IIJインフラから見たインターネットの傾向 〜2023年(IIR vol.61 1章)

2023年12月25日 月曜日


【この記事を書いた人】
IIJ Engineers Blog編集部

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IIR vol.61 第1章では「IIJインフラから見たインターネットの傾向 〜2023年」をお届けします。

インターネットサービスを提供するIIJは、国内でも有数規模のネットワーク・サーバインフラを運用しています。ここでは、その運用によって得られた情報から、この1年間のインターネットの動向について報告します。特に、BGP経路、DNSクエリ解析、IPv6、モバイルの各視点から変化の傾向を分析しました。

本報告のポイント

  • Theme 01 BGP・経路数
    • BGP・経路数の増減を観察することで、インターネットに接続する組織がどの程度増えたか、インターネットがどの程度拡大しているかを類推することができます。観測によるとIIJ網から他組織に広報しているIPv4フルルートの経路総数は、2018年をピークとする減少傾向が継続しており今年の年間増加はわずか1.4万に留まり本定期観測開始以来の最低値となりました。一方、IPv6フルルートの経路総数は昨年と同程度の伸びで約18万に達しました。IPv6の導入、IPv6ネットワークの拡大が順調に進んでいることが窺えます。
  • Theme 02 DNSクエリ解析
    • DNSクエリの観測からはインターネットに接続された端末の挙動の一端を推測することができます。問い合わせプロトコルに注目すると、UDPでの問い合わせがほとんどですが、ここ数年でTCPでの問い合わせ割合が増加してきています。主な増加要因として、DNS over TLS(DoT)での問い合わせが増えてきていることが挙げられます。
    • 昨年から観測され始めたSVCBレコードは、IPv4で0.26%、IPv6では0.60%とまだ全体に対する比率は少ないながらも順調に問い合わせが増えてきています。これは、Discovery of Designated Resolvers(DDR)という、クライアントが暗号化に対応したフルリゾルバを検出するための新しいプロトコル提案の実装が進んでいるためと推測しています。
  • Theme 03 IPv6
    • トラフィック量は期中横ばいですが昨年比では増加、IPv6の利用率も1年前より増加し、過去7年で最高となりました。送信元ASは意外な国が伸びていることが分かりました。大手CDN事業者も一通りIPv6対応が進んでいるようです。
    • 利用プロトコルは、IPv4に比べてIPv6の方が相対的にHTTPS/QUICの利用が多く、比較的新しく構築されたシステムでは、HTTPS/QUICを導入すると共にIPv6も一緒に有効化が進んでいると想像します。モバイルについては、Android系OSの端末でIPv6有効化率が上がっているのが確認されました。
  • Theme 04 モバイル 3G、LTE(5G NSA含む)の状況
    • 全体トラフィックにおける3Gの割合はコンシューマ向けサービスにおいてはほぼゼロに等しい状況です。一方、法人向けサービスでは平均で全体トラフィックの4.25%が3G通信として使われている状況でほぼ横ばいの状況です。NTTドコモが3G通信サービスを終了する(2026年3月末)までの残り約2年半の間でどれだけ法人向けサービスの3G通信が減っていくかを見守る必要があります。

本レポートの全文はこちらからご覧いただけます。

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