用字用語を知る【新人エンジニアに役立ちそうなTips】

2026年05月19日 火曜日


【この記事を書いた人】
山本 和彦

仕事のテーマは、DNSサーバの実装。Haskellコミュニティではネットワーク周りを担当しています。2022年に正社員から契約社員となって故郷の山口県に移住し在宅勤務。ときどき東京本社にいます。最近の趣味は、瀬戸内で美味しい魚やイカを釣ること。

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新人エンジニアのみなさん、入社おめでとうございます。IIJ技術研究所の山本と申します。私が大学時代に所属した研究室では、「推敲」という名前の推敲ツールを開発していました。私はその開発に関わってはいませんが、身近にいた仲間から「推敲」の話を聞くにつけ、読みやすい日本語を書く方法について関心を持つようになりました。

これまで、あまり文章を書く機会がなかった人も、文章に誤字を入れるべきではないことはご存知でしょう。今回は、誤字を入れないことと同じぐらい基本中の基本である用字用語について説明します。残念ながら社会人の中には、用字用語を意識して文章を書いていない方が見受けられます。鉄は熱いうちに打ってしまいましょう。

用字用語とは

用字用語とは、統一した表記の一覧、あるいはその表記を用いることです。たとえば、以下の文章を読んでみてください。

桜の花が咲くころから釣れる薄紅色をした真鯛は、特にサクラダイと呼ばれています。この時期、マダイは産卵に備えて浅瀬に移動し、エサの荒ぐいを始めます。この荒食いの事を釣り人は「のっこみ」と呼んでいます。なお、そのものずばり「サクラダイ」という名前の魚もいることに注意しましょう。

わざと用語に揺れを入れていますが、発見できたでしょうか? (発見できなければ、普段から文章を適当に読み書きしている可能性が高いです。)

  • 鯛とタイのように、魚の名前が漢字とカタカナで揺れている
  • 「こと」と「事」が揺れている
  • 「くい」と「食い」が揺れている

文章で用いる表記はできる限り統一すべきです。上記の文章は、たとえば以下のように直せます。

桜の花が咲くころから釣れる薄紅色をしたマダイは、特にサクラダイと呼ばれています。この時期、マダイは産卵に備えて浅瀬に移動し、エサの荒食いを始めます。この荒食いのことを釣り人は「のっこみ」と呼んでいます。なお、そのものずばり「サクラダイ」という名前の魚もいることに注意しましょう。

繰り返しますが、このように用字用語に気をつけて文章を書くことは、誤字を入れないことと同じぐらい大切です。以下に、揺れやすい用語の例を挙げます。

  • 送り仮名:「表す」と「表わす」、「取り消し」と「取消」
  • カタカナ:「ユーザー」と「ユーザ」、「インターフェイス」と「インタフェース」
  • 漢字とひらがな:「いただく」と「頂く」、「すでに」と「既に」、「ください」と「下さい」

読者の方が所属する会社には、会社が従うと定めた用字用語があるはずです。たとえば、三省堂の「新用字辞典」や「文部科学省 用字用語例」などです。(広報に尋ねて方針がないようでしたら、定めるようにお願いしましょう。) 読者の方には、自分なりのポリシーがあるかもしれませんが、会社のために書く文章では、会社の用字用語に従ってください。

なお、これまで自分が用いてきた表記と会社の用字用語が異なる場合、両者を使い分けることは、日本語変換システム(IME)の学習機能も相まって、なかなか難しいです。プライベートなやりとりでも、所属会社の方針に従うのが楽かもしれません。

用字用語は、文章が読みやすくなるような配慮のもとに定められています。たとえば、一般的に漢字とひらがなの比率は3対7ぐらいが良いとされています。上記の例の漢字の割合を増やしてみると、少し読みにくく感じるのではないでしょうか?

桜の花が咲くころから釣れる薄紅色をした真鯛は、特に桜鯛と呼ばれています。この時期、真鯛は産卵に備えて浅瀬に移動し、餌の荒食いを始めます。この荒食いの事を釣り人は「乗っ込み」と呼んでいます。尚、そのものずばり「桜鯛」という名前の魚もいる事に注意しましょう。

IIJの用字用語

IIJの新人エンジニアのみなさん、実はIIJでは独自の用字用語を定めています。社内で、「IIJ表記ガイドライン」というキーワードで検索すると、そのページが見つかるはずです。少しだけ例を挙げてみましょう。

  • 「通り」ではなく「とおり」 (次のとおり)
  • 「事」ではなく「こと」(すること)
  • 「かかわる」ではなく「関わる」
  • 「コンピューター」ではなく「コンピュータ」

私は、所属会社が独自に用字用語を定めていることを誇りに思っています。

Tips

このシリーズでは、テーマが「役立ちそうなTips」ですので、用字用語の紹介だけではダメですね。そこで、テキストファイルに対して会社が定める用字用語を検査するプログラムを取り上げます。用語の揺れを探すサービスや専用のプログラムもあるようですが、形態素解析とかやりたくありませんので、単に正規表現を使います。grep を用いてシェルスクリプトで実装してみましょう。完全ではなく、お気楽に実現できることを目指します。

まず、用字用語のリストを “data.txt” というファイルに用意します。一行一単語で、第一カラムが間違い、第二カラムが正しい表記、第三カラムは例外(省略可)とします。第一カラムと第三カラムは、grep に指定できる正規表現が使えます。たとえば、こんな感じです。

通り とおり 一通り
事 こと 事業\|記事\|事前\|事後\|事例\|大事\|人事\|事情\|幹事\|事態\|事象\|事項\|事務\|無事\|事柄\|従事
かかわる 関わる
コンピューター コンピュータ
[1234]つめ [1234]つ目

以下のような意味になります。

  • 「通り」ではなく「とおり」。例外として「一通り」は正しい
  • 「事」ではなく「こと」。ただし、「事業」や「記事」などにマッチしないこと
  • 「かかわる」ではなく「関わる」
  • 「コンピューター」ではなく「コンピュータ」
  • 「1つめ」ではなく「1つ目」

コマンド引数で指定されたファイルに対して、揺れを検査するシェルスクリプトは、たとえば以下のように実装できます。

#! /bin/sh

while read -r from to exception; do
    echo "**** $from -> $to"
    if [ "$exception" == "" ]; then
        grep "$from" $*
    else
        grep "$from" $* | grep -v "$exception"
    fi
done < data.txt

対象のテキストファイルに対して、このシェルスクリプトを実行すれば、誤りを含む行が表示されます。人に文章を見せる前には、これぐらいの検査はやりましょう。

おまけ

最近私は、IIJの新人研修で「HTTPを理解する」というコースを受け持っていますが、以前一回だけ「文章の書き方」について教えたことがあります。また、私の個人サイトで一番人気のある記事は、「正確な文章の書き方」です。興味があれば、読んでみてください。

山本 和彦

2026年05月19日 火曜日

仕事のテーマは、DNSサーバの実装。Haskellコミュニティではネットワーク周りを担当しています。2022年に正社員から契約社員となって故郷の山口県に移住し在宅勤務。ときどき東京本社にいます。最近の趣味は、瀬戸内で美味しい魚やイカを釣ること。

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