~ 機材設置の裏舞台を紹介

2024年09月24日 火曜日


【この記事を書いた人】
岡田 裕夫(オカダ ヒロオ)

法人向けネットワークサービスの業務を担当した後、配信サービス等に従事。最近は、サーキットのネットワーク改善や、衛星ブロードバンド等を活用したサービス開発に関わっています。

「エコパスタジアムでのWi-Fi導入 ~ 機材設置の裏舞台を紹介」のイメージ

IIJエンジニアリングは、8月11日に静岡県のエコパスタジアムで開催されたジュビロ磐田×鹿島アントラーズのサッカーの試合にて、ジュビロ磐田の運営スタッフ向けの臨時のWi-Fi接続サービスを導入しました。IIJエンジニアリングの「マルチアクセスソリューション」にて、衛星ブロードバンド接続やWi-Fi APなど含む一式を設置から撤去まで行いました。

プレスリリース:IIJエンジニアリング、J1リーグに所属するジュビロ磐田の試合向けに衛星ブロードバンドサービスを活用する「マルチアクセスソリューション」を導入

なぜスタジアムでWi-Fi接続サービスが必要なのか?

サッカーに限らず、最近のスタジアムでは運営スタッフも多くのデジタル機器を使います。たとえば、入場ゲートでのQRチケットの確認や、物販ブースでのキャッシュレス決済などでは、無線でインターネットに接続された端末が使われています。こうした端末にはスマートフォンと同じ携帯電話網を使う通信機能が内蔵されており、スタッフはインターネット接続を意識することなく業務が行えます。

しかし、多くの観客が集まる場所では携帯電話網が混雑し、時には使い物にならないレベルになることがあります。これは、その場所にある携帯電話の基地局の性能が限界に達していることが原因です。これでは運営業務に支障が出てしまいます。
対策として、会場内でスポット的にWi-Fi接続サービスを導入する方法もありますが、広いスタジアムでは、Wi-Fiが必要となる場所毎にインターネット接続用の回線 (アップリンク回線)を引き込むのも大変です。そこで、各種無線によりインターネット接続を確保できるIIJエンジニアリングのマルチアクセスソリューションが活躍します。

実際、今回の試合でも、当日は3万3千人を超える観客が集まったこともあり、携帯電話網は輻輳が激しく、観客が入場開始した直後のスピード測定結果は以下(左側)の通りでした。これでは運営スタッフの業務にも支障が出るでしょう。

携帯電話網と臨時Wi-Fiの比較

この様な事態が事前に予想されていたため、今回はマルチアクセスソリューションの衛星ブロードバンドをメインのインターネット接続として利用しました。この結果、現場のWi-Fi接続サービスでは上記(右側)程度の通信速度が確保できています。これなら業務遂行にも問題はありません。

設置場所

今回は運営スタッフ向けのWi-Fi接続サービスの導入ということで、主にスタジアムの入場ゲート付近でサービスを展開しました。水色の円をプロットした位置がWi-Fi導入エリアで、西・北・東ゲート付近で計3エリアとなります。これらの場所にはグッズ・チケット売場があります。
スタジアム内でエリアが大きく離れていたこともあり、今回は3台の衛星ブロードバンド接続用アンテナを用いました。

Wi-Fi接続導入エリア

衛星ブロードバンドアンテナの設置

衛星ブロードバンド接続を利用するためには、空が見通せる必要があります。日本では、主に北東方向の空にアンテナを向けます。
広いスタジアムの敷地なので、どの導入エリアでも問題ないと思っていたのですが、現地に行ってみると北エリアと東エリアではスタジアムの屋根が障害になり衛星と通信できませんでした。そこで、衛星ブロードバンド接続用のアンテナを、Wi-Fi導入エリアから15m程外側に設置しました。この様なケースに対応するためにも、別売りの衛星ブロードバンドアンテナ専用長尺ケーブルは調達しておいて正解でした。

西エリアは付近の人通りが多く、地面に衛星ブロードバンド接続用のアンテナを置くと、人影で人工衛星と繋がる電波が遮られてしまいます。これだけでも通信速度に影響が出るため、アンテナは人影に遮られないように設置したいところです。今回は、アンテナの高さを出すために、アマチュア無線用の自立ポールに衛星ブロードバンドアンテナ純正のパイプアダプターを組み合わせて設置しました。アンテナが転倒しないように、水を入れた袋を重しとして固定しました。

Wi-Fi APの設置

Wi-Fiの電波も人影の影響を受けます。人が多く集まる場所ではWi-Fiの電波を安定して届けられるよう、なるべく高い場所にAPを取付ける必要があります。今回は地上約3M弱ぐらいの位置に設置しました。

高さを出すために利用したのは写真や映像スタジオの照明用として用いられるCスタンドです。かなり頑丈で、足に転倒防止の重しを乗せることが容易な構造となっているため、こういった用途では重宝しています。安定感はありますが、重いため運搬は大変でした。
今回利用したWi-Fi APは、背面に取り付けられるVESAマウントアダプターがあるので、これを利用してスタンドに取り付けています。

現場を振り返って

Wi-Fi接続サービスを導入するエリアが複数箇所で、それぞれで安定した通信を確保するため機材が多くなりました。もう少し機材をスリム化して手間を削減したいですが、人が多く集まるとWi-Fiの電波が減衰するため、ある程度の強めに電波を導入する必要があり、バランスが難しいところです。
とはいえ、自分が構築したネットワークでお客様がビジネスを行なっている様子を間近に見ることができたのは普段あまりない経験で、大変嬉しいことでした。

おまけ

  • 炎天下での構築作業となったため、空調服を初めて導入したのですが、専用のバッテリーが売切れだったため USB-Aで電源を供給できるモバイルバッテリー(10000mAh)を使ったのですが問題なく6時間程度稼働していました。夏の屋外作業時には、もう手放せません。
  • あと、静岡県ということで、さわやかでハンバーガーを食べました。定番のげんこつハンバーグも良いですが、ボリュームのあるバンズに挟まれたパティも、ハンバーガー専門店レベルだったのでオススメです。

岡田 裕夫(オカダ ヒロオ)

2024年09月24日 火曜日

法人向けネットワークサービスの業務を担当した後、配信サービス等に従事。最近は、サーキットのネットワーク改善や、衛星ブロードバンド等を活用したサービス開発に関わっています。

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