設立30周年記念 APNIC 56 Conferenceが京都で開催

2023年09月07日 木曜日


【この記事を書いた人】
doumae

IIJ 技術担当部長 インターネットの技術を紹介するのがお仕事です

「設立30周年記念 APNIC 56 Conferenceが京都で開催」のイメージ

APNIC 56 Conference

2023年9月7日より、京都で国際会議APNIC 56 Conferenceが開催されます。この会議では、IIJのエンジニアもスピーカーとして参加します。

また、IIJはスポンサーとしてこのカンファレンスの開催を支援しています。9/12より会場に設置されるスポンサーブースでもIIJの活動をご紹介する予定です。

APNIC 56 Conferenceでは多数のプログラムが用意されています。その中から二つご紹介いたします。

  • 9月12日 Opening Ceremony and Keynotes (基調講演)
    基調講演の中でも、日本から参加されている次のお二人の講演は聴きやすいのではないでしょうか。

    • Internet: Roles of Asia Pacific for the Future (村井純氏/慶応大学・WIDE)
      アジア太平洋のインターネットの成長について
    • The future of the Internet from Earth to Space (金子洋介氏/JAXA・IPNSIG)
      インターネットを宇宙空間・惑星間通信に広げる試み
  • 9月13日 APNIC 30th Anniversary Panel (APNIC 30周年記念パネルディスカッション)
    この記事でもご紹介しているとおり、APNIC 56 Conferenceは設立30周年です。
    それを記念してパネルディスカッションが開催されます。

会場で参加できない場合でもオンラインで参加することができます。(オンラインのみの参加は無料です)

APNICはIPアドレスの管理団体

このBlogをお読みの方であれば、APNICという団体については耳にされたこともあるのではないでしょうか。アジア太平洋(Asia Pacific)地域において、IPアドレスなどの「インターネット番号資源」を管理する団体(Network Information Center)が、APNIC(えーぴーにっく)です。

APNICはIPアドレス・AS番号の管理や国をまたいだネットワーク運用技術の交流など、インターネットの基盤と成長を支える様々な活動を行なっています。ただ、やはりIPアドレスの管理というのがAPNICの活動の中でも最も有名で、重要なものだと思われます。

IPアドレス(グローバルIPアドレス)などの「番号資源」は世界で重複のないように利用する必要があります。そのため、全世界単位の資源管理機能である IANA (Internet Assigned Numbers Authority) が地域毎に設立された RIR (Regional Internet Registry/地域インターネットレジストリ) にIPアドレスを割り振り、RIRが各国のNIR (National Internet Registry/国別インターネットレジストリ) や利用者にIPアドレスを割り振り・割り当てるといった形で管理されています。これを図にすると以下のようになります。

IPアドレスの管理体制

IPアドレスの管理体制

この記事で取り上げたAPNICは、日本を含めたアジア・太平洋地域を担当するRIRです。APNICの設立は1993年1月で、今年(2023年)は設立30周年目に当たります。今夏開催されるAPNIC 56 Conferenceは、実はAPNICが30周年を迎えて初めて開催される、記念のカンファレンスなのです。

APNICの設立

ところで、先ほどの図を見てあれ?と思った方もいらっしゃるかもしれません。APNICからIPアドレスの割り振りを受ける立場である日本のJPNIC(JNIC)は、1992年6月からIPアドレスの管理業務を開始しており、設立のタイミングが逆になっています。

実は、インターネットの資源管理の機構が整備されたのは、実際にインターネットが使われるようになった後からなのです。

1980年代、IPアドレスの管理はインターネットの発祥の地である米国のSRI-NICが行なっていましたが、各地域毎にIPアドレスの利用の申請を行ないたいという声を受けて、ヨーロッパに設立されたRIPE NCCと、日本の「ネットワークアドレス調整委員会」がIPアドレスの割り当て業務を行なうようになります。(「ネットワークアドレス調整委員会」の業務はその後1992年に設立されたJNICを経て、現在のJPNICに受け継がれています)

こうした経緯を経て、1992年には「ヨーロッパのRIPE NCC」「日本のJNIC」「アメリカとその他の地域のSRI-NIC」という管理体制となります。しかし、当時のインターネット普及の動向を踏まえ「アジア太平洋地域の資源管理団体が必要だ」となり、村井純先生(WIDE/慶応大学)らの呼びかけでAPNICが設立されることとなりました。

ちなみに、このときAPNICの設立メンバーとして日本から参加したのはJPNICとIIJでした。APNIC’s founding Membersには、IIJグループの「Asia Internet Holding Co Ltd」(AIH ※2005年にIIJと合併)が名を連ねています。

また、2019年からはIIJの松崎 (maz)がAPNIC EC(理事)の一人として活動しています。7名のAPNIC ECの中で日本を拠点にしているのは今は松崎だけで、日本と各国との間をつなぐ役割も意識しながら、アジア太平洋、そして世界のインターネットを「もっとよくする」ために活動しているとのことです。

APNICの理事って、どんな仕事なんですか?

インターネットを統治する仕組み

APNICの設立経緯のように、インターネットでは「すでに動いているものを、どう管理するか」という仕組みが後付けでたてつけられることがよくあります。実は、現在インターネットの世界的な資源管理機能であるIANAを運営しているICANNが設立されたのはさらに後年の1998年10月。ICANNが現在の形で機能するようになったのは2016年10月です。皆さんが何気なく使っているインターネットを「管理」する仕組みはいつの間にか変っていたのです。

このようにインターネットの資源を管理する仕組みを含め、インターネットをどのように運営するか、そのためのルールや体制を「インターネットガバナンス」(統治)と呼んでいます。インターネットは国を越えてつながるネットワークであるため、インターネットガバナンスもまた、国を越えて考えなければなりません。

国を越えたガバナンスの議論をどのような枠組みで行なうのか。それには様々な枠組みが考えられますが、その一つが国連が主催する「Internet Governance Forum」(IGF)です。IGFは、政府の代表だけでなく、民間企業、学術関係者、市民が参加してインターネットにまつわる様々な課題について議論する会議です。なんと、今年開催されるIGF 2023は10月8日から京都で開催されます。(APNIC56と同じ会場です)

実は、今年はとても異例なことに、世界のインターネットに関わる重要な会合が、日本で多数開催されています。

いずれも、私たちが利用しているインターネットを「どうしていくのか」が話し合われる場です。そこでどんな話題が取り上げられるのか、是非一度皆さんも覗いてみてはいかがでしょうか。日本語で解説されているWebサイトを紹介いたします。

doumae

2023年09月07日 木曜日

IIJ 技術担当部長 インターネットの技術を紹介するのがお仕事です

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