LoRaWAN の飛び具合について

2017年12月18日 月曜日

「LoRaWAN の飛び具合について」のイメージ

IIJ 2017TECHアドベントカレンダー 12/18(月)の記事です】

先日、”農業IoTはじめました” というエントリを書きましたが、水田センサ等のデバイスで用いる通信技術として LPWA (Low Power Wide Area) の一種である LoRaWAN という無線通信プロトコルを採用しています。IoT に関わっている方にはおそらく良く知られているであろうこの LoRaWAN ですが、実際に検証を進めてきて分かってきた、伝播特性に関する実験結果をいくつかご紹介します。

伝搬特性に影響する要素

よく、LoRaを使うと 10km 飛ぶ、なんていう売り文句を良く目にするかもしれません。我々も話半分としても結構飛ぶのかな、というところを期待していた訳ですが…
現実としてはどうか、というと「飛ぶときは飛ぶ」のですが、それにはやはり以下の条件が強く関連していることが分かりました。

(1) 基地局の設置高さ

LoRaに限らず、無線通信を行う場合には、アンテナをできるだけ高い所に設置することが必要です。
我々が検証した限りでは、アンテナ高さ2m程度(アンテナマストに設置して平置きする程度)では、見通しの良い条件下であっても「せいぜい1〜2km」ぐらいしか飛ばない、というデータが得られています。それでもWi-Fi 等と比較すれば十分遠くまで飛ぶと言えるのですが、さすがにちょっとLPWAとしては物足りないところです。
一方、高さが十分に取れればどうなるのでしょうか。これは、もう本領発揮といったところで、どこまででも飛んでくれます。我々の実験結果では、標高350mの展望台で測定した際に、30km近く飛んだ、という結果も得られています。実験結果によっては、100km以上飛んだことがあるという話もあるようです。
こちらは展望台の様子。

そしてもう一つ、基地局と同時にデバイス側の設置高さも重要なポイントになることを忘れてはいけません。デバイス側を、地面に近いところに置いてしまうと、これまた通信距離が著しく短くなってしまいます。

実際、このようにアンテナが低く、かつ障害物(この場合、稲ですが)に隠れてしまうと、通信特性が凄く悪くなります。デバイス側も、ある程度の高さに設置することで、よりLoRaの伝搬特性を引き出すことができると言えます。

(2) 見通しの確保

どんなに高さがあっても、見通しが悪いと全く通信できない、ということもわかりました。

こちらは静岡県浜松市で測定した結果ですが、ご覧になって分かるように遠くまでよく飛ぶ方向と、飛ばない方向でくっきり分かれていることが分かります。(青が届いたポイント、赤が届かなかったポイントです) どんなに高く設置しても、建造物や山など、障害物になるものがあると、如実に「届かない」状況が発生します。

(3) SF値のチューニング

LoRaWAN のパラメータで SF (Spreading Factor) という値があります。LoRa で用いるチャープ型スペクトラム拡散方式における拡散率、ですが、平たく言うと受信感度を調整するパラメータです。おもに SF7~SF10 までの値で調整可能ですが、以下のような感じになります。SF値を上げてくと、受信感度の最大値は -132dBm まであがるのですが、通信可能なデータサイズは 11byte となってしまいます。できるだけSF値を上げて使いたいところではありますが、このようなトレードオフの関係があるため、注意して設計する必要があります。

エリア設計はやっぱり結構難しい

こういった検証結果を受け止めて考え出すと、以下の課題にどうしても直面してしまいます。

都市部は見通しが悪すぎて伝搬特性が良くない

都会は建物が多すぎで、見通しが非常に悪いです。いくつか目にする実験報告を見る限りでも、やはり都市部では2km程度を上限とした基地局設計が無難である、という論調をよく目にします。ただ、それも建物の陰で見通しの悪いところや地下などになるとやはり非常に厳しい状況が予想されてしまいます。

田舎はそもそも高い建物が少ない

逆に田舎になると、基地局の設置に適した高い建物が存在しない、という問題が発生します。そもそも建物がほとんど無いようなケースも。。(牧場など) これはこれで問題で、高い所に基地局を設置するために電柱的なものを設置するとなると工事費もかなり高額になってしまいます。それでもせいせい10mぐらいまでしか上げられないので、LoRaの性能をフルに発揮できるわけではありません。


ということで、良く話題になるLPWA、LoRaWAN ですが、真面目にちゃんと使えるように設計するのは色々と大変ですよ、、というお話でした。我々が進めている農業のプロジェクトでも、これらの課題を解決しながら検証・開発を進めていますので、今後のアップデートにご期待ください。

齋藤 透2

齋藤 透

2017年12月18日 月曜日

自社開発ルータ「SEIL」や集中管理システム「SMF」などの開発を手がけ、2015年から電力小売自由化に向けたプロジェクトに参画。2017年から農業IoTを始める。その他にもSDNや認証、LPWAなど面白そうな技術にとりあえず首を突っ込んでいます。

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