Starlinkの航空機利用、国際線は固定IP?
2026年11月04日 水曜日
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前回の調査に続き、2026年10月9日(金)〜 10月11日(日)に開催されたEVO France 2026でもStarlinkの記録をとってもらいました。今回は通信遅延も計測することで航空機からの通信がどのような経路を通るのかも考察していきます。
計測内容について
Starlinkのアーキテクチャを再掲します。

今回は航空機のIPアドレスを記録しつつ、特定の接続先までの遅延を計測します。
IPv4での遅延計測先にはGoogle Public DNSのIPアドレス8.8.8.8を使いました。ここはIP Anycastと呼ばれる仕組みを利用しており、通常はネットワーク的に近い拠点へルーティングされます。そのため、接続地点付近までの遅延傾向を確認しやすいと考えました。
IPv6での接続先はwww.iij.ad.jpのIPv6アドレスを使っています。これはIIJの設備なので地球上での位置が固定できます。航空機が日本から離れるほど遅延が大きくなることを確認できるなと考えました。
計測間隔は前回と同じ15分単位で行っています。
カタール航空 QR807 と QR55
航空会社は前回と同じカタール航空で、搭乗したのはQR807とQR555だったため、前回の検証とは異なる航空機になっています。
QR807
区間: 東京・成田空港(NRT) ➔ ドーハ・ハマド国際空港(DOH)
出発時刻: 2026年10月7日 22:47 (JST)
到着時刻: 2026年10月8日 10:08 (JST)
QR55
区間: ドーハ・ハマド国際空港(DOH) ➔ ニース・コートダジュール(NCE)
出発時刻: 2026年10月8日 17:00 (JST)
到着時刻: 2026年10月8日 22:44 (JST)
今回も搭乗中にIPv4アドレスの変化はありませんでした。IPv6アドレスのプレフィックスも変化しませんでした。
前回のQR813とQR37もまとめてIPアドレスの記録結果を以下に示します。QR55のみIPv6アドレスの割り当てがありませんでした。
| 日付 | 航空便名 | From | To | IPv4(/32) | IPv6 Prefix(/64) |
| 2026/9/9 | QR813 | 羽田 (HND) | ドーハ・ハマド国際空港 (DOH) | 143.105.219.127 | 2605:59c0:700e:bd30:: |
| 2026/9/9 | QR37 | ドーハ・ハマド国際空港 (DOH) | パリ・シャルル・ド・ゴール空港(CDG) | 143.105.221.230 | 2605:59c0:700c:fe30:: |
| 2026/10/7 | QR807 | 東京・成田空港 (NRT) | ドーハ・ハマド国際空港 (DOH) | 143.105.219.81 | 2605:59c0:700e:8230:: |
| 2026/10/8 | QR55 | ドーハ・ハマド国際空港 (DOH) | ニース・コートダジュール(NCE) | 143.105.219.125 |
遅延計測の結果と考察
前回こんな図を書きました。

日本を出発した時から、IPアドレスがカタールだったのでStarlink衛星が搭載しているISL(Inter Satellite Link)機能をつかってカタールの地上局まで通信を伸ばしているに違いないと考えました。しかし遅延を計測すると、違う結果がみえてきました。
QR807での記録をグラフにするとこのようになりました。遅延の傾向が変わっているところで色分けしています。

①紫色の区間でのインターネット接続拠点(POP)はカタールではなく日本だったと考えるのが合理的です。もしカタールを経由していたらIPv6がこの遅延にはなりません。IPv4もIPv6も50ms以下で安定しています。
②水色の区間はおそらくアジアのどこかのPOPなのではと考えています。IPv4はAnycastで運用されているのでPOPの近くを計測しているので遅延があまり増えていません。IPv6は日本まで通信しているので遅延が増えているし計測結果がばらついています。
③赤色の区間はインド上空です、この区間はStarlinkはサービスしていないので通信できていません。
④緑色の区間はインドを抜けてカタールまでの区間です。IPv4の変動が大きいのですが、遅延が大きく(150ms台)になる前に水色の区間ぐらいの遅延での記録もあり、Anycastがうまく機能していないのか?正直よくわかりません。IPv6は日本のアドレスの遅延を計測しているので順当に遅延が伸びています。
航空機向けは固定IPアドレス、IPアドレス単位で経路制御?
今回の挙動をふまえて改めて今回の繋がりを考えます。

以下は、今回の計測結果から推測した概念図です。実際のネットワーク構成を示すものではありません。
- Starlink衛星と地上のPOPによってStarlink網が形成されている。
- Starlink網は航空機がどのPOPに繋がっているのか管理している。
- 航空機からの通信は最寄りのPOPからインターネット網を通って通信相手に届く。
- 相手からの通信はインターネット網からStarlink網に最も近いPOPに入って、Starlink網で制御されて航空機に届けられる。
今回計測した各便では、搭乗中にIPv4アドレスやIPv6プレフィックスの変化は確認されませんでした。この結果から、航空機ごとにIPアドレスを維持し、そのIPアドレスを基にStarlink網内で経路制御している可能性があると考えています。
今後も調査を進めていきます。まずはアジアのPOPがどこなのか調査したいと考えています。