Starlinkの振り返りとAmazon Leoへの期待
2025年12月14日 日曜日
CONTENTS
【IIJ 2025 TECHアドベントカレンダー 12/14の記事です】
IIJ は Starlink Business を始めます
ちょっとだけ宣伝させてください、2025年12月1日からStarlink Businessの受付を開始しました。
プレスリリース直後からさまざまな問い合わせを頂いており、営業と一丸となって頑張っていきたいと思います。
IIJなりの付加価値をStarlinkと組み合わせ、期待に添えるように頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします。
Starlink はサービス開始から5年を迎えました
最初は、2020年10月26日に北米で開始されたパブリックベータ版(”Better Than Nothing Beta”)(ないよりはマシなベータ版)で、主に特定の場所に固定して利用する住宅用(Residential)サービスとして提供されました。
Starlink を時系列でまとめてみる
個人向けサービス
最初に個人向けをまとめてみます。個人向けの衛星インターネットサービスはStarlinkが初めてというわけではないのですが、これだけの規模で普及しているものはありません。
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イベント
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概要
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2020年10月
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パブリックベータ開始
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“Better Than Nothing Beta”。Redidential向けで月額$99、ハードウェア$499で登場。速度は50-150Mbps、主に北米展開。
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2021年2月
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一般向け事前注文開始
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Redidential プラン月額登場、月額$120、ハードウェア$599。
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2022年5月
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ポータビリティ機能追加
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Redidentialプランに$25/月追加で移動利用可能に。
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2022年5月
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Starlink for RVs プラン導入
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モバイルサービス 月額$135。Redidentialより通信の優先度が低い。
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2022年8月
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Best Effort Service 追加
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待機リストユーザー向け低優先度サービス。後のRedidential-Lite
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2022年11月
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データキャップ導入
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Redidentialプランに1TB/月のキャップ。
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2023年3月
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RVプランはRoamに
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Regional Roam (大陸内移動)、Global Roam ( 世界移動)追加。 |
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2024年6月
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Starlink Mini 端末導入
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ダウンロード100Mbps、月額$50 (50GBデータ)からの専用プラン。
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2025年1月
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レガシープラン変更
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Residential + Portability終了。
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2025年4月
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既存ROAMプラン廃止
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ROAMの新プランへの移行。Roam 10GBは短期間終了。
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2025年8月
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Standby Mode 導入
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月額$5で無制限低速データ (0.5Mbps)。緊急通信/更新用。
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データキャップ
「データキャップ」はデータ無制限が基本のRedidentialに1TBの制限を入れたものでした。1日をピーク時間帯とそれ以外の時間帯にわけ、ピーク時間帯の通信量が1TBに達すると通信の優先度が下がるようにしました。実際に影響を受けるユーザは限定的で確認手段も乏しく、本当に制限されているのかもわからなかった記憶があります。
衛星の整備が需要に追いつていない時期、極端に使用量が多いユーザに向けた施策で、現在この制限は撤廃されています。
Best Effort Service
Redidentialは地域あたりの上限契約数に達すると空きができるまで契約できませんでした。回線品質を担保する仕組みなのでおいそれと崩すわけにはいきません。そこで通信の優先度を下げたプランを提供する事で既存ユーザに影響を与える事なくRedidential相当のサービスを提供できる仕組みを用意しました。
後にRedidential-Liteプランとなるこのプランは人気がある地域でのさらなる顧客獲得を可能とし、逆に人気が今ひとつな地域を活性化する施策となります。
これらの施策はStarlinkが置かれた様々な状況に対処するための苦肉の策だったのではないかと思います。一方で必要に迫られて磨いた技術がその後の技術開発に貢献した面もあり、現場は苦労したでしょうが手応えを感じていたのではないかと思います。
法人向けプラン
次に法人向けをまとめてみます。
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年月
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イベント
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詳細
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2021年3月
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FCCにモバイル端末申請
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車両/船舶/航空機向け。ビジネスモバイル基盤整備。
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2022年2月
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Starlink for Business登場
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月額$500、ダウンロード150-500Mbps、優先サポート。
ハードウェア$2,500。 |
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2022年6月
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Starlink for Aviation登場
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航空会社向け。
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2022年7月
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Starlink for Maritime登場
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船舶ビジネス対象。
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2025年3月
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Local/Global Priority登場
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プランの整理・統合、Local Priority 、Global Priorityの2本立てに
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法人向けプランは登場から一貫して優先データを基準にした従量課金でサービスをしています。
しかし固定利用向けのプランは優先データを使い切ってもRedidentialと同等で購入する意味がありませんでした。さらに小容量のプランが登場し実質無制限で利用するユーザが増え矛盾が顕在化していく事になります。
このような仕様が2025年に大きく変更されます。法人向けの固定利用プランが廃止され、実質無制限の使い方が塞がれました。そしてモバイル向けの優先プランは契約容量を使い切ると通信できなかったものが1Mbps(アップリンクは0.5Mbps)で無制限に通信できるようになりました。
個人向けと法人向けの差別化
これまで個人向けと法人向けは差がなく全体を俯瞰して確認できるダッシュボード画面の有無くらいでした。
ところが最近は管理画面の強化がされてきています。
管理ページ経由でマルチSSIDやネットワークの分離やサブネットのカスタマイズを反映したり、テンプレートを作って複数のStarlinkルータの設定を一元管理する事ができるようになりました。この図では2個のWi-Fiネットワークを作っています(SSID-A, SSID-B)。

複数のWi-Fiネットワークが構築できるようになりました、それぞれのネットワークの内容もお仕着せではなく細かく指定ができます。
一般設定の中で「バイパスモード」が設定できるようになりました。設定をテンプレートに保存して一律設定する事もできるので、Starlinkを初めて起動した瞬間からバイパスモードで起動する事もできそうです。

DFSの設定が可能で、無線周波数も細かく調整できるようになりました。
特に「マルチStarlink」なる怪しい機能が気になっています。サポートは詳細を教えてくれず、Stalinkのサポートチャット「Starlinkアシスタント Powered by Grok 」に聞いてみると「法人向けのGlobal Priority Planでは、同一サービスラインで最大2台のStarlink端末を運用可能で、マルチStarlink間のルーティングを有効にすると、複数の端末間でトラフィックを自動的に分散・最適化し、安定した接続を提供する機能です。」との事でした。

この先VPN設定なども組み込む事ができるようになればStarlink Routerのみで高機能なネットワークを構築する事ができそう。面白そうな使い方が検証できましたら紹介しようと思います。
Amazon Leo について
いよいよ Amazon の衛星ブロードバンドインターネットサービスが登場します。
2018年始動の「Project Kuiper」は2025年11月13日に「Amazon Leo」と改名され、企業向けのプレビューが開始されています。
Ulra端末を使うとダウンロード速度が1Gbps、アップロード速度は400Mbps出ると言われています(Xで確認できる動画ではダウンロード速度は1Gbpsを超え1.3Gbpsに迫ろうとしています)。
現在の衛星はプロトタイプを入れても153機、まずは衛星の投入・インフラ整備の段階です。 FCCとの約束で2026年7月までに1618機の衛星を投入する必要があり、様々な打ち上げプロバイダーを活用して大急ぎで衛星を投入していく事になりそうです。Starlinkを追いかけるのは大変そうですが、整備が進めば日本で評価できる日が来るのもそれほど遠くはないでしょう。非常に楽しみです。

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