EdgeTech+2022出展企業に聞く!LoRaWAN®が広まる理由とは?LoRa®をめぐる動き Part2
2022年12月06日 火曜日
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先日公開のブログ「Edge Tech+2022出展企業に聞く!ワールドワイドでのLoRaWAN®事情 ~SEMTECH社と語るLoRaWAN®今とこれから~ Part1」はご覧になりましたか?
本ブログはその続編記事となっているので、まだお読みになっていない方はぜひご覧ください!
今回は、前回に続きSemtech社のお三方に、世界でLoRaWAN®が広まっている理由とLoRa®に関わるプレイヤーの動きをうかがいました。
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日本と世界でのLoRaWAN®位置づけ
IIJ寺井:Semtechには多様な製品、技術がありますが、『LoRaWAN®』はどのような位置付けですか?
Semtech玉井:‘‘最重要‘‘扱いされていると思っていいかなと。すでにシェアを確保している分野や昔からやっていて堅調な事業の静電気保護素子などに比べて伸びしろがある分野ということで、特にJapanにおいてはより積極的に取り組むよう、 Semtech の上層部から言われています。
IIJ寺井:圧倒的な起爆材になる可能性を秘めているプロダクト、そして技術であるということですね。
今おっしゃった「特にJapanにおいては」というところですが、日本のマーケットを見ると、数年前は各LPWAの技術を横並びにしてデータレート・通信速度・飛距離といったスペックの違いだけでどっちがいいのか机上の議論ばかりをしているように感じましたが、最近はそこから先のユースケースを確立できるかで少しずつ明暗が分かれてきたという印象を受けます。LoRaWAN®はユースケースやパートナーも増えていて 着実に存在感を増していますが、それでも世界と比較する日本のLoRaWAN®マーケットの進捗が緩やかな理由はどのようにとらえていますか?
Semtech玉井:海外に対して日本のモジュールが競争力を持ててこなかったという歴史はあると思います。自分たち1社だけで儲かろうとすると歪みが生じてしまい、うまくビジネスが回らない、当時のSemtechはそういった面があって、結局台湾や韓国のような後発のモジュールベンダに先を越されてしまうといったことにもなってしまったというのはあると思います。
今はそうした体制なども変わり、円安もいい方向に進んでいてメイドインジャパンの製品が安く出せるということで追い風になるのではないかなと思っています。またSIGFOXは日本で成功した例としてあげられますが、それに関しては植松がよく存じ上げていますので…お願いします!(笑)
世界でLoRa®WANが広まっている理由
Semtech植松:SIGFOXは日本ではとても成功したと思いますが、運営会社を絞らずLoRaWAN®のように技術をオープンにしていたら、更に成功したんじゃないかと我々は考えています。
そういった点ではLoRaWAN®はすごくオープンなコミュニティになっていて、世界で500社以上が加盟するLoRa Alliance®という、基本的に非営利団体という形で全世界にまたがる大きな組織があり、そちらでディスカッションしながらLoRaWAN®の仕様を決めていき、決定されたものを採用していくという流れを取っております。
実は、我々以外のチップベンダもLoRa®のチップを作ることができるんですが、そのようにプレイヤーに自由度を持たせることによって、いち早く市場に浸透させるということを主眼に動いています。
IIJ寺井:フランスで開催されたLoRaWAN® World EXPOには想像以上に出展企業も多く、LoRaWAN®対応デバイスの選択肢も多さにも非常に驚かされました。MicrosoftやAWSなど世界的な大企業がLoRaWAN®ビジネスに参入してきている状況も市場に浸透してきていることの裏付けだと思います。
Semtech植松:LoRa®に関しては、契約すればチップは自由に作れますし、LoRa Alliance®に加盟いただければ仕様策定に関わるような会議にも参加することができます。デバイス寄りの話をすると、プライベートLoRa®なんかは、自分でゲートウェイを立ててネットワークを組むこともできますし、大規模ネットワークを使う場合にはIIJのようなネットワークの会社と組んでLoRaWAN®のネットワークを構築することもできます。
拡張性も自由度も高いというところは、世界でLoRa®が非常に広まっている要因かと思います。あとは国民性というのもあるかなと思います。海外の人達は自分で何でもやりたがる方が多いので、その考え方とLoRa Alliance®のフリーな考え方がマッチしているんじゃないかと見ていますね。
IIJ寺井:SemtechではベースとなるLoRa®の無線変調技術の部分のみイニシアティブを取り、通信モジュール・プロダクト・それらを使うアプリケーションは誰もが自由に開発できる、という究極のエコシステムであるからこそ参画企業が着実に増えているのですね。
Semtech植松:ありがとうございます。
IIJ寺井:ビジネスモデルの自由度もLoRaWAN®の浸透を後押ししているとおもいます。例えば、基地局を立ててネットワークオペレーターとしてLoRaWAN®を運用するということになると、設備投資に対してユーザが増えるまで年間の費用回収のハードルも高く二の足を踏んでしまう。しかしLoRaWAN®では、ある意味Wi-Fiのようなイメージで利用者が自分で基地局を設置して自らが使うLoRaWAN®無線網を構築できる。
だからこそ使い始める敷居が低く、より多くの方に浸透できる可能性を秘めていますよね。
Semtech植松:おっしゃる通りですね。あとはゲートウェイとセンサーノードの間のLoRaWAN®通信は微々たるものなので、そこに対する値段付けはほとんど0に近いんですよね。そういったところも魅力になっているんじゃないかなと思います。
日本国内での各ベンダの動きは?
IIJ寺井:例えば他のLPWAの規格でプロダクトを作っていたベンダが、市場浸透や構築の自由度にメリットを感じて「LoRaWAN®製品に切り替えようかな?」といったような相談はSemtechにあったりするのでしょうか?
Semtech植松:ありますね。あるLPWAの通信規格オンリーでやっていた某アプリ開発をしている会社さんは、市場性を鑑みてLoRaWAN®をやりたいという風にお声がけいただいたり、デバイスレベルでも、もともとは別のLPWAでデバイスを作っているがLoRaWAN®の方に切り替えたいといった話は多々来ていますね。
Semtech高根澤:SEMTECHのLoRa®RFデバイス「LR1110」や「LR1120」は、LoRaWAN®が日本で勢いが付いてきたというところと、既存のGPSモジュールを使ったトラッカーより大幅に低消費電力になったことで、もともと他のLPWAでトラッカーを作っていたお客様が改めてLoRaWAN®への興味と合わせて「LR1110」や「LR1120」でトラッカーを作るということで、実際に製品開発に取り組まれるお客様もいらっしゃいます。
Semtechが考えるこの先のLoRaWAN®
IIJ寺井:市場は今後さらに活発になると思いますが、SemtechとしてはLoRaWAN®が向かう方向性としてどのようなイメージを持たれていますか?
Semtech高根澤:LoRaWAN®の端末がこれから3億台を超えて、全世界で使われているという状況にある中で更なるコネクティビティを追及しています。LoRa®RFデバイスの「LR1120」ではサブギガ帯のLoRaWAN®に加えて、2GHz帯を追加しております。これは2.4GHzのLoRaやSATCOM S-BANDに対応します。またSX126xやLR11xxシリーズの第2世代デバイスからLoRaWAN®のLoRa®変調に合わせて長距離周波数ホッピングスペクトラム拡散のLR-FHSS変調の送信をサポートします。
LF-FHSSの変調方式によって、LoRaWAN®デバイスは地上にあるゲートウェイだけでなく、衛星に積まれたLoRaWAN®のゲートウェイにアップリンクが可能になります。こういった形で、全世界のものが繋がってデータを送れるような技術をLoRaWAN®に注ぎ込んでいる状況になります。
次回はいよいよ最終回です。ご期待ください!
関連リンク
- Edge Tech+2022出展企業に聞く!ワールドワイドでのLoRaWAN®事情 ~SEMTEC社と語るLoRaWAN®今とこれから~ Part1
- EdgeTech+2022出展企業に聞く! SEMTECH社とIIJが考える、日本のLoRa®の未来 Part3
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