IIJインフラから見たインターネットの傾向(IIR Vol.68 第1章)

2025年12月12日 金曜日


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IIJ Engineers Blog編集部

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「IIJインフラから見たインターネットの傾向(IIR Vol.68 第1章)」のイメージ

2025年12月に発行されたIIJの技術レポートIIR vol.68 の第1章では、年に1度の定期観測レポート「IIJインフラから見たインターネットの傾向 〜2025年」をお届けします。

ネットワーク運用によって得られた情報の中から、この1年間のインターネットの動向について、BGP経路・DNSクエリ解析・IPv6&モバイル、インターネットバックボーンの視点からご紹介します。 

本報告のポイント 

BGP・経路数 

IIJの観測ではIPv4フルルート経路数が年間約4万増で約99万に達し、10月には100万を突破しました。/24、/23、/16、/20の経路増が顕著で、unique IPv4アドレス数も大きく増加しました。IPv6経路数の増加率は一見、緩やかになっているように見えますが、集約経路数の増加状況や/64ブロックの増加状況を見れば、IPv6ネットワークは引き続き拡大していると考えられます。Origin AS構成では32-bit-only ASの増加や「IPv4のみ」ASの減少などの変化が見られます。 

 DNSクエリ 

IIJのフルサービスリゾルバの観測では、問い合わせ量は時間帯で変動し、午前3時30分頃に最小0.13 q/s、昼12時25分頃に最大0.27 q/sでした。通信プロトコル別ではIPv6が約57%を占め、IPv4は約43%となり、UDPが97.67%を占める一方でTCP問い合わせは年々増加し2025年は2.335%に達しています。毎正時、毎正時前の問い合わせ量は近年増加傾向があります。しかし毎正時の問い合わせは急な増加後、緩やかに問い合わせ量が減っていく傾向があり、正時前(-14秒、-9秒)の問合せは急な増加の直後にそれまでの問い合わせ量程度に戻る傾向が観測されています。これは端末側で短時間のうちに終了する軽量な処理が、高い精度で同期して発生していることが影響していると考えられます。問い合わせ種別ではA/AAAA/HTTPSが全体の約98%を占めています。SVCBはまだ割合が小さいものの増加傾向にあり、DDRによる暗号化対応リゾルバ検出の影響が示唆されています。 

 IPv6&モバイル 

IIJのバックボーン観測(2025年2–9月)では、全体トラフィックが前年比5.6%増、 IPv4トラフィックの増加率が0.6%のところ、 IPv6は25.2%増で顕著な差を見せ、IPv6比率は平均23.9%と過去最高を記録しました。プロトコルではHTTPSがIPv6の76.3%を占め、QUICやNAT Traversal、ESPと合わせて9割超を占めるなど暗号化通信が主流になっています。モバイルではIIJmioのIPv6有効化率が62.9%で、iOSは86.9%、Androidは35.5%とAndroidの改善が全体上昇に寄与しています。今後もIPv6の増加は進む見込みです。 

インターネットバックボーン 

IIJと他組織の相互接続で利用するインタフェースでは主に400G-FR4、100G-LR4、10G-LRを利用しており、ここ1年で100Gの比率が増加、10GはIXPの100G化などで減少しています。現在の相互接続インタフェースは100GbEが主力であり、400GbEの利用は限定的なものにとどまっています。一方、10GbEは機器側の高速インタフェースを分割して利用する機能を使っての接続が増えています 

RPKIではIPv4のROA有効率が57.18%、IPv6は63.32%と改善傾向にあり、IIJがTransitする経路のValid率は56.72%です。一方でAS2497起点の経路は約43.7%がValidで、Not‑Foundが多く残っています。IIJが管理するアドレスブロックでのROA登録は済んでいるものの、顧客側でのROA登録が進んでいないことが理由と考えられます。 

グラフやデータを掲載した、本レポートの全文はこちらからご覧いただけます。
Internet Infrastructure Review(IIR) vol.68(2025年12月発行)1章   

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2025年12月12日 金曜日

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