EdgeTech+2022出展企業に聞く!ワールドワイドでのLoRaWAN®事情 ~Semtech社と語るLoRaWAN®今とこれから~ Part1
2022年11月02日 水曜日
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世界でデファクトスタンダードとなりつつある無線規格、LoRaWAN®をご存じですか?
少ない消費電力で遠くまで無線を飛ばせるLoRaWAN®にIIJは着目し、水田の水管理のIoTなどで活用を進めてきました。日本ではまだまだマイナーな存在ですが、これをメジャーにすべく、IIJも業界陣も奮闘しています。
さて、LoRaWAN®を世界でけん引する企業と言えば、すぐに名が挙がるのはLoRaWAN®のベースとなるLoRa®の無線変調技術を開発したSemtech です。本記事では、LoRaWAN®の世界でのトレンドと、事業変革を推進するための最新技術とつながる総合展「EdgeTech+」出展の意気込みについて、SEMTECの植松健太郎氏、玉井洋平氏、高根澤貴之氏にうかがいました。聞き手はIIJの寺井 優太です。
プロフィール
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LoRa®を広める3人
IIJ寺井:本日はよろしくお願いいたします。まずSEMTEC様のお三方の日々のミッションを教えていただけますか。
Semtech植松:ではまず、技術の親玉である玉井さんからお願いします(笑)
Semtech玉井:(笑)。私はSemtechに入って17年半ぐらいです。LoRaWAN®の黎明期とちょうど重なります。当時は、peer to peerの無線では、車のRES(Remote Engine Starter:リモートでエンジンをスタートさせる鍵)だったり、猿を保護するために取り付けて移動をトラッキングしたりといった採用例はあったんですが、LoRa®の可能性を活かせているとはいいがたい状況でした。ここ最近でようやく、ネットワークらしい会話ができるようになり、いよいよLoRa®本来の特性が活かせるタイミングが来たのかなと感じています。
Semtech高根澤:改めまして高根澤です。私はSemtechに入って4年になります。もともとは車の鍵の無線化と、それにかかわるデバイスのサポートをしていました。無線のアナログ のエンジニアから、レーダーなど幅広くやってきました。 LoRa®は無線の技術がベースにはありますが、たくさんのセンサーの情報が1つのゲートウェイに繋がっていくという特徴があるので、色々な方とネットワーク連携の部分で協力しながらLoRa®関連の事業に取り組んでいます。
Semtech植松:植松です。 私の役割は、LoRa®を日本で普及するため、色々な企業にアプローチして、事業を開発していくことです。そういうわけで、LoRa® Japan Task forceのChairmanも務めています。実はまだ入社して11ヶ月なのですが(笑)
IIJ 寺井:LoRa Alliance®Japanの代表でもありますしね(笑)
Semtech植松:そうですね (笑)。Chairmanという肩書をいただいているので、LoRa®を扱っているパートナーの皆様のために、総務省と「法改正、どうにかならないか」などと、直接話をする機会もあります。
LoRa®の利用事例色々
IIJ寺井:最近のLPWAの動向ですが、世界ではLoRa®がデファクトスタンダードになっていると感じています。先日フランスで開催されたLoRaWAN® World EXPO では様々な事例がありましたが、Semtechさんは何に注目されましたか?
Semtech植松:LoRa®はとても自由度の高い技術なので、とにかく色々な所で使われていますよね。例えば、Tata communicationsは町全体の照明やカメラ、人の管理などあらゆるものをLoRa®で繋げて一元管理しているそうです。
あとはいわゆる、見守り系のサービスですね。「誰がどこにいて、どんな状況なのか」ということを全て把握できるシステム・アプリケーションは今後増えていくと考えています。
IIJ寺井:見守り、トラッキングはSemtechが開発したLoRa Edge™の技術がうまく活用できる分野だと思います。
Semtech植松:そうですね、位置情報の検知ではLoRa Edge™の技術をうまく使えると思います。日本は高齢化社会になっていて労働人口が減っていくので、高齢の方をシステムで見守るサービスの需要が増えていきますよね。日本以外にも、イタリアなど他の国でも、高齢者の見守りは、クリティカルな問題です。SDGs、カーボンニュートラルを初め、企業として取り組まなければならない様々な社会課題に対して、課題解決のKeyになるにはIoTの活用であること。
これからの人類の生活をサポートするにはIoTの技術が必要だというのは、各国の考えとして既にあるのではないでしょうか。
消費電力が少なく、どこでもトラッキング可能
IIJ 寺井:見守り、トラッキングとなると、GPSトラッカーやBLEビーコンの利用が想定されると思うのですが、LoRa Edge™を使うメリットとは何でしょうか?
Semtech高根澤:LoRa Edge™の1番の特徴は、LoRa®、GPS、Wi-Fiのモジュールが1つのボードに集約されることです。屋外ではGPS、屋内では付近のWi-Fiアクセスポイントの情報を利用して屋内外どちらでも1つの端末で位置情報の測位ができます。
位置情報はLoRa®で送信し、クラウド側で演算処理を行うため、非常に消費電力が少なく電池の寿命が長いのも利点です。LoRa Edge™は既存のワンボードのモジュールと比べると大体20分の1ぐらいの消費電力で済みます。そのほか室内や駅など、周りが遮られる場所でも、スムーズに位置検出をしつづけられるのも特徴です。
IIJ寺井:屋内外問わずトラッキングできて、かつ消費電力が少ないため、電池で長期間動かせるというのは、様々なもののトラッキングを検討する上で大きなメリットですね。
Semtech高根澤:電池をエネルギー源とするモジュールだけではなく、エネルギー・ハーベスト電力だとか、最近流行りのゼロカーボン、ソーラーパネルなどを使ったトラッカーなどのモジュールベースの製品も登場していますね。
IIJ寺井:ゼロカーボンソーラーパネルを含めた評価基盤セットの販売も始まりましたし、実運用に向けて今後さらに期待が高まりますね。
センサーも低電力消費
IIJ寺井:Semtechでは無線変調技術やチップ製品だけでなく、センサー部分の取り組みもされているかと思いますが、そのあたりの話もお聞かせいただけますでしょうか?
Semtech玉井:静電容量式センサーとLoRaWAN®モジュールを組み合わせた製品の企画、検証を行っています。先ほど話したトラッカーと同じく、センサーも「低消費電力」というのが最大の特徴です。
静電容量式とは電界を利用した非接触型のセンサーで、物体の有無を検出することができます。超高感度であることも特徴で、極端に言えば人体だと30㎝離れていたり、紙1枚でも近くに置かれれば、その検出ができるぐらいの感度になっています。たとえば今は、農業なら水田管理の自動化で静電容量式を使おうとしています。そのほか、百貨店で棚からモノがなくなったら自動でアラートを飛ばすといった実験も進めています。将来的にはトラッカーの精度を上げて、「どこの棚か」まで見ることができれば面白いんじゃないかなと思っています。
EdgeTech+ 展示の見どころ
IIJ寺井:11月に開催されるEdgeTech+の展示会では、静電容量式センサーやLoRa Edge™もブースで展示するご予定ですか?
Semtech高根澤:はい、これらのデバイスはもちろん出展予定です。ハードウェア部分はもちろんネットワークを加味して、アプリケーションサーバーからダッシュボードまで、LoRaWAN®全体の仕組みを見せていけるよう準備を進めています。
Semtech植松:パビリオン全体のコンセプトにも繋がるかなと思うのですが、基本的にはLoRa®に興味がある方や、LoRa®で何かしたいけれどどうすればいいか分からない方がいらっしゃった時に、知りたいことがワンストップで分かるブースにしたいですね。
ブースを回っていいただければ、LoRaWAN®のビジネスができるノウハウを身につけられるコンセプトで、運営していきたいと思っています。
我々のブースでは、『LR1120』ベースの最新チップの評価ボードやパネルを置きます。その他、人工衛星をLoRaWAN®の基地局として運用する衛星LoRa®の紹介で、人工衛星のモックアップなども置きます。こういった衛星がこれから空を飛んでLoRaWAN®が普及していくところは、アピールしていきたいですね。
IIJ寺井:ブースの一発目に衛星がドン!と来ると、インパクトがありますね(笑)。
Semtech植松:そうですね。モックアップとはいえ、生の人工衛星を見る機会はなかなかないので、こうした機会を通じて新しい技術を少しでも知って頂ければ嬉しいです。
またこういうことができるLoRa®の技術だからこそ世界では広がっているということを来場者に認識していただいて、ビジネスに繋げられるようにしたいと思っています。
IIJ寺井:LoRa®パビリオンの出展ブース数は去年の20社から、今年は約30社に増えています。来場の目的は様々でも、どこかしらのブースで課題の解決ができそうですね。
Semtech植松:そうですね。色々なニーズをもつお客様に対して、そのニーズを全て満たせる展示となるよう、パートナーを募集しました。
IIJ寺井:IIJもLoRaWAN®のソリューションベンダーとしてEdgeTech+に出展しますので、一緒になって盛り上げていきたいと思います。
Semtech植松:通信事業者として登録があり、様々なネットワークソリューションを提案できるIIJさんは、すべてパッケージング化されていて、早く効果が出したいというお客様とマッチしているんじゃないかと思いますね。
EdgeTech+2022概要
事業変革を推進するための最新技術とつながる総合展。
全200以上の企業が提供する各種企画イベントや展示、特別講演や技術セミナー合計130以上のセッションなど様々なコンテンツを通じて、IoTやAIなどのエッジテクノロジーの最新技術を学べるイベントとなっている。
場所:パシフィコ横浜
開催期間:2022年11月16日(水)~18日(金) 10:00-17:00(17日(木)のみ18:00まで)
公式サイト: https://www.jasa.or.jp/expo/about/
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