スマート農業の現場でのデータ活用方法 ~ 宮城県登米総合産業高等学校【出張授業】

2023年08月15日 火曜日


【この記事を書いた人】
藤井 俊平

2021年に営業としてIIJに入社。翌年にIoT事業部のプロモーション担当に転属し、現在に至る。珈琲、読書、喫茶店・バー巡り、古着、アニメ・映画鑑賞、ゲームなどなど割と多趣味。写真撮影もガッツリやっていて、そのうち個展 or グループ展を開きたいと思ってます。

「スマート農業の現場でのデータ活用方法 ~ 宮城県登米総合産業高等学校【出張授業】」のイメージ

2023年5月31日に宮城県登米市にある登米総合産業高等学校にて、農業科の2・3年生の生徒さんに「スマート農業」についての授業をさせていただきました。
季節も変わって7月13日、今度は1年生も含めた1~3年生の生徒さんに2回目の授業をするため、再び同校にお邪魔しました!

今回の授業では前回の授業を踏まえ、実際に水田センサーを利用していただいている方からお話を伺ったり、水田センサーとアプリの活用方法の紹介、鳥獣捕獲検知センサーのデモンストレーションなどを行っています。

1回目の授業についてもブログを書かせていただいていますので、こちらと合わせてぜひご覧ください!
スマート農業の授業をしました in 宮城県登米総合産業高等学校

授業に入るまえに

IIJのスマート農業についての取り組みや経緯については、1回目授業のブログ でご紹介しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。

前回に引き続きご紹介しているIIJの水田センサー「MITSUHA LP-01」を中心に、全国の自治体・農家様にアグリ関連サービスをご活用いただいています。
スマートフォンのアプリ上で、自動測定した水位・水温のデータを確認することができますが、今回の授業ではそうしたデータをどのように活用するのか、という点についても着目しています。

スマート農業を活用している登米市

学校近くの圃場の様子(2023/07/13)。水田センサー「MITSUHA LP-01」が設置されている(写真右側)

前回授業時(2023/05/31)の圃場の様子。

再び授業をさせていただいたこちらの宮城県登米市では、JAみやぎ登米様主導で積極的にスマート農業を取り入れていて、実証実験やスマート農業機器の導入も実際に行われています。

今回も学校近くの圃場(上写真1枚目)にお邪魔させていただきましたが、前回5月に訪れた時(上写真2枚目)に比べ稲の長さが伸びていて成長が感じられます!ぜひ収穫の時期にも立ち会ってみたいですね。

授業開始

2回目の授業も「宮城県登米総合産業高等学校」にて実施させていただきました。今回は1回目の授業を受けてもらった農業科の2・3年生の生徒さんたちに加え、1年生の生徒さんにも授業を受けてもらっています。
スマート農業についてより身近に感じてもらうとともに、水田センサーがどのように使われているのか、どんな苦労があるのか、実際に活用されている方の声を交えて知ってもらいました。

今回も講師役として、IIJのアグリ事業推進室室長の花屋が登壇します。

はじめに前回の復習として、「スマート農業とは何か」というところをふりかえります。
2・3年生は前回の授業で学んだことを思い起こしてもらい、1年生にはスマート農業というものが自分たちの身近でも使われるようになってきていることを知ってもらいました。

水田センサーを利用する現場の声

続いてはJAみやぎ登米の武山智幸さんに、水田センサーを実際どのように活用したのか、どのような効果があったのかお話を聞かせていただきました。武山さんはJAみやぎ登米の職員として兼業で農家もされており、実際に水田センサー「MITSUHA LP-01」を活用いただいています。

武山さんが管理されている約6ヘクタールの田んぼでは、一部砂地で水持ちがあまり良くなく、排水口がない区画があり、そこに水田センサーを設置して水管理をされています。
この区画では水を入れる際は1つの給水口から複数の田んぼに水を入れていく必要があり、場所によってはいつ水が入るか分からないという問題があったそうです。そこで水田センサーを利用して水が入ったタイミングを把握することで、水管理を効率化されています。

初代センサー試作機

武山さんには、2018年からIIJの水田センサーの試験にもご協力いただいています。
初期のセンサー試作機(上写真)では水位がうまく取れなかったり不具合が起きたりといったこともあり、はじめは「本当に使えるのだろうか」という思いもありながら使い始めたとのこと。実測値との誤差を毎日計測しバージョンを重ねることで、2号機のセンサーぐらいから信頼性をもって効果を実感できるようになったそうです。

またセンサーは「使う側の(使い方の)アレンジ次第」とも語っており、例えばアプリに表示される水位データから、圃場全体の水の状況などを読み取ることが大切だと仰っています。

水田センサーのデータから何が読み取れるか

前回5/31の授業から、生徒さんたちが持っているタブレットで「MITSUHA」アプリから圃場に設置してあるセンサーのデータを見ることができるようになっています。今回はそのセンサーデータのグラフを見ながらどのようなことが分かるか・それらを踏まえてどのような活用方法があるか、ということを生徒さんたちにも考えてもらいました。(皆さんもぜひグラフを見ながら考えてみてください!)

2023/5/31~2023/7/9で計測した水位・水温データをグラフ化した図

上写真は2023/5/31~2023/7/9の期間で、学校近くの圃場で計測した水位・水温をグラフ化した図です。

例えば図のポイント1を見ると水位が10cmから5cmほどまで減っていることが分かります。またポイント2を見ると水温が30度近くまで上がっていることが分かりますね。

気象庁 AMeDAS(アメダス) 2023年6月の気温・降水量データ

続いて気象庁が観測しているAMeDAS(アメダス)の気温・降水量データを見てみましょう。

この気象データを照らし合わせると、6月初旬(ポイント1の時期)は気温が上がったことで水温が上がり逆に気温が落ち着いている時期では水温も上がっていないことが分かります。田植えされた稲はこうした温度変化の影響を受けることになります。

またポイント3を見ると水位が大幅に上がっていることが分かりますが、これは6月16日の降水量データに連動していることが読み取れます。
こうした水位の上昇が分かっていれば、稲が水に漬かりすぎないように圃場から排水して水を減らすといった対応をすぐに取ることができます。

スマート農業のための「施工工事」

これまで水田センサーの活用にフォーカスしてきましたが、センサーを使うにあたって基地局の設置が必要になってきます。スマート農業を導入する上でこの「施工工事」というのは非常に重要で、この部分を怠ってしまうと思わぬトラブルや事故につながる危険性があります。

登米市内のカントリーエレベーター屋上に設置されている基地局

高所での作業や現場の状況に応じた柔軟な対応が必要になることもあり、事前準備と現場の担当者との綿密なコミュニケーションが重要になる部分です。

※「施工工事」の重要性や大変さについては、IIJと協業関係にある施工会社「ベイシス株式会社」様に詳しくお話を伺ったインタビュー記事がありますので、ご興味があればぜひご覧ください!
【前編】施工のプロ、ベイシス社に聞く IoTの施工現場における課題とは?
【後編】施工のプロ、ベイシス社に聞く IoTの施工現場における課題とは?

わなセンサー デモンストレーション

IIJでは鳥獣害対策におけるIoTの活用についても取り組んでいます。

今回の授業では登米市でもハクビシンやタヌキによる作物被害が増えてきていることを紹介し、IIJから提供している鳥獣捕獲検知センサーとそれを使った捕獲わなのデモンストレーションを行いました。

鳥獣捕獲検知センサーのデモキット

わな自体は檻状のわなとなっており、側部もしくは近くの木にセンサー本体を設置します。仕組みとしては、餌でわなの中まで誘導し、左側にある踏み台を踏むとわな入口のフタが閉まります。そうするとフタにあらかじめ付けられたマグネットが外れることでセンサーからスマートフォンに捕獲されたことが通知されるという仕組みです。

このわなセンサーも水田センサーと同じく、LoRaWAN®という広域・低消費電力の無線規格を利用して、通知を行います。これまではわなに動物がかかっているかどうか現場を周って確認する必要がありましたが、そうした見回りの省力化を行うことができます。

水田の水管理だけでなく、近年被害件数が増えている鳥獣による作物被害の対策についても、スマート農業の技術をうまく活用することが重要になりそうですね。

ワークショップ:スマート農業を学んでみて

授業のまとめとして、前回の授業、そして今回学んだことを踏まえて「授業でもっと詳しく知りたいこと」「授業で実際に触ってみたいもの」「後輩たちにぜひ学んでほしいこと」を考えてもらい、発表してもらいました。

生徒さんたちからは、

・今農業では高齢化が問題になっているので、農業従事者の負担を軽減できるパワーアシストスーツを実際に触ってみたい
・水田センサーは強風などでも耐えられるのかなど気になったので、もっと詳しく知りたい
・無人トラクターを導入するなど、学校でもスマート農業機器を使う機会を増やして将来使いこなせるようにしたい

といった意見が出されました。

前回の授業では「スマート農業の課題と解決策」というテーマでディスカッションしてもらいました。特に2・3年生の生徒さんからはそこで調べて得た知識を活かして、具体的に知りたいこと・実際に触れて学びたいことを考えてくれていたように感じます。

まとめ

前回に続き2回目の実施となりました、宮城県登米総合産業高校でのスマート農業の授業の様子をお伝えしました。

ワークショップのディスカッションでは、「学校でもスマート農業に触れる機会を増やして将来使いこなせるようにしたい」という声がありました。
スマート農業をより身近に知ってもらい、将来彼らが就農する時にスムーズに使えるようになってもらいたい。それは今回こうして授業をさせていただいた目的の1つでもあります。

我々IIJは農業に従事する現場の方々や地方自治体の皆様の声をお聞きしながら、これからもスマート農業の取り組みを進めていきます!

藤井 俊平

2023年08月15日 火曜日

2021年に営業としてIIJに入社。翌年にIoT事業部のプロモーション担当に転属し、現在に至る。珈琲、読書、喫茶店・バー巡り、古着、アニメ・映画鑑賞、ゲームなどなど割と多趣味。写真撮影もガッツリやっていて、そのうち個展 or グループ展を開きたいと思ってます。

Related
関連記事