技術士【エンジニアに役立つ資格】
2023年05月17日 水曜日
1.あいさつ
皆様、「技術士」という資格をご存知でしょうか。
正直知らないという人が大多数かと思います。
一部業界を除きマイナー資格である「技術士」を少しでも周知いただき、取得を目指す人が一人でもでてくることを目的に、今回私は「技術士」というテーマで寄稿します。
2.技術士とは
昨今、多様な業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が声高に謳われており、IT業界人でなくとも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が開催する情報処理試験については、世間一般的にも認知されている状況です。
一方、技術士という資格は、IT業界に限らず世間一般的にも認知度が低くマイナーな資格です。
技術士資格は、工学系の21部門に分かれており、私が保有するのはそのうちの情報工学部門です。
どれほどマイナーかというと、情報処理資格は、高度試験に限定しても数万人/年が受験しますが、技術士(情報工学部門)は500人/年程度です。
同じIT関連の資格なのですが、非常に寂しい状況であります。
技術士は、「公益社団法人 日本技術士会」が主催する技術士法に基づく日本の国家資格の一つです。
本資格は、所持することで技術士と名乗れる「名称独占資格(取得した人だけが名乗れる資格)」ですが、医師や建築士のような「業務独占資格(有資格者だけが従事できる仕事)」ではないため、社会的評価は他国家資格と比べると低く捉えられがちですが、「専門とする技術分野において一定以上の知識や技術を保有する者」と国家から認められているということ自体が、自身のアイディンティ確立のためにも取得する価値があるものと感じています。
詳細は、「日本技術士会」や「Wikipedia」のWebページを参照ください。
3.資格との出会い
私も12年程前にある出会いがあるまで、この資格の存在自体知りませんでした。当時、私は将来を見据えてこのままITエンジニアを続けるべきか悶々と悩んでいる時期があり、自分自身のスキルの棚卸と不足分を学ぶことを目的に大学院の講座に通う時期がありました。昨今、企業において関心が急速に高まっている「リスキリング」に近い活動かもしれません。
同じ講座には、定年退職をされながらも学習意欲が衰えない諸先輩方が多々おり、その中に本資格を取得されておられる技術者の方がおられました。その技術者は、専門領域に関して素人の要望を技術的な言葉に翻訳し同業者に伝え、技術的要素を含む提案を素人にわかりやすく説明することで円滑なコミュニケーションを図る橋渡し役が大変上手でした。そこには幅広い知識だけでなく、積み重ねてきた経験に裏打ちされた技術により、利用者が望む要望を汲み取り、適切な技術により解決策を提案し、真摯に取り組む姿勢を垣間見ることができ、技術者として「ありたい姿」であり、漠然とですが憧れを抱きました。
その出会いから、本資格の詳細を知りたくなり、前述する「日本技術士会」などを調べてみると、”Professional Engineer”という表記を見つけ、今思い返すと恥ずかしながら単純ですが「かっこいい」というのが第一印象でした。
4.取得への道
本資格は受験条件に特徴があります。受験資格がなく基本誰でも受験可能な情報処理試験と違い、技術士試験(第二次試験)では実務経験が求められます。それ故に、受験者数が少ない理由の一つなのかもしれません。
取得で一番苦労したのは、合格当時から情報工学部門の参考書が書店をはじめ、インターネット上にもほとんど存在しないため、傾向と対策を練ったり、過去問を参考にすることができなかったことです。過去問にしても、設問構造は類似するのですが、毎年どのようなテーマが出題されるかは予測が難しく、常に多方面から情報収集を行い、新旧の多様な技術要素に対して概要程度は抑えることが必要でした。
受験当時の情報工学部門登録の技術士は約2000人(令和3年末時点:2302人)と非常にレアであり、そもそも受験経験者すら周囲におらず、情報収集が非常に難しく勉強も大変でしたが、それだけ珍しいものでもあり、取得することで自慢の種にもなるかというのがモチベーションとなっていました。
5.最後に
資格取得後、現在の業務に直接利用する機会はありません。しかし、技術士は、一定の要件を満たす技術者に対してライセンスが付与されることもあり、技術士法で定義された姿を念頭に置き、それを名乗る上でふさわしい姿であり続けならないという責務を全うするという点を意識して業務にあたっており、信条の変化が一番大きいかもしれません。
ITやデジタルが当たり前になってきた時代でも、目に見えない技術に対して分かりやすく丁寧に説明・解説することも我々技術者の役割であると考えており、2022年6月7日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中で述べられている「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」の実現に向けて一翼を担う人材を目指しています。
最後まで読んでいただきありがとうございます。読者の方には、技術士というものが何者かをより詳しく調査いただき、興味を持ったのであれば資格取得に挑戦していただければ幸いです。