IIR vol.52 発行のご挨拶

2021年10月04日 月曜日


【この記事を書いた人】
島上 純一

IIJ 常務取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任、2021年 6月より同協会の副会長に就任。

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エグゼクティブサマリ

2021年9月、日本政府の新たな機関としてデジタル庁が設立されました。デジタル庁のウェブサイト(※1)には「デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を実現する」と書かれています。組織体制図からも、国民向けサービスと省庁業務サービスのデジタル化に積極的に取り組もうとしていることが読み取れます。

行政サービスを受ける機会がないとあまり気にすることもありませんが、数年前に転居したときには各種手続きの多さや不便さに辟易することがありました。また、現在進行形の新型コロナウイルス禍においては、行政サービスでICTの有効活用が進んでいれば、各種給付金の支給やワクチン接種がよりスムーズに行えたのではないかという批判をマスコミ報道で目にします。

日本の行政におけるICTの利活用については、2020年7月に公表された国際連合経済社会局による「世界電子政府ランキング(※2)」において、国際連合加盟193ヵ国中第14位、同年9月に公表された早稲田大学電子政府・自治体研究所による「世界デジタル政府ランキング年次調査(※3)」では、世界のICT先進国64ヵ国中第7位となっています。評価方法にもよるとは思いますが、日本政府の
デジタル化は海外各国と比較すると突出して先を行くわけではないものの、世間で批判されているほど遅れているわけではないということになるのでしょうか。

とはいえ、社会全体でICTの利活用を進め、デジタルトランスフォーメーションを推進することは、国民生活の向上にとって重要です。その際、インターネットは必要不可欠なインフラであり、IIJはインターネットを支えることを通じて、社会のデジタルトランスフォーメーションの実現に貢献していきたいと考えています。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。

1章の定期観測レポートは、IIJの固定ブロードバンドとモバイルのトラフィックに関する定期的な分析です。インターネットのトラフィックがコロナ禍によって大きく変化して2年目になります。社会的な行動制限によるトラフィックへの影響、固定ブロードバンドのPPPoEからIPoEへのシフト、HTTPからHTTPSへのシフト、更には3章で紹介しているQUICの増加など、社会の動きや技術の変化がトラフィックの変化にも現れていることがよく分かる結果となっています。

2章のフォーカス・リサーチ(1)では、Self-Sovereign Identity(SSI)の中核となるVerifiable Credentia(l VC)とそれを実現するBBS+署名について解説しています。今後、デジタルトランスフォーメーションが進むにつれ、デジタルアイデンティティを利用者自身が主体的に管理できるSSIはますます重要になると考えられます。SSIについては、本レポートのVol.43(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/043.html)でも紹介していますが、その後の2年間でSSIを実現するための技術開発が進んでいます。従来のデジタル証明書とVCの違い、VCに関する国内外の実装、標準化、今後の課題などにも触れています。

3章のフォーカス・リサーチ(2)は、先般RFC9000で標準化されたQUICをHaskellで実装した取り組みの紹介です。筆者は新しいプロトコルの議論に参加すると共に、実際に実装し、他の実装との相互接続性を確認することにより、使用時の完成度の向上に尽力しています。多くの実装がイベント駆動プログラミングを採用するなか、ここではHaskellの特徴を生かしたスレッドプログラミングを採用することにより、他の実装とは違う視点から仕様の検証ができたと考えています。本章で紹介する具体的な実装のポイントは、皆様のQUICに対するより深い理解の一助になるかと思います。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

IIR編集部からのコメント

IIJでは、インターネットサービスを開発・運用する中で得られた知見や考察を元にエンジニアが執筆する技術レポート「Internet Infrastructure Review (IIR)」を年4回発行しています。9月30日に発行したIIR Vol.52には、1件の「定期観測レポート」と2件の「フォーカスリサーチ」が収録されています。

関連リンク

以下ではIIRの読みどころとなるポイントを紹介しています!

 注釈

  1. デジタル庁、「デジタル庁について」(https://www.digital.go.jp/about-us)。[↑]
  2. 国際連合経済社会局、”UN E-Government Survey 2020”(https://publicadministration.un.org/en/Research/UN-e-Government-Surveys)。[↑]
  3. 早稲田大学電子政府・自治体研究所、「世界デジタル政府ランキング発表」(https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm)。[↑]

島上 純一

2021年10月04日 月曜日

IIJ 常務取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任、2021年 6月より同協会の副会長に就任。

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