802.11ah（Wi-Fi HaLow™）で一般的な監視カメラを使ってみた

2025年03月06日木曜日

【この記事を書いた人】
snara

2016年からIoTサービスの開発・運用に従事。埼玉県出身・埼玉県在住、埼玉を愛す男。好物は十万石饅頭。週末は愛車を丸1日乗り回すくらいの車好き。

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はじめに

IEEE 802.11ah（通称 Wi-Fi HaLow™）の実用化が進んできていますが、現時点では監視カメラ用途でのユースケースが多いように感じます。しかし、802.11ah通信機能を搭載している監視カメラ製品は選択肢が非常に少ないのが現状です。

参考
以前に実施した802.11ah通信機能を搭載した監視カメラの検証結果については、以下のブログをご参照ください。 Wi-Fi HaLow™の性能評価実験第2弾～どこまでいける！？動画チェックしてみた！！～

802.11ahはWi-Fiの規格の1つであるためTCP/IP通信が可能です。そのため、802.11ah通信機能搭載の監視カメラを使わずとも、一般的なネットワーク対応の監視カメラと802.11ahアクセスポイント機器を組み合わせて使用できるはずです。これが実現できれば802.11ah環境下での監視カメラ製品の選択肢が格段に増えることになります。

ということで、実際に検証してみました。

機器構成

カメラは i-PRO社のWV-S7130UX を使用します。とてもコンパクトなサイズですが、中身は高機能であり、なかなか使い勝手の良い監視カメラです。
802.11ahルータは、サイレックステクノロジー社のAP-100AH(JP)／BR-100AH(JP)を使用します。

（今回使用した機器 – 手前：i-PRO WV-S7130UX 後ろ：Silex AP-100AH(JP)）

以下のような構成で検証を行います。いたってシンプルなものです。

検証結果

実際の映像

実際に802.11ah環境下で配信した監視カメラ映像をご覧ください。

映像は、フルHD（1920×1080）解像度、可変ビットレート、フレームレート5fps 、画質は数段階あるうちの中間くらいのレベルで設定したものです。
使用している帯域（ビットレート）はおおむね100Kbps前後という結果でした。

今回は自社オフィス内で検証したため802.11ahルータ間の距離はそれほど離れていませんでしたが、過去の検証結果（1回目、2回目）を踏まえると、障害物がない場所であれば600m程度離れていてもこの画質で映像を記録できそうです。解像度や画質を落とせばさらにビットレートを下げることができますので、もっと長距離で使える可能性もあります。

カメラ・ルータの設定

監視カメラ製品にはメーカ独自の映像圧縮技術が備わっていることがあり、帯域が限られる802.11ahにとってはそのような技術との相性が非常に良いです。今回使用したi-PRO社製のカメラにも「スマートコーディング」と呼ばれる映像圧縮技術が搭載されており、今回はこの機能を使用することで画質を落とさないままビットレートの低減を図っています。
また、配信モードの設定として「可変ビットレート」を使用しました。今回の例のような動きが少ない映像の場合は可変ビットレートにすることで大きくビットレートを下げることができるようです。ただし可変ビットレートが万能な訳ではなく、撮影する映像の内容によっては異なる設定にしたほうが安定してビットレートを下げられる場合もあります。

また、ルータの方も、特に「Duty比10%制限」関連の設定にひと工夫が必要でした。
設定内容によっては映像の途中で帯域不足になってしまい、映像が崩れたり配信が不安定になったりすることがありました。

参考：Duty比10%制限とは？
電波法により、920MHz帯を使用する無線通信は1時間あたり360秒（全体の10%の時間）を超えて電波を発してはならない、と規定されています。これを一般的に「Duty比10%制限」などと呼んでいます。

802.11ahの限られた帯域で監視カメラを使う場合は、カメラ・ルータともに実際の環境で検証しながら設定を煮詰めていくほうが良さそうです。