『ハッカーズ大辞典 改訂新版』: 私のお気に入りなエンジニア向け書籍
2021年06月07日 月曜日
CONTENTS
こんにちは、ももいです。
本ブログでは昨年「オススメ技術書」という企画がありました。私はそういう企画モノみたいな(なにかお題を与えられてネタを考える)のが好きなのでいろいろ考えたんですが、オススメと言われるとちょっとハードルが高くて昨年は参加できませんでした。今回は「お気に入り」という主旨でしたので記事を書くことにしました(笑)。
普段はセキュリティサービスの部署で調査や開発あたりのことをしています。このBlogでも過去に3回ほど記事を書きましたので、この記事を読んで「書いたのはどんなやつなんだ?」と気になったら眺めてみてください。しかし、前回書いた記事から気づいたら2年以上経ってるんですねぇ…
ハッカーズ大辞典 改訂新版 (The new Hacker’s dictionary third edition)
- 著者:Eric S. Raymond
- 訳:福崎 俊博
- 出版社:アスキー・メディアワークス
古き良き?Unix文化を伝える歴史書
この本は、インターネットの黎明期からスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学のハッカーたちを中心に書き足されてきたThe Jargon Fileと呼ばれるテキストを、「伽藍とバザール(※1)」などでも知られるEric S. Raymondが編纂し、書籍”The New Hacker’s Dictionary”としてまとめたものの翻訳です。
リンク先を見ていただければ分かるとおり、原文はずっとインターネット上に無料で公開されていますし、更新履歴をまとめたJargon File Archiveというサイトもあります。しかし、今以上に英語が苦手だった当時の私には、この分量の英語を読む根性はなかったでしょう(笑)。和訳本の出版には本当に感謝しかありません。
私がこの本(※2)を気に入っているのは、読むほどに全体から伝わってくる「Unix文化」「ハッカー文化」を、感じて、(わずかでも)吸収できるように思えるからです。大学生当時、間違いなくwannabeeだった私は、周囲にいたコンピュータやインターネットのwizardたちや、本書を含め「ハッカーたちの息吹」を伝える書籍からいろいろなことを感じ、学んできました。
以前「インターネット老人会」というキーワードがTwitterなどで話題になったことがありましたが、本書に散りばめられたエピソードが伝えるのはインターネット黎明期から1990年代始めぐらいまでのもの。「老人会」で出ていたエピソードのさらに10年以上前のものばかりです。このblogを読んでいる大多数の方は「有史以前の話」と感じるんじゃないでしょうか(笑)。私にとっても自分がコンピュータやインターネットに触れる以前の話ばかりです。本書および関連文書は、内容や各項目もそうですが、文書の成り立ちから編集の過程まで含めたすべてが貴重な歴史的資料といっていいでしょう。
大辞典という名前のとおり、本書の大部分は辞書的な造りになっていて、通して読む読み物のようなものではありません(※3)。そういう方もぜひ一度、辞典以外の前文(※4)(特にハッカー語講座)や付録(※5)は読んでみてほしいです。古すぎてピンとこないエピソードだという人も多いでしょうが、そこに出てくるキーワードや意味を調べまくるところから本書に入ると、いろいろな種類の驚きや発見があるかもしれません(※6)。
というわけで、「JargonとかHacker’s Dictionaryって文字列、しばらくあまり見てないなぁ…」と感じていたおっさんによる歴史書紹介でした。
そういえば
「マーフィーの法則」って言葉もめっきり聞かなく/目にしなくなりましたね…
脚注
- 最初に読んだのは「改訂新版」がついていない方(second editionの翻訳)でした。[↑]
- オープンソースソフトウェア開発についての論考。伽藍とバザール [↑]
- あまりの面白さに全項目通して2,3回は読んでしまいましたけど…[↑]
- 原文はこちらで読めます。The Jargon File: Part I. Introduction [↑]
- 原文はこちらで読めます。The Jargon File: Part III. Appendices [↑]
- この記事を書きながら調べてみたら、台湾を代表するハッカー、オードリー・タンさんもおすすめ書籍のひとつに挙げていました。台湾オードリー・タンが目指す「革命」の超本質 | 中国・台湾 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 [↑]