Wi-Fi HaLow™の性能評価実験 第2弾 ~どこまでいける!?動画チェックしてみた!!~

2024年05月27日 月曜日


【この記事を書いた人】
三宅 伸明

半導体メーカ、無線メッシュのスタートアップを経て、2022年にIIJにJoin。営業出身ということもあり、分かりやすく技術を伝えることをモットーにしております。趣味は人とお酒を飲むこと、ライブ鑑賞、ゲーム等、、

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Wi-Fi HaLow™(IEEE 802.11ah)搭載のカメラを使った動画検証を行いました。

はじめに

IoTビジネス事業部 プロダクト&ワイヤレスビジネス推進 三宅です。

昨年、下記ブログの通り、Wi-Fi HaLow™対応のアクセスポイントを使い、見通し環境下でのスループット評価を行いました。
Wi-Fi HaLow™の性能評価実験を行いました | IIJ Engineers Blog

今回は予告の通り、実際のユースケースを想定し、動画を流した際にどういった見え方をするか、の点で実験を行いましたので是非ご覧ください。

ちなみに今回はフルノシステムズ様のご協力のもと、アクセスポイント(フルノシステムズ社 ACERA330)及びWi-Fi HaLow対応IPカメラ(Askey社 CAM2301)※をお借りし実験してます。

※本カメラは2024年4月時点では日本発売前の製品になります。

実験の内容

実験場所 : 荒川下流河川敷

実験詳細 : カメラは定点設置。アクセスポイント(以下AP)を10m、200m、400m、600m、800mと離していき、それぞれの距離での動画をキャプチャー。

実験機器 : フルノシステムズ社製 ACERA330(AP)、Askey社製 CAM2301(カメラ)

カメラ設定 : Codec H.264、CBR

プロトコル : UDP、バンド幅:4MHz/2MHz、MCS:オート

※前回のブログに記載しましたが、日本ではHaLowの電波の送信時間に関して、全体の10%(Duty比10%)、具体的には稼働時間を1時間当たり累計360秒までにすべし、という制約があります。

国内で販売されているAPでは機器内で本制約を遵守すべく制御が行われますが、

①瞬間最大風速的に大容量の通信を行い、その後通信を止める設定
(前回は12秒通信、その後108秒ストップという設定で実験)
②データを途切れることなく安定して伝送することに主眼を置いた設定

というように設定変更可能なものも御座います。

ちなみに今回の実験で使用したフルノシステムズ社のAPは②の方式をベースとしたDuty変更できないものとなっております。

 

機器構成 : 以下のような手順で実験を実施。

1). 定位置についたらRSSI、SNRを記録
2). Iperfでスループットを確認
3). 上記スループットをもとに動画のパラメータを下記から選択。
4). VLCメディアプレイヤーで10秒間録画しながら、ログ記録

(被写体 ※カメラから20㎝程離したところにソーラーで動く首振り人形設置)

 

実験結果

≪10m地点≫

近距離ということもあり、RSSI-42dBm、SNR33dBと良い値が出てます。(フルノシステムズの推奨値はRSSI-80dBm以上、SNR 20dB以上)
スループットは4MHzモードでは1Mbps、2MHzモードでは330Kbpsが出てます。

 

実際の動画は下記
4MHzモード/HD画質/15fps/

被写体のネコの首振り、後ろの車の移動や川の流れははっきりと確認できます。コマ落ちも全くありませんでした。

2MHzモード/VGA画質/5fps/

≪200m地点≫
RSSI-66dBm、SNR29dBとまだまだ高い値が出てます。
スループットとしても4MHzモードで913Kbps、2Mbpsで436Kbpsです。

動画は、
4MHzモード/HD画質/15fps/

10m地点と画質変わらず。200m程度の距離はWi-Fi HaLow™にとっては全く問題ないようです。

2MHzモード/HD画質/5fps

フレーム数が少ないためカクカクはしてますが、後ろで飛んでいる鳥含め細かいところまで見えています。

≪400m地点≫
RSSI-74dBm、SNR25dB。まだ余裕はありそうです。スループットは4MHzモードで416Kbps、2MHzモードで313Kbps。この辺りから15fpsは厳しそうです。

4MHzモード/HD画質/5fps/

後半に少々コマ落ちが見られます。
実験中に自動車が通ってましたので、そちらの影響があった模様。
4mの高さのアンテナですとフレネルゾーン(無線通信で電力損失することなく電波が到達するために必要とする領域)は地面にまで掛かってしまうので、自転車や自動車、人が通るとそのゾーンを遮蔽することになり、
電波伝搬に影響を与えます。

画質としては遠くを走っている車がトラックか乗用車か、、の把握も可能なレベルです。

2MHzモード/HD画質/5fps/

4MHzモードと同じ画質&フレームレートですが、こちらでも多少コマ落ちしているように感じます。

≪600m地点≫
RSSI-80dBm、SNR19dB。スループットは4MHzモードで175Kbps、2MHzモードで146Kbps。

4MHzモード/HD画質/5fps/

400m地点同様、コマ落ちが起きています。
ここまでのところ、被写体については問題なく確認できてます。(首を振っているのも分かります)

2MHzモード/VGA/5fps/

2MHzモードだとVGA画質でもコマ落ちしてます。
また、後ろで車が走っていることは確認できますが、VGA画質ということもあり、トラックか乗用車か、、といった区別までは難しいです。

≪800m地点≫
RSSI-83dBm、SNR14dB。4MHzモードではIperfは通らず計測不可になりました。
前回の実験結果同様、4MHzモードになると2MHzモードと比べてRSSI(受信した電波の強さ)が下がり、且つノイズ的にも帯域が広い分影響を受けてしまうため
先に通信不可に陥ってしまいます。

なお、2MHzモードについては91Kbps出ており、そちらの動画は下記になります。

2MHzモード/HD/5fps/

こちらもコマ落ちはしておりますが、何が映っているか、、は問題なく確認できるレベルの動画ではあります。

さいごに

今回の実験では400mを超えた辺りから少しコマ落ちが見られました。

スループットは十分に出てましたが、アンテナが4mの高さだとフレネルゾーン下に様々な障害物(草、人、自転車、自動車等)が入ることで、動画伝送においては影響が出てしまうようです。

ただ、実際の動画を見た感覚としては、監視カメラのようなリアルタイムに高画質な動画を見るような用途(ナンバープレートや人物等を正確に把握する目的)には向いていないように感じましたが、遠く離れた場所の状況をチェックする用途(ダムの水位、スキー場の降雪状況、駐車場の混雑具合、、等)であれば問題なく使える印象を持ちました。

※アンテナをさらに高くしたり、指向性アンテナを使うなどで障害物の影響を減らし、800mよりさらに長距離も飛ばせるかと思います。

今後は実際に活用が期待される現場でのデータも取っていきたいと思います。

三宅 伸明

2024年05月27日 月曜日

半導体メーカ、無線メッシュのスタートアップを経て、2022年にIIJにJoin。営業出身ということもあり、分かりやすく技術を伝えることをモットーにしております。趣味は人とお酒を飲むこと、ライブ鑑賞、ゲーム等、、

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