Starlinkの航空機利用、国際線のIPアドレス変化を追う
2026年09月18日 金曜日
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僕の従兄弟はプロゲーマーの「ときど」選手です。彼は仕事柄、世界中の大会に参戦するわけですが、最近はStarlink搭載の航空機に乗る機会もあるようです。そこでIPアドレスを記録できるスマホを用意してデータ収集してもらいました。

左:ときど選手 右:筆者
計測はカタール航空のQR813とQR037
2026年9月11日からフランスで開催されるUFA2026(Ultimate Fighting Arena 2026)というヨーロッパ最大級の格闘ゲーム大会に参戦するため、ときど選手はカタール航空の航空便に搭乗しました。東京・羽田空港からドーハ・ハマド国際空港までの便(QR813)と、ドーハ・ハマド国際空港からパリ・シャルル・ド・ゴール空港までの便(QR037)で計測してもらいました。

Starlinkの挙動について
Starlinkのアーキテクチャはこんな形になっています。

航空機からの通信はStarlink衛星→ゲートウェイ→インターネット接続拠点→インターネットと繋がります。
ゲートウェイやインターネット接続拠点は世界中に展開しているので、いろいろな国の上空でインターネット接続拠点が切り替わりIPアドレスが変わると考えられます。
IPアドレスの計測は15分毎に行うようにしました。IPv4アドレスとIPv6アドレスを記録するようにしたので、どのように変化していったのかがわかります。
QR813 羽田 (HND) ➔ ドーハ (DOH) ➔ パリ (CDG)の記録
では時系列にそって説明します。
QR813 羽田 (HND) ➔ ドーハ (DOH)
区間: 東京・羽田空港(HND) ➔ ドーハ・ハマド国際空港(DOH)
出発時刻: 2026年9月9日 01:25 (JST)
到着時刻: 2026年9月9日 12:11 (JST)
QR037 ドーハ (DOH) ➔ パリ (CDG)
区間: ドーハ・ハマド国際空港(DOH) ➔ パリ・シャルル・ド・ゴール空港(CDG)
出発時刻: 2026年9月9日 21:24 (JST)
到着時刻: 2026年9月10日 04:06 (JST)
9月9日
| 1:25 | 東京・羽田空港(HND) を出発 |
| 2:00 | Starlinkが使えるようになる(IPアドレスは143.105.219.127) |
| 神戸上空で、マゴ選手と対戦(ping は 140ms) | |
| 8:00 | Starlinkが使えなくなる |
| 10:15 | Starlink復活(IPアドレスは 143.105.219.127) |
| 14:00 | ドーハ・ハマド国際空港(DOH)到着 |
| 空港内Wi-Fiに切り替える(IPアドレスは212.77.220.109) | |
| 21:15 | パリに向け出発、Starlinkに接続(IPアドレスは143.105.221.230) |
9月10日
| 4:15 | パリ・シャルル・ド・ゴール空港(CDG) 到着 |
日本では規制で高度が上がるまで使えない
日本では以前に説明したように、Starlinkを利用できるのは、航空機が高度3000mを超えてからになります。羽田空港を飛び立ち、2:00から使えるようになったようです。
カタールのIPアドレスを使用していました
そしてIPアドレスですが、Starlinkのジオロケーションは日本ではなく最初からカタールを指していました(143.105.219.127)。パリへの航路でもカタール(143.105.221.230)をさしたまま変化しませんでした。
143.105.219.0/25,QA,QA-DA,Doha,
143.105.221.128/25,QA,QA-DA,Doha,
正直これは想定外でした。日本の近くなら日本のインターネット接続ポイント経由で繋がるだろうし、いろいろなIPアドレスがでてくると思っていたからです。実際IPアドレスが何回か変わるという話は、Starlink関係の論文にもありました。
Starlink衛星はISL(Inter Satellite link)を搭載し、複数の衛星を仲介して通信距離を伸ばすことができます。
日本からカタールまでの距離は約8300kmあり、何台あれば繋がるのかAIと壁打ちしてみると4台から6台では?という結論になりました。高度550kmを移動する2機のStarlink衛星が地球に遮られることなく通信できる距離は約5000kmですが実際には距離の余裕や衛星の位置関係などを考慮すれば2機プラス複数の中継機という構成かと思います。
今回神戸上空ぐらいでゲーム対戦を試していますが、

こんな距離で対戦していたのではなく、

こうなっていたようです。
対戦の様子は動画で確認できます。
https://youtu.be/7BR3Mq1L35k(3分10秒あたり)
https://youtu.be/CAy9lMoAe0U(10分23秒あたり)
地上の光ファイバーの距離も、飛行機と同じ8,300km程度だと仮定すると、飛行機が日本近傍を飛行しているときは、通信だけはカタールまで行って折り返しているので、片道で16,000kmぐらいの距離を経ていることになります。
16,000km離れて遅延が140msという数字は優秀な数字じゃないかと思います。
もし、すべての経路が地上の光ファイバーを通っていたとすると、遅延140msは10,000km程度に相当します。これは日本からアメリカのダラスあたりとの通信に相当します。
遅延140msというと日本からダラスあたりへのアクセスで、距離は10,000kmぐらいです。
Starlink経由の通信が、距離が遠いのに遅延が短いのは、地上に比べてStarlink経由の方が通信の中継箇所が少ないことと、Starlink部分の無線通信(光速)が、光ファイバーの通信(光速の2/3程度)よりも早いことが影響しているためかもしれません。
インド上空では使えない
8:00から10:15までの間はStarlinkが使えない記録が残っていました。この時間はインド上空を飛んでいたようです。
調べた限りでは、インドの規制当局から許可がおりていないので電源を切っていたのだと思われます。
そのあとはずっと使える
インド上空を通過したあとはハマド国際空港に着陸するまで使えています。
ハマド国際空港滞在中は空港のWi-Fiに繋げています(212.77.220.109)。
ドーハからパリまでは空港を飛び立つタイミングから到着までずっとStarlinkが使えています(143.105.221.230)。
Starlinkの航空機利用、仕様が変わった?
カタール航空の場合、IPアドレスはずっとカタールのままだったことが今回わかりました。
今回の観測結果から推察するに、航空機の国籍をベースに、特定の国のインターネット接続拠点を継続利用する仕組みが採用されている可能性が考えられます。これを実現するために、衛星間リンクを活用しています。
Starlink関係の論文は2025年の11月に出ていますのでISL利用技術が進んでこのような繋ぎ方ができるようになったのは最近なのではないかと思います。
今回はカタール航空でしか確認できなかったので、引き続き他の航空会社でも確認してレポートしようと思います。
今回の距離は8300kmでしたが、もっと距離が長くなっても繋がるのか?興味は尽きません。
IPv6アドレスも基本的には変わらずカタールのIPアドレスでした、ただちょっと挙動が違う所もあったので、もう少し調べようと思います。
