Wi-Fi HaLow™の性能評価実験を行いました

2023年11月13日 月曜日


【この記事を書いた人】
三宅 伸明

半導体メーカ、無線メッシュのスタートアップを経て、2022年にIIJにJoin。営業出身ということもあり、分かりやすく技術を伝えることをモットーにしております。趣味は人とお酒を飲むこと、ライブ鑑賞、ゲーム等、、

「Wi-Fi HaLow™の性能評価実験を行いました」のイメージ

はじめに

IoTビジネス事業部 プロダクト&ワイヤレスビジネス推進 三宅です。
今回、LPWA版Wi-Fi規格であるWi-Fi HaLow™(IEEE 802.11ah)の性能評価を行いました。

皆さんはWi-Fi HaLow™という通信規格をご存じでしょうか。

後光(Halo)+低消費(Low)という冠を抱いたこの新しいWi-Fiは、弊社の取り扱っているLoRaWAN™と同様920MHz帯を使用しており、

  • 通信距離が長い
  • 低消費電力
  • 電波が回り込みやすい

との特徴を持っています。

また、従来のWi-Fi同様IPベースのため、既存の資産や市販のIPベースの機器(カメラ等)との親和性が高いと言われています。
なかなか使い勝手の良さそうな規格ですね。

他無線規格との比較

出典:802.11ah推進協議会提供資料

実験の内容

実験場所

荒川下流河川敷

実験詳細

アクセスポイント(以下AP)、ステーション間を500mから100m刻みで1.3kmの距離まで離していき、それぞれの距離でのスループットを計測。
実験機器 :サイレックス・テクノロジー社製 AP-100AH(AP)、BR-100AH(ステーション)
プロトコル:TCP、バンド幅:4MHz/2MHz/1MHz

以下のような手順で実験を実施。

①測定距離に到着したタイミングでRSSI計測。※RSSIとは受信した電波の強さ。
②AP側のPCにて、AP/ステーションのバンド幅(4MHz、2MHz、1MHz)を設定。
③ステーション側PCで②の変更を確認後、AP側PCに向けてiPerfを送信。

実験結果

≪0~500m地点≫

距離ごとにリニアに速度が下がっている印象。400m地点で1Mbps程出ているケースもある一方、400m~500m地点でiPerf Errorが発生し始めました。
メンバーで相談し、Duty windowを60秒⇒120秒に変更。するとまた500mでも問題なくiPerfが動作し、スループットが取れ始めました。

★日本電波法では他の機器との干渉を抑えるため、920MHz帯の特定小電力無線においては機器の送信時間の合計を1/10に制限する必要があります。例えば1時間を例にすると合計で360秒を超える通信はできないことになります。
本機能がサイレックス社のAPでは備わっており、Duty windowを60秒に設定すると、6秒通信したあと、54秒は通信ストップさせる挙動になります。

それによってユーザとしては特に意識することなく上記1/10ルールを順守できるというわけです。

今回、iPerfコマンドが1回あたり10秒間の設定であったため、上記6秒の制限内にコマンドが送り切れず途中でErrorとなりましたが、Duty windowを120秒にすることで、12秒の制限内に10秒のiPerfコマンドを送り切ることができ、Errorは発生しませんでした。

≪500m~1km地点≫

若干速度にばらつきは出始めていますが、三桁kbpsは出ております。途中で速度が復活しているケースもありますが、こちらは距離が離れて直接波が弱くなっているところにマルチパス(今回のケースだと土手や道路からの反射波)が入り、その影響でRSSIも向上しスループットが上がったと考えられます。

1km地点になるといよいよ4MHzで通信ができなくなりました。どうしても帯域幅が広い方がMCS(Modulation and Coding Scheme:その名の通り変調方式と符号化率の組み合わせ)が顕著に変動するため、長距離になればなるほど4MHzモードについてはMCSが下がり速度的にも厳しくなってしまいます。
また1km以上となると見通し含めてフレネルゾーンの確保も難しくなるため、ステーション側のアンテナを1.8m⇒4mに延ばして実験を継続しました。

≪1km~1.3km地点≫

ステーション側のアンテナを4mに(写真の通り人間アンテナ、、、)延伸。時間切れにはなってしまいましたが、1.3kmまでの通信が確認できました。その距離でも2MHz/1MHzモードともに200kbpsの速度は出ています。
4MHzは上述の通り早々にリタイアになってしまいましたが、2MHz、1MHzモードはまださらに飛びそうな雰囲気さえあります。
※1.2km地点でスループットが上がっている理由としては、1km地点では、直接波と反射波の経路差による位相の違いが逆位相に近く、波の打消しによりスループットが落ちているのに対して、1.2km地点では直接波と反射波の位相差が直接波が弱くなることで同位相に近くなり、波の足し合わせがなされたため、と考えられます

さいごに

結果として、802.11ah推進協議会がHPなどで謳われている1kmでの疎通は確認できました。

さすがに1kmで1Mbps越えとまではいきませんでしたが、200Kbpsの速度は出ているので軽い動画、音声、静止画などの伝送には使えそうに思います。
※但し、上述しているDuty1/10のルールを考慮する必要はありそう。

長距離になると4MHzはMCSが安定しなくなるので、この辺りは運用時には考慮が必要だな、、との新たな発見もありました。

今後は対応センサなどもドンドン世の中に出てくるかと思いますので、LoRaWAN同様、新たなLPWAの標準規格として期待しています。
次回は是非、カメラを繋いだ動画伝送の実験をしてみたいと思います。

またIIJではLoRaWAN、HaLow以外にも様々な無線技術の活用に取り組んでいますので、この辺りも折りをみて紹介させていただきます。

三宅 伸明

2023年11月13日 月曜日

半導体メーカ、無線メッシュのスタートアップを経て、2022年にIIJにJoin。営業出身ということもあり、分かりやすく技術を伝えることをモットーにしております。趣味は人とお酒を飲むこと、ライブ鑑賞、ゲーム等、、

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