SEIL/x86 Ayame でマルチギガビットイーサネットに対応する

2025年12月04日 木曜日


【この記事を書いた人】
asahi

2024年新卒入社でSEIL/SA-Wシリーズルータのファームウェアを開発しています。ハードウェア寄りの技術が興味があり趣味で電子工作もやっています。

「SEIL/x86 Ayame でマルチギガビットイーサネットに対応する」のイメージ

IIJ 2025 TECHアドベントカレンダー 12/4の記事です】

こんにちは、IIJの高機能ルータ「SEIL」シリーズのファームウェア開発を行っているasahi です。

昨年の記事では、SEIL/x86 Ayame で10Gbps 対応ルータを構築する模様を紹介しましたが、今回は一段階速度を引き下げて、近年低価格化が進み家庭用としても広く普及しつつあるマルチギガビットイーサネットを SEIL/x86 Ayame で使用する方法を、Amazon で販売されているスタンダードライセンスも使用可能でお手軽に試せるKVM編と、少ないオーバーヘッドでより高性能を目指せるベアメタル編の2通りのアプローチを紹介します。

KVM編

まずは、お手軽に KVM で構築する場合を紹介します。2.5Gbase-T に対応したNICが2ポート以上あるホストであれば環境は選ばないのですが、今回は自宅に余っていたミニPC CWWK X86-P5 を使用しました。主なスペックは以下の通りです。

  • CPU: Intel N100
  • RAM: DDR5 8GB
  • NIC: Intel I226-V x2
  • SSD: 128GB NVMe
  • OS: Ubuntu Server 24.04 LTS

CWWK X86-P5

ここに、2vCPU, メモリ2048MB を割り当てたVMを作成し、配布サイトからダウンロードしたKVM用イメージをインポートします。ブリッジとVMのNIC(virtio)を2個ずつ作成し、それぞれにホストのNICを割り当てます。

KVM に SEIL/x86 Ayame をインストールする方法は過去の記事でも紹介されているため、今回は省略します。

初回起動時はライセンスキーを入力し、再起動後が以下の状態です。お気づきの方もいるかもしれませんが特別な手順は不要で、他のハイパーバイザを使用しても同様です。

特に1Gbpsに制限されるわけではないので、ホストが1Gbps以上に対応していて性能に余裕があれば1Gbps以上の転送速度が期待できます。では、以下のごくシンプルな構成でスループットを iperf3 で測定してみます。

[ ID] Interval           Transfer     Bitrate         Retr
[  5]   0.00-20.00  sec  5.46 GBytes  2.34 Gbits/sec   34             sender
[  5]   0.00-20.00  sec  5.46 GBytes  2.34 Gbits/sec                  receiver

片方向の測定では、 ノートPCと測定サーバを直結した場合とほぼ同様の理論値に近い速度が出ていることが確認できます。

[ ID][Role] Interval           Transfer     Bitrate         Retr
[  5][TX-C]   0.00-20.00  sec  3.35 GBytes  1.44 Gbits/sec   57             sender
[  5][TX-C]   0.00-20.00  sec  3.35 GBytes  1.44 Gbits/sec                  receiver
[  7][RX-C]   0.00-20.00  sec  4.75 GBytes  2.04 Gbits/sec   40             sender
[  7][RX-C]   0.00-20.00  sec  4.75 GBytes  2.04 Gbits/sec                  receiver

一方、双方向の測定では、 合計3.5Gbps程度で飽和してしまいます。ハイパーバイザのネットワークスタックを経由するためオーバーヘッドが大きく、性能の限界になっているようです。とはいえ、双方向に帯域を使い切るような負荷がかかることはかなり稀なので、実用上十分な性能は実現できていると思います。

ベアメタル編

SEIL/x86 Ayameをベアメタル環境で動作させるには、トライアルまたはエンタープライズエディションのライセンスが必要です。Amazonで販売されているスタンダードエディションのライセンスでは起動できません。
また、SEIL/x86 Ayameのベアメタル環境での動作はサポートされていません。試される場合は自己責任で行ってください。

続いて、サーバに(ハイパーバイザを使用せずに)直接SEIL/x86 Ayameをインストールするベアメタル構成でマルチギガビットイーサネットを使用可能にしてみたいと思います。構築方法は昨年の記事を参考にしてください。

今回も昨年も登場した Fujitsu PRIMERGY TX1320 M3 を使用し、マルチギガビットイーサネットに対応したNICであるIntel X550-T2を装着します。

SEIL/x86 Ayameは、ミニPC等によく搭載されている Intel I225/I226 や Realtek, Marvell (Aquantia) 製のNICには対応しないため注意が必要です。

上から X540-T2, X540-T2, X550-T2, Fujitsu D2735-2

ポート側の様子

今回の構成では ge8, ge9 として認識されました。先程のKVM編と同様の構成で接続し、ステータスを確認してみます。

# show status interface.ge8
interface ge8:
        Description: ""
        Status: link up, administratively up
        MTU: 1500
        TCPMSS: none
        TCPMSS6: none
        LastChange: 2025/11/26 09:23:55
        Ipkts: 13, Ierrs: 0, Opkts: 6, Oerrs: 0, Colls: 0
        InOctets: 856, OutOctets: 400, InDrops: 0, OutDiscards: 2
        InUnknownProtos: 0
        VRF: 0
        Media: auto (2.5GbaseT Full-Duplex)
        EthernetAddress: b4:96:91:40:56:40
        IP   address: 192.168.100.1 netmask: 255.255.255.0 broadcast: 192.168.100.255
        IPv6 address: fe80::b696:91ff:fe40:5640%ge8 prefixlen: 64 scopeid: 0x9
# show status interface.ge9
interface ge9:
        Description: ""
        Status: link up, administratively up
        MTU: 1500
        TCPMSS: none
        TCPMSS6: none
        LastChange: 2025/11/26 09:23:55
        Ipkts: 2, Ierrs: 0, Opkts: 2, Oerrs: 0, Colls: 0
        InOctets: 120, OutOctets: 120, InDrops: 0, OutDiscards: 2
        InUnknownProtos: 0
        VRF: 0
        Media: auto (2.5GbaseT Full-Duplex)
        EthernetAddress: b4:96:91:40:56:41
        IP   address: 192.168.101.1 netmask: 255.255.255.0 broadcast: 192.168.101.255
        IPv6 address: fe80::b696:91ff:fe40:5641%ge9 prefixlen: 64 scopeid: 0xa

「Media: auto (2.5GbaseT Full-Duplex) 」となっており、2.5Gbase-T で接続されていることが確認できます。

では、先程と同様にこちらもiperf3でスループットを測定してみます。

[ ID] Interval           Transfer     Bitrate         Retr
[  5]   0.00-20.00  sec  5.48 GBytes  2.35 Gbits/sec    0             sender
[  5]   0.00-20.00  sec  5.48 GBytes  2.35 Gbits/sec                  receiver
[ ID][Role] Interval           Transfer     Bitrate         Retr
[  5][TX-C]   0.00-20.00  sec  5.46 GBytes  2.35 Gbits/sec    0             sender
[  5][TX-C]   0.00-20.00  sec  5.46 GBytes  2.35 Gbits/sec                  receiver
[  7][RX-C]   0.00-20.00  sec  5.47 GBytes  2.35 Gbits/sec    0             sender
[  7][RX-C]   0.00-20.00  sec  5.46 GBytes  2.35 Gbits/sec                  receiver

ベアメタル構成では片方向・双方向の両方でノートPCと測定サーバを直結した場合とほぼ同様の理論値に近い速度が出ており、オーバーヘッドが少なくより高性能であることが確認できます。

ちなみに、X550-T2 は、1/2.5/5/10Gbps 対応なので、2.5Gbase-T だけでなく 5Gbase-T も使用可能です。以下に 5Gbase-T 接続時のステータスの例を示します。今回、自宅に 5Gbase-T 対応設備が十分に無いためスループットの測定は行っていませんがご了承ください。

# show status interface.ge9
interface ge9:
        Description: ""
        Status: link up, administratively up
        MTU: 1500
        TCPMSS: none
        TCPMSS6: none
        LastChange: 2025/11/27 10:53:17
        Ipkts: 10891293, Ierrs: 0, Opkts: 17041192, Oerrs: 0, Colls: 0
        InOctets: 8656179165, OutOctets: 21426017356, InDrops: 0, OutDiscards: 1
        InUnknownProtos: 0
        VRF: 0
        Media: auto (5GbaseT Full-Duplex)
        EthernetAddress: b4:96:91:40:56:41
        IP   address: 192.168.110.1 netmask: 255.255.255.0 broadcast: 192.168.110.255
        IPv6 address: fe80::b696:91ff:fe40:5641%ge9 prefixlen: 64 scopeid: 0xa

まとめ

KVM
  • スタンダードエディションで使用可能
  • ホスト側で使用可能なUSBタイプを含め様々なNICを使用可能
  • ハイパーバイザでのネットワークのオーバーヘッドが大きい
ベアメタル
  • オーバーヘッドが少なく高性能
  • 使用可能なNICが限られる

メリットとデメリットをまとめると上記の表のようになるでしょうか。

ミニPC+スタンダードエディションでも 2.5Gbps であれば必要十分な性能を実現できると思いますので、ご家庭での利用もおすすめです。

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asahi

2025年12月04日 木曜日

2024年新卒入社でSEIL/SA-Wシリーズルータのファームウェアを開発しています。ハードウェア寄りの技術が興味があり趣味で電子工作もやっています。

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