Starlinkの動的IPアドレスはどれくらい変化するのか?調べました

2025年01月20日 月曜日


【この記事を書いた人】
谷口 崇

長くゲーム業界に出向していましたが、2022年秋に戻ってきました。ゲーム業界での経験も生かしながらIIJのエンジニアとしてちょっと面白いことを提供できていければいいなぁと思っています。格闘ゲームの世界チャンピオンになった従兄弟がいますが彼にゲームを教えたのは僕ではありません(笑) 。CAPCOM CUP進出を決めましたねー!がんばれー

「Starlinkの動的IPアドレスはどれくらい変化するのか?調べました」のイメージ

Starlinkは固定IPアドレスを提供するサービスはなく、動的IPアドレスで提供されています。アドレスはDHCP等で更新されますが、実環境はどれくらいの頻度でかわるのか?データを収集してみました。

お知らせ

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1月23日16:00からJANOG55会場のB1F ウェルカムホール(20席)で実施します(野良BOFカレンダー)のでよろしくお願いします。

Starlinkが提供するIPアドレスについて

IPアドレスの仕様についてはFAQにわりと詳しく説明されています。

https://www.starlink.com/jp/support/article/1192f3ef-2a17-31d9-261a-a59d215629f4

要約するとこんな感じになります。

IPv4

  • 「デフォルト」と「パブリック」2種類のポリシーがある
  • デフォルトはCGNAT用のIPアドレス 100.64.0.0/10 から配布
  • パブリックはインターネットから直接アクセス可能なIPアドレスが割り当てられる
  • パブリックが使えるのは「優先」がついたプランのみ

IPv6

  •  ネイティブIPv6での配布
  •  WAN向けは/64プレフィックス、SLAACによる自動設定
  •  LAN向けは/56プレフィックス、DHCPv6-PDで配布

geoip情報から取得した日本のIPアドレス範囲は以下になります。

65.181.4.0/24,JP,JP-13,Tokyo,
65.181.5.0/24,JP,JP-13,Tokyo,
65.181.6.0/24,JP,JP-13,Tokyo,
65.181.7.0/24,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.104.0/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.104.128/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.106.0/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.106.128/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.109.0/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.109.128/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.124.0/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.124.128/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.125.0/25,JP,JP-13,Tokyo,
206.83.125.128/25,JP,JP-13,Tokyo,
2406:2d40:3000::/40,JP,JP-13,Tokyo,

実機から取得したIPアドレスと比較するとIPv6のSLAACは2406:2d40:3000:0000::/64 から 2406:2d40:3000:ffff::/64 の間、最初の16bit 分を使うようにみえます。そうするとDHCPv6-PDで配布される範囲は2406:2d40:3001:0000::/56 から 2406:2d40:30ff:ff00::/56 ということになるかと思います。

Starlink DHCPv6

以上からIPv6に関してはほぼ16bit分のPrefix空間が確保されているようです。

IPアドレスの収集について

今回、3か所(白井・大阪・松江)で収集しました。期間は大体1ヶ月です。IPv4の割り当て方法やネットワーク機器などが違うので表にしました。

設置場所 ルータの種類 IPv4アドレス
白井 Starlink標準ルータ デフォルト
大阪 SEIL/X86 パブリック
松江 Starlink標準ルータ デフォルト

収集方法はそれぞれのStarlink配下にある機器からインターネット上の機器にアクセスしたときのIPアドレスを記録します。1時間間隔で収集してすることで、時間と共に変化するIPアドレスがわかるようにしました。

デフォルトポリシーを使っている白井と松江はアドレスが変化しました

白井で変化したときの記録はこんな感じです。

白井のログ

これをみるとIPv4アドレスが変化したタイミングでIPv6アドレスも変化したようにみえますが、機器は

2406:2d40:30**:**00::a97 (DHCPv6によるルータからのアドレス配布)

2406:2d40:30**:**00:ce7e:d8c6:fdc4:2e5e (RAによるIPアドレスの自動設定)

2個のアドレスがついている状態から

2406:2d40:30**:**00:ce7e:d8c6:fdc4:2e5e (RAによるIPアドレスの自動設定)

1個だけになっているようです。

Starlink標準ルータの環境ではIPv6アドレスはRAによる自動設定されたIPv6アドレスとDHCPv6で配布されてIPv6アドレスの2個がついています。IPv4アドレスが変化するとDHCPv6によるIPアドレスの配布が一時的に停止し、アドレスは1個に減ります。その後DHCPv6配布が復活し、元のIPアドレスに戻っているのではないかと考えられます。

パブリックポリシーを使っている大阪は変化しませんでした

大阪はSEIL/X86をつかっていてDHCPv6によるIPv6アドレスの配布をしていません。最初からIPv6アドレスは1個で計測期間中は変化しませんでした。IPv4アドレスについても変化しません。

大阪Starlink

計測期間中に変化した回数を確認、そして、、

約1ヶ月の間、記録し続けた所、白井と松江は10回近く変更がありました。一方で大阪は一度も変更がありません。

設置場所 ルータの種類 IPアドレス 1ヶ月間の変化
白井 Starlink標準ルータ デフォルト 10
大阪 SEIL/X86 パブリック 0
松江 Starlink標準ルータ デフォルト 9

ここでふと、「Starlinkの標準ルータはファームウェアのアップデートと再起動が頻繁にある」という事を思い出しました。試しに明示的にルータを再起動してみたところ、IPv4アドレスが変化しました。なるほど、、

この事から、デフォルトポリシーのIPv4アドレスを使っている場合、Starlink標準ルータを再起動すると利用されるIPv4アドレスは変化しますがIPv6 Prefixは変化しないという挙動になるようです。

長期間Starlink標準ルータを再起動させなければIPv4アドレスは変化しない可能性もありますが、ファームウェアのアップデート・再起動は強制なのでIPv4アドレスは不定期に変わると考えたほうがよさそうです。

パブリックポリシーのIPv4アドレスを使っている場合にはルータを再起動しても変化しないと考えられます。

ちなみにhome 5Gでは

HR02の環境ではルータを再起動する度に、IPv4アドレスもIPv6アドレスも変化しました。変化しないようなコントロールは難しそうです。

 

 

谷口 崇

2025年01月20日 月曜日

長くゲーム業界に出向していましたが、2022年秋に戻ってきました。ゲーム業界での経験も生かしながらIIJのエンジニアとしてちょっと面白いことを提供できていければいいなぁと思っています。格闘ゲームの世界チャンピオンになった従兄弟がいますが彼にゲームを教えたのは僕ではありません(笑) 。CAPCOM CUP進出を決めましたねー!がんばれー

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