APNICの理事って、どんな仕事なんですか?
2021年03月30日 火曜日
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3月8日、IIJのネットワークエンジニアである松崎 吉伸がAPNIC EC(Executive Council:理事)に再選されました。
出典:https://2021.apricot.net/report/
せっかくなので松崎本人に、APNIC ECとはどんな仕事をしている人なのか、IIJ Engineers Blog編集担当が改めてインタビューしてみました。
APNIC ECとは
APNICは、世界に5つある地域レジストリの1つで、アジア・太平洋地域の IPアドレス割り当てと管理業務を行ないます。また、インターネットの運用技術に関する情報共有の場を設けたり、技術者の教育を目的としたワークショップなどを主催したりと「インターネットを、もっといいものにする」ための活動を実施しています。
ECとは、APNIC会員によって代表として選出される、APNIC運営を管理するメンバーのことです。ECの任期は2年、定員数は7名で、毎年4名または3名を改選しています。松崎は2019年からECを務めており、今回は2回目の当選です。
APNICは各国のインターネットレジストリや企業が参加者となるコミュニティであり、IPアドレスの割り当て・管理業務は、それを担う事務局会社に任せます。ECは事務局会社の、いわば取締役のような存在です。各種ルール・ポリシーの最終決定や、APNICが実施する事業計画と予算の承認など「APNICという組織を通じ、インターネットをもっといいものにする」ための意思決定がECのミッションです。APNICが担当するリージョンは先進国から発展途上国、大国から小国まで多様性に富んでいて、環境や教育の格差も大きいです。なので、それぞれの利害などを乗り越えAPNICの目的が達成されるよう、ECたちは対話を重ねて、様々なことを決めています。
世界の5つの地域レジストリ、イメージ図。国ごとのレジストリ(日本はJPNIC)は、ある国とない国がある。
企業に所属しながら、ECを務めること
IIJは、経営陣がインターネットの安定運用のために必要な取り組みを、会社の売上と同じく大事なことだと認識している、ユニークな会社です。 ときには短期的な利益に繋がらなかったり、内外に先行事例の少なかったりする状況でも、それがインターネット全体にとって重要だと判断されれば、自主的に推進することができます。たとえば最近だとRPKIも必要なプロジェクトとして認識され、導入が進められました※。
※RPKIについては以下を参照
私は学生時代から情報学を専攻していたわけではなく、社会人になってからインターネットの運用に関わりはじめました。ユーザサポート、バックボーンネットワークの運用などを経験するなかで、自然な流れでJANOGに参加するようになりました。コミュニティ内で活動し、発表者や講師などを務めるようになると、これまた自然に「海外で発表してきたら?」「こういうワークショップの講師を探しているんだけど、できない?」とお声がけいただくようになります。こうしたオファーのボールを、拾えるだけ拾っていたら、結果的にAPNICのECを務めることになっていました。
最後に
インターネットはこれまでも、そしてこれからも、可能性に満ちた魅力的な存在です。しかし現在は、放置しておくと危険なものになりかねない存在にもなっています。日本というリージョンを代表しつつ、技術のわかるエンジニア出身の理事として、「インターネットを、もっといいものにする」べく、引き続き励んでいきたいと考えています。
参考
- JANOG 41 ミーティング講演資料「BGPチュートリアル」
- IIJ Technical Week2020 講演動画「世界のインターネット事情」