Starlink(スターリンク)の契約を深掘り、パブリックIPアドレスも調査しました
2023年08月22日 火曜日
CONTENTS
スターリンクが日本で登場してから9ヶ月、サービス内容、利用形態(地上・海上、固定・移動、国内・グローバル)が大きく拡充・整理されています。一方で日本国内での利用について何ができて何がダメなのか、公式からの購入と認定インテグレーター(KDDI等)からの購入の違いなどがわかりにくいと感じました。そこで契約全体を整理してみました。企業での利用や個人でもより突っ込んだ利用を考えている人に有益な情報になればと思っています。
過去ブログもよろしくお願いします。
- Starlink(スターリンク)がやってきたのでネットワークを調べました
- Starlink(スターリンク)の遅延を日本とアメリカとドイツで長期収集しています
- Starlink(スターリンク)のネットワーク、アンテナのIPアドレス、NATの仕様などを調べました
- Starlink(スターリンク)とクラウドで月額171円の冗長VPNを構築してみました
- Starlink(スターリンク)で自宅サーバ、IPv6ならできます!
- Starlink(スターリンク)で速度計測しました・STARLINKビジネスの申し込みについて
「スターリンクって何?」といった方向けに解説動画を公開しています。
気になる方は、ぜひこちらもご覧ください。
サービスとプランの関係について確認
スターリンクはWEB上ではレジデンシャルとかビジネスと呼ばれるサービスで説明されています。一方で利用規約や仕様の中では「プラン」で説明されています。規約内では世界で統一された名称であるプランで規定し、提供している国に応じてサービス名称は変更しているようです。なんかややこしいですね。
プランを構成している要素は8個あります。
標準 | 通信性能で標準となるスペック |
優先 | 優先通信・優先サポート、通信容量に制限 |
固定 | 標準は1箇所に固定して使う |
移動 | 移動先・移動しながら使える |
リージョナル | 国内利用 |
グローバル | 世界中で使えるようになる |
地上 | 標準で使える場所 |
海上 | 海上でもつかえる |
標準・優先、固定・移動で4つのプランに分かれ、サービスが紐づきます。
プラン | サービス |
標準サービスプラン | レジデンシャル |
優先サービスプラン | ビジネス |
モバイルサービスプラン | ROAM(リージョナル・グローバル) |
モバイル優先サービスプラン | モバイル・マリタイム |
リージョナル・グローバル、地上・海上はサービスをさらに分けて区別するために使われます。
モバイル優先は海上で使えますが、優先容量を使い切ると通信できなくなります。しかし地上にくれば通信できます。
プラン視点でみればモバイルとマリタイムは同じものだとわかります。地上でつかえばモバイル、海上で使えばマリタイムなのです。
アンテナと利用形態、日本の技適認証について確認
アンテナは3種類あり、サービス購入時に選択できるアンテナの組み合わせが決まっています。
標準 | 高性能 | 高性能フラット | |
レジデンシャル | ○ | ||
ビジネス | ○ | ||
ROAM | ○ | ○ | |
モバイル | ○ | ||
マリタイム | ○ |
標準と高性能タイプは「固定」利用の保証があり、技適は地上のみです。
一方フラット高性能タイプは「固定」「移動」両方の保証があり技適は地上と海上で取得しています。
しかし日本ではフラット高性能タイプでも「地上」を「移動」しながらは使えません。日本国籍の船に搭載した場合、日本の沿岸水域(およそ22km)超えた場合には利用を止めなければなりません。
微妙に使いにくい制限ですが、これの解消にはまだ時間がかかるそうです。
電波法違反は「 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金」ですから軽く見るべきではありません。
認定インテグレーターからの購入について
スターリンクは公式以外にも認定インテグレーターから購入する事ができます。認定インテグレーターは独自のサポートや保守メニューなどが用意されています。一方で購入できるのはビジネスやマリタイムに制限されています。そして利用規約等が公式とは違う場合もあります。
公式 | 認定インテグレーター | |
レジデンシャル | ○ | |
ビジネス | ○ | ○ |
ROAM | ○ | |
モバイル | ○ | 未確認 |
マリタイム | ○ | ○ |
公式から購入するメリット
公式では、すべての組み合わせでスターリンクを調達する事ができます。購入後のプラン変更も管理ポータルから変更できます。例えばレジデンシャルで始めて、通信品質を上げるために優先プランに変更する事ができます。高いアンテナを最初から購入する必要はありません。ROAMで最初から高性能フラットを購入しながら安い月額で利用する事もできます。
世界をみるとスターリンクを活用している事例は沢山あり、情報も豊富です。公式から調達する方が楽しいのは明らかですね。
パブリックIPアドレスについて調査しました。
さて、今回は技術ネタから離れていたので、最後に技術ネタを紹介します。パブリックIPアドレスについてです。これまでブログではIPv6を活用する形で調査を進めてきましたが実際の利用では色々な制約でIPv6を使えないケースもあるかと思います。IPv4で相互接続できるグローバルアドレスが使えると助かるケースは多々あります。
スターリンクではIPv4はCGNAT配下のアドレスがDHCPで配られます。しかし優先サービスプランとモバイル優先サービスプランではパブリックIPアドレスを使うように設定する事ができます。設定後にアンテナを再起動する事でグローバルアドレスがDHCPで配られるようになります。このアドレスはCGNATから出ていく時のIPアドレスとは別のブロックで、筆者が設定したときは、65.181.4.0/22からアサインされました(ブロックとしては4C分、1000個を超えるアドレスを確保しているようです)。
パプリッククラウドなどでよくあるグローバルアドレスからNATされてVPC内部に繋がるようなものではなく、接続した機器のネットワークインタフェースにグローバルアドレスが振られます。外に晒される事になりますのでセキュリティ対策もしならが活用しましょう!
パブリックIPアドレスがつかえる事でIPv4でも自宅サーバが作れますし、IPv6とのデュアルスタックも実現できます。優先プランはレジデンシャルからでも変更できますから興味がある方は費用はかかりますがプラン変更も選択肢になるのではないかと思います。