JANOG41 映像配信機材の紹介
2018年05月16日 水曜日
初めまして、からさわです。
「IIJ Engineers Blog、開発・運用の現場から、IIJのエンジニアが技術的な情報や取り組みについて執筆する公式ブログです。」
ということになっているそうですが、私はエンジニアではありません。
97年にIIJに新卒で入社したときは営業採用だったし、今までもお客様先で技術担当です、と名乗ったことがなかった私がこのようなところに記事を書いても良いものかと思ったりもしますが、JANOG41では映像配信系の担当として働きましたし、せっかくの機会ですから、JANOG41の配信の裏側について、二回にわたってご紹介したいと思います。
一回目はIIJの映像配信の歴史から機材のご紹介をしたいと思います。
IIJでは実は結構長いこと配信系のサービスをやってまして、私の記憶に残るところでは、1998年の愛知県岡崎市の花火大会を、当時の社員が住んでいた自宅アパートの屋上からISDN回線からIIJ設備に映像を送ってインターネット中継(当時ですから、映像品質は今と比べると比べものになりませんが)をしたこともありました。
このときも、映像系含めて自社機材でインターネット中継を行っていました。
ISPであるIIJが、なぜ映像系の機材を持っているのかというと、JOCDNの設立理由でもある、動画系コンテンツをシームレスにインターネットに配信できるようなサービスを作るためには、テレビ放送会社様と会話が成り立た無くてはならないからです。
そのためには一般家庭レベルの機材ではなくそこそこの機材をそろえる必要があります。
テレビ放送会社様の映像系機材はSDIというインタフェースで映像信号をやりとりしているため、IIJが所有しているほとんどの映像系機材はSDIのインターフェースをメインとした機材になっています。ですが、SDIだけだと取り回しも悪くなるため、HDMI/SDI双方を備えた機材や、HDMIとSDIの変換装置、SDI分配器、映像フォーマットコンバーターといった機材を所有していまして、JANOG41ではそれらの機材を組み合わせて、インターネット中継を行っていました。
映像系機材の紹介
カメラ
まずはカメラです。
JANOG41では、SONYのPMW-EX3 2台およびFS-7II 1台の計3台を使って映像中継を行っていました。HDMIだと通常のケーブルでは機器間の距離は10m程度しか離すことが出来ないのですが、SDIを使いますと100m程度離れていてもケーブルさえあれば接続することが出来るため、広島国際会議場のフェニックスホールのサイズでも、比較的自由にカメラを配置することが出来ます。
(引用:https://www.sony.jp/products/picture/PMW-EX3.jpg)
(引用:https://www.sony.jp/products/picture/PXW-FS7M2.jpg)
ちなみに、FS-7IIは4Kカメラです。4K映像のネット中継が一般的になってきましたので、まずはカメラからということで準備しています。4K対応のLiveエンコーダーも揃えましたので、4K映像を戴ければ、4K品質でインターネット中継することも出来るようになりました。
スイッチャー
次はPCの映像切り替えスイッチとして使っていたLiveWedgeです。これはYoutuberでも使っている人がいると思います。
JANOG41では、登壇者席のPC映像を会場内プロジェクターおよびインターネット中継用に映像を出していましたが、複数の登壇者がいるセッションで、登壇者毎にケーブルをつなぎ替えてもらうのもナンセンスなため、LiveWedgeをPC用のスイッチャーとして利用していました。
そして、PCからLiveWedgeを経由して出力される映像フォーマットと、カメラ系機材のそれとでは映像フォーマットが異なっていたため、映像系スイッチャーに入れる手前でフォーマットを揃えてあげる必要があります。高級な映像系スイッチャーであれば、インタフェース毎にフォーマット変換する機能も持っているのですが、かなり高額な機材になってしまうため、手持ちのフォーマット変換専用の機材ということで、BlackMagicDesignのTeranex Standards Conversionを使いました。
(引用:https://images.blackmagicdesign.com/images/products/teranex/main/teranex-av.jpg?_v=1472622012)
映像系スイッチャーはBlackMagicDesignの ATEM Television Studio Pro HDです。これだけ大きいスイッチャーは有名Youtuberも持ってないと思います。
(引用:https://images.blackmagicdesign.com/images/products/atemtelevisionstudio/landing/front-panel-pro-hd.jpg?_v=1521761922)
実は映像のスイッチングに使える機材はいくつか持っていたのですが、手持ちの機材では力不足(スペック的にSDI/HDMIのポート数が足りない)だったため、JANOG41を理由に調達したというのは内緒です。
これに、IIJ中四国支社から大きめのモニターをフェニックスホールに持ち込んで、スイッチャーの映像をだして、3台のカメラ、登壇者PCの映像、あらかじめ用意したスライドのどれを中継用の映像として出すのかといったスイッチングを現地で行って中継映像を制作します。
レコーダー
そして、制作した映像は、レコーダーで録画しつつ、映像伝送します。
データセンター側のエンコーダーでも配信映像の録画はしていたのですが、映像伝送に失敗することも想定して、現地でも録画します(実際、ネットワークトラブルがあって、役立ちました)。
そのレコーダーとして利用したのはATOMOSのSHOGUN Infernoです。これは4Kのレコーダーおよびプレイヤーとしても利用可能で、ほかの案件で4K映像の伝送実験をした際にも活躍した機材です。
(引用:https://www.atomos.com/assets/images/shogun-inferno/shogun-inferno.png)
伝送装置
最後にレコーダーのスルーアウト映像をIIJのデータセンターに伝送するために使ったのが、アイベックステクノロジー社の超低遅延映像伝送装置、HLD-300Cです。
(引用:http://www.ibextech.jp/photo/HLD300C/hld300C.jpg)
1台のHLD-300Cでエンコーダーモード、デコーダーモードを切り替えて運用することが出来、また、当社の配信用エンコーダーに直接映像を伝送することも出来る機材で、弊社が最近行った映像中継案件では、かなりの確率でこの機材を利用しています。
これらの機材の動作確認をJANOG実行委員会の担当の方を交えて1月上旬に接続テストを行いつつ、テスト終了後にパッキングを行い、本番に備えます。
また、JANOG41ではこれらの機材を使って制作した映像を、データセンターにある配信用エンコーダーに送り、そこからIIJ独自CDNならびにYoutubeに映像を送って中継を行っていましたが、IIJ独自CDNから配信していた動画では、その視聴分析用にConviva InsightsというPlayerに埋め込んだビーコンを集めて視聴分析するツールも使っていました。
Conviva Insightsは、視聴者がどのISPから見ていたのか、再生開始にどれくらいの時間がかかったのか、もしくは失敗したのか、再生を開始してからリバッファリングがどれくらい発生したのか、再生を開始してから再生失敗がどれくらいの割合で発生していたのか、どのビットレートで映像を見ていたのか、といった、映像が見られた・見られなかった、だけではなく、どれくらいの品質で見られていたのか、までの分析が可能なツールです。
こういった機材やツールを使って、JANOG41のインターネット配信を実施しており、これらのノウハウはまた次の配信の機会に活かされるだけではなく、よりよいサービスを検討していくためにも活かされます。
以上で、配信系機材の紹介を終わります。
二回目は実際の中継の模様をお届けしたいと思います。