IIJの品質保証部を紹介します──多様なサービスを支えるQAの取り組み
2025年12月12日 金曜日
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【IIJ 2025 TECHアドベントカレンダー 12/12の記事です】
はじめまして。IIJでサービス・プロダクトに対する品質保証(QA)を担当する品質保証部で働いている杉浦と申します。
IIJではネットワークやクラウド、メールやDNSなどのインターネット基盤、さらにはルータ(SEIL)など、多種多様なサービス・プロダクトを提供しています。
これらが「期待どおりに、安全に、継続的に」動き続けるためには、リリース前に品質を作り込む視点が欠かせません。
品質保証部では、主にリリース前のシステムテストを通してIIJのサービス・プロダクトに対する品質保証(QA)の役割を担っています。
一方、今まで品質保証部として、外部への情報発信は積極的に行っていませんでした。
そのため、「IIJにもQA組織が存在するんだ」という印象を持たれた方も多いのではないかと思います。
アドベントカレンダーという機会を利用して、まずは私たちの取り組みを広く知っていただければと考えています。
QAに関心のある方、IIJの現場を知りたい方、ぜひ最後までご覧ください。
品質保証部のビジョン
我々品質保証部のミッションは「より品質の良いサービス・プロダクトを多く世界へ送り出す」ことです。
この実現のため、以下の3つのビジョンを掲げています。
- 継続的な業務改善と新たな取り組みを通して、変化の激しい環境へ対応するための組織力を向上する
- 集約化・効率化された評価を第三者目線で行うことにより、評価品質を向上する
- 評価のみにとどまらず、他部門と連携したシフトレフトの実現や品質に関する知見の展開などによって、より広範囲に品質へ貢献する
このミッション・ビジョンは、2023年に部内で複数回実施したディスカッションやグループワークを通じて生まれました。
若手からベテランまでメンバー全員が集まり、現場の課題や理想像について意見を交換し合うことで、組織として本当に大切にしたい価値観を言語化することができました。
ビジョンは文章だけではなく、下記のような図(ビジョンマップ)としても作成し、部内での目線合わせに活用しています。

出典:三澤直加,2023,『正解がない時代のビジョンのつくり方 「自分たちらしさ」から始めるチームビルディング』翔泳社. – 同書特典のテンプレートを基に作成
現在はテスト活動が中心ですが、今後はビジョンにもある通り「テストの枠を超えた品質全体へのアプローチ」を強化していきたいと考えています。
テスト対象の特徴
IIJでは、以下に示すような多種多様なサービスを主に法人のお客様向けに提供しています。
https://www.iij.ad.jp/svcsol/list/
品質保証部では上記全てのサービスではないのですが、およそ30前後のサービスに対するリリース前テストを行っています。
もちろん担当サービス全てが常時動いているわけではないので、およそ15~20前後の評価プロジェクトが同時並行で動いているイメージです。
テスト対象もIIJならではのものが多く、対象ごとに特徴があります。
いくつか、特にIIJらしいものをご紹介します。
SD-WAN/SASE (IIJ Omnibusサービス)
企業拠点間やクラウドを安全・柔軟に接続できるSD-WAN/SASE基盤です。
非常にサービスの規模が大きく、リリースごとに追加される機能も多岐にわたるので、テストの規模も大きくなることが特徴です。
大きなリリースでは、300人日を超える規模のテストを実施したこともありました。
もちろんネットワークの知識も求められ、時にはお客様拠点に設置するルータ実機を用いながら
Webアプリケーションとしての挙動とネットワークとしての挙動の双方をテストします。
DNS (IIJ DNSプラットフォームサービス)
インターネットの基盤と言える、DNSサーバの管理・運用を行うためのサービスです。
DNSSECの標準提供や、Webサーバの死活監視に連動したDNSロードバランシング(IIJ DNSトラフィックマネージメントサービス)など、多様な機能に対する評価を実施するために、時にはRFC原文に当たるなど深い仕様理解が求められます。
その結果、DNSのプロと言うべき開発チームとも共通の言語でやり取りができるほど、メンバーにDNSに対する理解が身に付きます。
ルータファームウェア (SEIL)
Webアプリケーションの他に、IIJが独自開発しているルータ「SEIL」のファームウェアに対するテストも行っています。
ネットワーク全般に対する深い理解が求められるとともに、コマンドラインベースのシステムに対するテストということで、他のサービスに対するテストとは一線を画する、当部の中でも専門性が高いチームとなっています。
ルータを用いた検証環境の構築も含め、同チームで対応しています。
このようなチームと、Webアプリケーション評価のチームが同じ部署にいることも「IIJらしさ」ではないかと思います。
最近の取り組み
日々のテスト実施と並行して、様々な取り組みを行っています。
以下にその取り組みの中からいくつかを簡単にご紹介します。
TMMiを活用したプロセス改善
品質保証部では、過去(2023~2024年度)にテストプロセスの標準化に取り組み、一通りの標準プロセス(業務フロー、手順、テンプレート等)を確立することができました。
そのプロセスの磨きこみを次の課題と考えていた際、参加したカンファレンス(JSTQB Conference in 2024 Autumn)で
TMMi(Test Maturity Model integration:テスト成熟度モデル統合)というフレームワークを知り、これを用いてプロセス改善を行うことを決めました。
2025年4月時点で実施したセルフアセスメントでは、当部のTMMiレベルは「初期(Initial)」を表すレベル1と考えています。
※認証を取得することは目的としていないので、あくまでセルフアセスメントの結果です
以下のように、カテゴリごとの強み・弱みが可視化されるのが非常に有益と考えています。
例えば「テスト設計と実行」は十分に整備されている一方、「テストトレーニングプログラム」や「非機能テスト」は非常に弱いというのは実感とも一致しています。

TMMi セルフアセスメント結果
今年度は「管理された(Managed)」段階であるレベル2を達成すべく、改善ポイントを抽出して改善に向けた取り組みを行っています。
テスト管理ツールの内製
世の中には多くのテスト管理ツールが存在していますが、我々はテスト管理ツールを内製で開発・運用しています。

テスト管理ツール「PROM」のチケット管理画面
もちろんメリット/デメリットがあり、以下のような認識をしています。
その中で、特に太字にしている点のメリットが大きいと判断し、このような選択をしています。
- メリット
- 自分たちの業務にカスタマイズしやすい
- 迅速・柔軟な機能追加が可能
- 利用者数が多いほどコストメリットが出る
- 本開発プロジェクトを実験場として活用できる
- デメリット
- 開発/運用に対する工数・負荷が大きい
- 世の中の技術進化に追従できず、陳腐化してしまう可能性がある
- 開発担当者に依存しやすいため、属人化リスクが高い
- 車輪の再発明になってしまう可能性がある
代表的なカスタマイズ例として、評価報告書生成機能があります。
ツール内データから標準フォーマットの報告書を自動生成でき、報告業務の効率化に貢献しています。
テスト自動化
リグレッションテストを中心とした、継続的なテストの自動実行を推進中です。
テスト対象ごとに、以下のツール/フレームワークを採用しています。
- Web:MagicPod
- API:Postman
- CLI:Robot Framework
まだ現時点では一部の有スキル者による取り組みにとどまっているので、今後はこれをより一般化し、実装スピードを加速していくことが課題と考えています。
今後の情報発信について
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
今回は初めての情報発信ということで、広く浅く全体像を紹介する形となりましたが
今後は具体的な取り組みや現場の工夫を継続的に発信していきたいと思います。
日頃より、QAに関する情報発信をされている各社様から多くの知見や気付きをいただいております。
この場を借りて感謝申し上げます。いつもお世話になっております。
今後は我々も、そういった発信を通してQA界隈への貢献をしていければと考えております!
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