『電話はなぜつながるのか』:私のお気に入りなエンジニア向け書籍

2021年05月24日 月曜日


【この記事を書いた人】
竹﨑 友哉

2020年新卒入社の中で一番若いピチピチの新人。IIJバックボーンネットワークを運用する部署で働く。好きなものはネットワーク(L1~3)とtracerouteとマンホールと架空とDC。社内ではマンホールtakezの異名(?)を持つ。

「『電話はなぜつながるのか』:私のお気に入りなエンジニア向け書籍」のイメージ

ネットワーク技術部の竹﨑です。IIJには2020年度に新卒で入社し、IIJバックボーンの運用に携わる部署で働いております。過去にはこのような記事を投稿しております。

今回は私が電電・インフラ設備オタクになったきっかけの一冊をご紹介いたします。

書籍情報

電話はなぜつながるのか

  • 著者:米田正明
  • 出版社:日経BP

はじめに 電話はなぜつながるのか

そもそも書籍のタイトルである「電話はなぜつながるのか」と考えたことがある方は非常に少ないと思います。電話は水道電気ガスや“インターネット”と同じインフラであり、蛇口を捻れば出てくる水やケーブルを挿せばつながるインターネット( 最近ではケーブルをつなぐことは少ないかもしれませんね:) )のように受話器を上げて特定の番号へダイヤルすれば当たり前のようにつながるものとなっています。インフラ全般に言えることですが、当たり前に使えるということは驚くべきことです。しかし、あまり意識されることはありません。そのような当たり前だけど、驚くべき技術でつながっている電話について解説している本になります。

本ブログでは書籍からピックアップした章や本文と身近に感じることのできる写真を交えて紹介したいと思います。

第1章 「電話がつながる」ってどういうこと?

私たちが普段何気なく使っている電話ーー。ダイヤルすると相手につながるということは直感的にわかっていますが、そもそもどんな仕組みで「つながる」のでしょうか。

まず、電話がつながる流れを思い出してみると以下のようなざっくりとした流れになります。

  1. 受話器を上げる(オフフック)
  2. 電話番号を入力する
  3. 相手の番号に発呼する
  4. プルルルルルル〜♪(ダイヤルトーン)
  5. 相手が電話を取る
  6. 通話開始
  7. 受話器を置く(オンフック)

今回紹介をしている書籍ではこれらの流れを、「電話とは何か」・「第1部 NTT電話編」で解説されています。

この章が含まれる「電話とはなにか」では見出しがとても興味をそそるもので構成されています。

  • 「糸電話」は電話じゃない
  • ネットワークの存在を意識しよう
  • 声が通る道を作る
  • 電話交換機同士がメッセージを伝え合う
  • 声を遅れずに相手に届ける
  • 電話をつなげるドラマ
  • 加入電話のミクロの世界から出発

とても興味がそそられ、ワクワクしてくる見出しではないでしょうか?

この内容が10ページほどで導入としてざっくり説明がされています。私はここから本書の魅力にハマり読みふけりました。

第1部 第3章 電話局への道のり

まず、本書籍では身近に「電話はなぜつながるのか」を感じることができるよう構成されています。家から生えているケーブルは何を経由してどこまで向かっている?そんな第一の疑問を詳細に説明している章が本章になります。

電話機から出た電話線は、電柱の上や地下を通り、最寄りの電話局ビルまで伸びていき、最後に電話交換機につながります。この電話線の道のりにも、大きなドラマがあります。

上記の一文は本文から引用しました。電話をつなぐためには電話機から電話線が対向の相手までつながっている必要があります。このドラマを私が撮影した写真とともに追っていきます。

家やオフィスから出た電話線は保安器を経て、架空のクロージャーにやって来ます。そうです、電柱を見上げるとよくついている黒いあいつです。(2号とか3号とか言われます)

ある地点で「き線(数百から数千本に束ねたケーブル)」に集約するために地下へ向かい(写真では左の黒い太いものが電話線)

マンホールなどの地下の管路を通り(逓信省時代のマンホール!)

電話局の付近で「とう道」と言われる空間へ更に合流し(とう道はすべての電話局にあるわけではないですが)

電話局までやってきます。ここから更に主配線盤に接続され、電話交換機へとつながります。

例に載せた写真は撮影場所がバラバラですが、家から出たケーブルを追っていくと同じような構成になっているはずです。

ちなみに同じ電話である携帯電話や衛星電話も見えない電波でつながっています。衛星電話のワイドスターは地上のアンテナから静止衛星のN-STARまで電波でつながり、N-STARから地上の送受信所までつながっています。街中で正方形のアンテナを見たらワイドスターの証です。

第1部 第6章 電話交換機が「ガチャッ」と線をつなぐ

この章では電話交換機たちが力を合わせて実際に相手まで電話をつなげる道のりが描かれています。

ここでは細かく記載はしませんが、D70という電話交換機を例にユーザとつながるBORSCHT(ボルシト)と言われる回路や、電話交換機が電話番号をもとに次につなぐべき電話交換機を見つける工程、つなぐべき電話交換機がわかったら回線を連結し、最終的に宛先の電話番号を呼び出すまでが細かく説明されています。この工程こそ電話がつながるために重要な部分であり、電話技術の結晶であると思います。

昔であれば電話をかけて、電話交換手さんにかけたい宛先を教えて、ケーブルをつないでもらい相手を呼び出してもらう…と言ったとても時間のかかるものでした。この工程がすべて機械化され、ダイヤルして数秒も経たないうちに相手を呼び出しています。この人による電話交換から機械化される自動電話交換の歴史もなかなか興味深く面白いものがあります。初めて自動化されたステップバイステップ交換機からクロスバー交換機へ置き換えられ、時代が進むに連れクロスバー交換機も電子交換機へ置き換えが進み、現在はデジタル交換機になっています。

京都新風館にある「近畿電気通信局管内自動式電話交換創始ゆかりの地」の記念碑

最後に

私はこの本を読み、ネットワークの楽しみや魅力を再確認することができました。現在のネットワークは語弊を恐れずに言えば電話の歴史でもあります。NTT(日本電信電話)やKDDI=(KDD[国際電信電話]+DDI[第二電電]+IDO[日本移動通信])も電話屋さんです。

電話の歴史は深く、日本国内では明治23年12月16日に東京横浜間で開始されました。電信はもう少し早く、明治2年12月25日です。付近を徘徊すれば記念碑を見つけることができます。横浜側の電話交換創始之地記念碑はビルの建て替えで残念ながら撤去されています。写真の電信創業の地の記念碑は残されています。

電話交換創始之地 東京大手町にて。

横浜側の電信創業の地記念碑。

東京側の電信創業之地記念碑。

1990年電話100年記念マンホール

「すぐつく電話」「すぐつながる電話」二大目標達成の記念碑。

少し話は逸れてしまいましたが、今回紹介した書籍に出てくるものや技術はNTT技術史料館門司電気通信レトロ館KDDI MUSEUMに展示・解説されており訪れれば興奮すること間違いなしです。

NTT技術史料館と門司電気通信レトロ館では現在でも動作する貴重なステップバイステップ方式の電話交換機を見ることができます。

身近だけど、詳しくは知らない。そんな「電話はなぜつながるのか」ぜひご興味のある方は読んでみてください。あわよくば私とインフラ探訪しませんか。(ぼっちなので仲間募集中)

執筆者Twitter @nw_engineer ※意見は個人のものです

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竹﨑 友哉

2021年05月24日 月曜日

2020年新卒入社の中で一番若いピチピチの新人。IIJバックボーンネットワークを運用する部署で働く。好きなものはネットワーク(L1~3)とtracerouteとマンホールと架空とDC。社内ではマンホールtakezの異名(?)を持つ。

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