配信構成・設備、動画編集、本番~IT勉強会をオンライン配信する傍らでやってたコトその1
2020年12月04日 金曜日
CONTENTS
【IIJ 2020 TECHアドベントカレンダー 12/5(土)の記事です】
IIJグループでお仕事をしている今西です。
現在はIIJとグループ会社のIIJ-EGやJOCDNに所属しています。
普段はグループ会社のJOCDN株式会社でCDNの運用保守をしていますが、それ以外にも株式会社インターネットイニシアティブではライブ配信や動画編集など面白そうな仕事を拾ってきては自由にやらせて頂いています。
はじめに
2020年9月11日にオンライン開催した「IIJ Technical NIGHT vol.9」について、配信の裏側を公開したいと思います。
配信の依頼
IIJ Technical NIGHT は第1回から配信を担当しており、第9回も広報部から2020年07月17日のミーティングで依頼を受けました。
ミーティングの前振り
ミーティングでは広報部の堂前から下記の様な前振りで始まりました。
「登壇者は3人。当日に生で喋るんじゃなくて、事前に動画を収録しておいて、イベント当日はそれを配信する」
「座談会のコーナーは、講演を聴いてくれた視聴者からのフィードバックを取り入れたいので、この部分は生放送でやりたい」
「決めきれてないのが、座談会を皆で集まるか、完全オンラインでやるかどうしようかな?」
「ソーシャルディスタシング確保のために、座談会の出席者が一つの部屋に集まるのではなくて、それぞれ別の部屋からオンラインで参加する形式にしたい」
前半の講演について
その後、広報部のイベント担当者とも課題についてミーティング
担当者
「録画を差し込むってのはそもそもできるのか?」
今西
「できますが、録画をするのが怠いですねw」
担当者
「まずそこですね。
完全オンラインだと無観客で話者はカメラ越しで上手く喋れるのか心配があり録画にするメリットがある。
それと、録画だと配信中に話者が座談会で答えるTwitterから質問を事前に確認する事ができるのもメリット。
そこで、撮影と編集の協力もお願いできたら嬉しいです。」
今西
「遅くても本番2日前までに撮影が完了するようにスケジュールを調整していただければ対応できます。」
後半の座談会について
担当者
「座談会だけオフラインで集まると今どきイケてないと思われる。
オンラインで見た目だけ集まることができたら “IIJかっこいい” と思ってもらえないかと。」
堂前
「IIJmio meeting(個人向け格安スマホ IIJmioのトークイベント) でも Discord を使ってオンライン開催をしたので同じ様に映像を上手く切り貼りできないかなと思ってる。
映像を集めた時に面白い見せ方ができるのか?」
担当者
「今回はオンライン開催が初めてなので、失敗も含めて色々なトライをして、上手くいったら IIJ Technical DAY (毎年11月開催のエンジニア向けイベント)※にも繋げたい。
なので、無理のない範囲で配信チームにも教えていただきながら進めたい」
※今年は12月14日~17日にIIJ Technical WEEKとして開催
マイク購入
今西
「オンラインでもいいですが、IIJmio meetingの時に各自で所有するマイクを使ったら音が悪く聞いてる側が辛い事もあったので話者全員のマイク買う予算をください」
堂前
「ちょっとぐらい出せます。」
担当者
「マイクは買いましょう」
配信画面の見せ方
堂前
「配信画面はどんな合成で行きますか?
前回のIIJmio meetingでは4人並べただけですが」
今西
「座談会中にプレゼン資料は出しますか? 出すならプレゼンを大きく表示するスペースが必要なのでカメラを並べるだけになると思う。
4Kで配信して見る人に頑張ってもらう方法もありますがw」
担当者
「座談会中に資料を出すかは確認してみます。」
IIJ公式VTuber誕生の切っ掛け
堂前
「他にこんな事をしてみたいとかありますか?」
今西
「堂前の3Dモデルを作りたいです。」(即答)
堂前
「いわゆる VTuber というやつですね」
今西
「そもそもIIJのアイドルである堂前の3Dモデルがないのはどうかなと」
堂前
「いくら用意すればいいですか?」
今西
「プロに依頼すれば最低100万円ぐらいからですね」
担当者
「キャー」
堂前
「それは無理ですw ○○円ぐらいなら何とかできるかも」
担当者
「それがあるとエンジニア的にはグッとくる?」
今西
「個人的には」
堂前
「笑いはとれる」
担当者
「だったら予算次第ですがスモールスタートでこういうイベントでない限り予算は出せないからやってみますか」
今西
「堂前さんに似せずにお試し程度ならVRoidで無料の3Dモデル用意することもできます。
大手企業でも製薬会社とか飲料メーカーとか3Dモデルを作ってVTuberデビューとかしてます。」
堂前
「僕もやりたいな~ なりたいな~」
担当者
「よし、だったらやろう」
配信方法の検討
私が担当するイベント配信では「臨時配信設備」(別名「今西CDN」)と呼ばれるクラウドサービス「IIJ GIO P2」上に構築した環境を使用します。
いつもは、RTMP (Real Time Messaging Protocol)で映像を受け取りエンコードするオリジンサーバから、エンドユーザまでコンテンツ配信するフロントサーバまでを臨時配信設備でお届けしますが、今回からフロントサーバに弊社の「IIJ プレミアムコンテンツ配信サービス」を利用しました。
オリジンサーバ
オリジンサーバでは、RTMPでOBS (配信ソフトウェア)から送られる映像を受けてHLS (HTTP Live Streaming)方式へ変換しています。
別名で「今西CDN」と言われてる由来は今西が趣味で構築しているサーバと周囲から思われているからです。
なので、クラウドサーバの用意以外には予算が少ないので無料で使えるnginx-rtmp-moduleを使用しています。
また、エンドユーザの帯域に合わせて画質を自動で切り替えることができるABR(アダプティブビットレート)に対応するためにFFmpegも使用しています。
※オリジンサーバの詳細は今回省略します。(記事の人気が高くTwitter等で詳細が知りたいとかの要望が多ければ別で記事を書くかも)
IIJ プレミアムコンテンツ配信サービス
フロントサーバは「IIJ プレミアムコンテンツ配信サービス」を使用しています。
高品質で安定した動画の超大規模ストリーミング配信を実現するCDNサービスです。
IIJのその他CDNサービスに関するサービス詳細やお見積もりのご相談はこちらからお問い合わせください。
事前収録と編集
事前収録
事前収録ではIIJが主に記者発表に使用するため本社に設置しているスタジオで行いました。
スタジオと言っても放送局のようにサブコン(副調整室)が在る訳ではなく一つの大きな部屋に全てがあります。
主要機材は下記の通りです。
マイク:FA4018VDPAB
ミキサー:Venice F16
カメラ:PMW-EX3(左右), PXW-FS7M2K(中央)
スイッチャー:ATEM Television Studio Pro HD
レコーダー: SHOGUN
構成はシンプルで、マイクの音をミキサーに入れてカメラの映像はスイッチャーに入れ、それぞれの映像と音をVC-300HDでエンベデッド(組み合わせ)してレコーダーへ送っています。
動画編集
収録作業後はSHOGUNで録画したそれぞれの映像データの編集を行います。
編集では DaVinci Resolve を使用して、余分な間や咳や言い直しなどを視聴者に違和感が無いようにカットして出演者全員の音量バランスを整え必要に応じてテロップの挿入などを行います。
配信本番
当日は ON AIR の1時間前に関係者が各自の割り振られた個室に集まりDiscordを繋ぎ機材と進行の最終確認を行いました。
話者の個室(広い会議室を1人で使い隅っこで話す)
時刻は18時となり ON AIR
Cue出し担当者より合図が出たので事前収録の堂前ちゃん司会から始まりました。
慣れないCue出しをする広報部の担当者が数日前からの打ち合わせやリハーサル、そして当日にCue出しの話題になると不安げな表情を見せるのには少し面白かったです。
配信チームとしては「Cue出しを担当者がミスっても配信チームでカバーして良しなになんとかすればいい」ぐらいに思っていました。
余談ですが、配信チームのメンバー2人は普段から社内の配信をサポートしたり、会社とは関係なく個人的に配信を行う事もあり配信のトラブルには慣れっこなのです。
前半は事前収録の映像を流すだけなので私も配信に問題が無いかを確認する意味でものんびりと視聴していました。
そして、配信も折り返し地点に入りいよいよ後半の生放送
前半と後半の間にある5分間のCM中に、各自がGB(グリーンバッグ)の前でDiscordからビデオ通話を繋げます。
そして、配信チームはOBSを使いウィンドウキャプチャーや素材画像で複数のレイヤーを作成して重ね合わせます。
その際に各自のカメラ映像からクロマキーと呼ばれる機能を使いグリーンのみ抽出して透過させます。
ここまでをCMの時間内に終わらせれば配信チームとしての山は越えて、後はSOCの面白いトークを聞いて最後に蓋画像に切り替えるだけの簡単な作業となります。
本番の翌営業日
配信チームの作業は配信の翌営業日にも続きます。
配信中の録画データ
ライブ配信の映像は、手元の配信用PCとオリジンサーバで二重の録画データバックアップをしています。
その録画データは会社としての記録や関係者配布やYouTubeアップロード用に編集して広報部にお渡ししています。
配信中の視聴データ
広報部としての利用
どのセッションで視聴者数が多く人気があるかを次回の開催に向け重要な参考資料として活用しています。
配信チームとしての利用
発生したリバッファリングは配信中にリアルタイム監視もしていますが、全体を通してのデータも翌営業日に確認して配信設備の品質向上に活用しています。
最後に
IIJ Engineers Blog の投稿は初めてで、社内向けのネタ記事しか書いた事がない私としては正直に言って外部公開のIIJ公式ブログへの投稿は不安もありましたが、広報部からのお誘いもあり投稿させていただきました。
ですので、「いいね」と思った方は是非SNS等での反応をお待ちしております。(私にとってTwitterは呼吸です。)
今後も新たな仕組みを取り入れ、見て頂ける全ての方が楽しめる配信ができるように邁進してまいります。
関連リンク
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