技術レポート:IIR Vol.48 エグゼクティブサマリ

2020年10月09日 金曜日


【この記事を書いた人】
島上 純一

IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。

「技術レポート:IIR Vol.48 エグゼクティブサマリ」のイメージ

本記事は、2020年9月24日発行のIIR Vol.48より「エグゼクティブサマリ」を転載したものです。

IIRとは
「Internet Infrastructure Review」(略してIIR)は、インターネットの基盤技術に関する最新の技術動向や、セキュリティ情報を積極的に発信する季刊の技術レポートです。IIJがインシデント観測の仕組みで収集した各種攻撃の傾向と対策に関する情報や、インターネットバックボーンの運用を通して蓄積した技術的知見を掲載しています。

エグゼクティブサマリ

日本では、固定系ブロードバンド契約者のトラフィックの実態を把握するため、総務省が主要なインターネットサービスプロバイダ、インターネットエクスチェンジ、研究者の協力を得て、トラフィックの集計・試算を行っています。この調査はIIJも参加して2004年から続けられており、インターネットの発展を記録するうえで、非常に貴重なデータの1つとなっています。この度、最新版の2020年5月の集計結果が公表(※1)されました。今年は新型コロナウイルス禍によって、インターネットのトラフィックが世界的に増大していることはメディアでも報道されており、皆さまもご存じのことでしょう。今回、集計対象となったのは、緊急事態宣言が発令されて、国民の移動が最も厳しく制限されていた時期と重なります。結果として、固定系ブロードバンド契約者の総ダウンロードトラフィックが、昨年5月は前年度比17.5%の増加であったのに対し、今回は前年度比57.4%と大幅な増加になっています。総アップロードトラフィックも48.5%の増加と大きな伸びを示しています。新型コロナウイルス禍がインターネットのトラフィックに与える影響があらためて数字として明らかにされたと共に、非常時においてインターネットが果たした役割の大きさも読み取れる貴重なデータであると受け止めています。

今回の新型コロナウイルス禍に限らず、地震や台風といった自然災害など、社会に多大な影響を与える事象が発生したとき、インターネットは大きな役割を果たしてきました。そしてこれからもインターネットが社会インフラとして期待される役割を全うできるよう、我々も努力していきたいと考えております。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。

定期観測レポート ブロードバンドトラフィックレポート~新型コロナウイルス感染拡大の影響

1章の「定期観測レポート」では、IIJの固定ブロードバンドとモバイルのトラフィックの分析結果を報告しています。総務省の集計をもとに新型コロナウイルス禍の影響が出ていることは先述しましたが、こちらの分析では、より詳細にその影響を見ることができました。総トラフィックは、今年に入ってから国民の行動が制限され、5月の緊急事態宣言でそれがピークに達し、6月に入って緩和されたことが明確に読み取れました。また、6月初旬の利用者当たりのトラフィックの量分布は、固定ブロードバンドが増大、モバイルが減少という結果となり、国民の行動が制限され自宅での活動が増加したことが、トラフィックからも裏付けられる結果となりました。

フォーカス・リサーチ(1)「5G時代のMVNOの在り方~VMNO構想の実現に向けた取り組み」

2章の「フォーカス・リサーチ」では、5G時代におけるMVNOの在り方として我々が提唱するVMNO構想を解説しています。昨年から世界各国で5Gのサービスが開始され、日本でも今年からMNOの本サービスが始まりました。しかし、現行の5Gサービスは既存の4Gの仕組みのもと無線区間だけ5Gの仕組みを取り入れて超高速通信を実現しているもので、NSA方式と呼ばれています。NSA方式においては、MNOとMVNOの関係は4Gの時代と変わりありません。5Gで検討されてきた多数同時接続、超低遅延を実現するには、本格的に5Gの仕組みを採用したSA方式に移行する必要があります。VMNO構想は、MVNOがSA方式のもとで5Gの特徴を活かしたサービスを提供するための考え方を提案しています。

フォーカス・リサーチ(2)「Splunkによる日本語文章解析処理」

3章の「フォーカス・リサーチ」では、我々が大規模メールサービスを運用するなかで、機械学習の技術を活用して、スパム検知の自動化、サービス運用の効率化を実現してきた取り組みを紹介しています。その取り組みではSplunkを利用していますが、SplunkのNLP(Natural Language Processing)が日本語に対応していなかったため、独自でNLPを拡張し、日本語のテキストマイニングを可能にしました。テキストマイニングのビジネス活用の事例としても参考にしていただければと思います。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

関連リンク

新型コロナウイルス禍のトラフィックパターン変化を分析

注釈

  1. 総務省、「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算」(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000171.html)。[↑]

島上 純一

2020年10月09日 金曜日

IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。

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