IIJとAS2497・AS2509
2026年03月12日 木曜日
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IIJ = AS2497
私たちIIJは、ネットワークエンジニアのイベントなどで「AS2497」を自称することがあります。AS2497とは、インターネットを構成する個々のネットワーク(AS)を識別するための「AS番号」の一つです。この番号は全世界で重複しないように割り当てられており、「AS2497」と言えば「IIJが管理するネットワーク」と特定できるようになっています。(※一部特殊な用途のAS番号もあります)
他の組織 (通信会社・大学・規模の大きい企業など)でも、AS番号の割り当てを受けていることがあり、ネットワークエンジニア同士の間では「AS○○○○の者です」なんて名乗ったりしています。
実は、IIJはAS2497以外にもいくつかAS番号の割り当てを受けています。ですが、IIJネットワークの大部分はAS2497として運用されており、私たちのアイデンティティは「AS2497」にあると考えています。
日本最初期のAS番号
ところで、AS2497には「日本でもっとも若い番号のAS番号」という側面もあります。
日本で最初に割り当てられたAS番号は1993年4月30日に次の6個です。ご覧の通りIIJ-ASが先頭になっています。

1993年に編纂された1992年度WIDE報告書より引用
1993年まで、日本国内のインターネットでは、ネットワーク間の接続方式としてRIPを使っていました。拡大を続ける日本のネットワークに対応するため、接続方式をBGPに移行するということが検討されました。(なお、現在使われているBGP4ではなく、BGP3です)
BGPでインターネットに接続するためには、全世界で重複なく割り当てられたAS番号が必要です。そこで、日本のネットワーク資源の管理団体であるJPNICが、アメリカ(≒世界)のインターネットの管理団体であるInterNICから、AS2497~AS2528の32個のAS番号を「日本のAS番号」として割り当てを受けました。
※InterNICもJPNICもこの前後に相次いで設立された状況で、実態としては日本・アメリカのキーパーソン間の直接交渉だったと思われるのですが、ここでは1993年度WIDE報告書の記述に従いました。
ここで割り当てられた32個のAS番号について、1993年4月30日に日本で開催されたJEPG/IP (Japanese Engineering & Planning Group /IP)会議の席上、どの組織がどのAS番号を利用するか議論が行われました。この会議ではその時の着席順にAS番号が割り当てられることとなり、一番端に座っていたIIJが、最も若いAS番号の割り当てを受けたのです。
AS2509 IIJ2
ところで、翌年(1994年)に編纂された1993年度WIDE報告書を見ると、次のような表が掲載されています。
32個のAS番号の中から、最初期の6つのAS以外に続いてASが割り当てられており、その中にAS2509 IIJ2 (海外向き)という、見慣れないAS番号があります。これはなんでしょうか?
実はこの当時、IIJは日本からアメリカに向けてネットワークを伸ばしていました。アメリカ国内にIIJの拠点を設け、他組織のネットワークと相互接続を図っていたのです。この時、「日本とアメリカでルーティングのポリシーを変えるかもしれない」と考え、アメリカだけ別ネットワーク・別ASとして運用していたのです。
ただ、別ASとしてアメリカのIIJネットワークを立ち上げたものの、やってみると運用が面倒なだけということがわかりました。BGPではAS-PATHの長さによって経路の選択が行われますが、日本のAS2497から海外に経路を広報する際にAS2509を経由すると余計に1ホップ追加され、経路制御が難しくなったためです。(そんなことも試行錯誤する時代でした)結局、IIJネットワークは日米ともにAS2497に統一し、AS2509は使わなくなってしまったということでした。
よみがえるAS2509
AS2497への統合後、IIJではAS2509を利用することがなくなったので、AS2509はIIJからJPNICへと返却が行われました。以後、約30年にわたってAS2509は「未割当」のままとなっていました。
ところが、2025年11月に驚きの投稿がXに流れます。
未割当のままとなっていたAS2509が、突然再割り当てされたのです。
割り当て組織名は「ICTSC2025」、ICTトラブルシューティングコンテスト2025でした。
ICTSCは、全国の専門学校生、高専生、大学生、大学院生が参加する、サーバ・ネットワークのトラブルシューティングや運用技術を競うコンテストです。IT企業の支援の下、学生たち自身がコンテストの企画・運営、そして会場ネットワークの運用も行います。
(ちなみにIIJもスポンサーとしてICTSC2025を支援しています)
2025年度の本選が2026年3月14日・15日に開催され、その会場ネットワークとして臨時に運用されるネットワークに、AS2509が割り当てられたのです。
そんなこともあるのだなぁと思ってXに投稿したところ、思わぬ反応がありました。「AS2509とAS2497でピアリング(接続)しませんか」というお誘いです。
そして2026年3月某日、AS2509とAS2497のピアが上がりました。

IIJのルータから見たAS2497とAS2509のpeer
かつてIIJネットワークの一部としてAS2497とともに運用され、そして役目を終えて眠りについたAS2509が、30年の時を経て再びAS2497と接続されたのです。
ICTSC2025の会場では、多くの学生さんがコンテストに参加し、会場のネットワークを利用します。そのネットワークには実はこんな裏話があったのです。
(余談) BGP3からBGP4へ
ちなみに、先に挙げた1993年度WIDE報告書の表ではAS2509に「BGP4」と書かれています。これは、当時AS2509で先行してBGP4を使用したためです。
このころ、IPv4アドレスの効率的な利用と経路情報の集約を目的として、CIDR(Classless Inter-Domain Routing)の導入が進められていました。これに伴い、世界中のISPは、従来のBGP-3から、経路集約が可能なBGP-4へと移行を進め、インターネットの持続可能性に対応するための基盤整備が行われました。当時は、ソフトウェアのアップデートが毎週のようにリリースされ、稼働中のインターネットを舞台に世界中で実験が行われるという、大変アグレッシブな環境でした。
なお、WIDE報告書執筆時点ではIIJの日本国内のネットワークはBGP3でしたが、1994年6月にはBGP4に移行しています。
次のグラフは1994年からのインターネットの経路数を示すものです。左端で経路数が急激に伸びていますが、1994年前半からCIDR化・BGP4への移行が始まると経路数が減り、その後の経路数の伸びも緩やかになっています。

1994年頃の経路数グラフ







