スマホの「緊急地震速報」が鳴ったり鳴らなかったりするわけ
2024年08月13日 火曜日
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先日も大きな地震が立て続けにあり、スマホ向けの「緊急地震速報」の警報が作動しました。私たちにとって身近な警報ですが、その仕組み上、ちょっと不思議な動作をする場合もあります。その理由についてざっくりとご紹介します。
お伝えしたいこと
- スマホの「緊急地震速報」は大きく分けて二種類方式があります(データ通信方式・ETWS方式)
そして、ETWS方式について、
- 大手携帯電話のスマホだけでなく、「格安スマホ(MVNO)」でも警報は鳴ります
- ETWS方式は、携帯電話会社との契約がなくても、警報が鳴ることがあります
- 周囲の人が警報が鳴っている中、自分だけ警報が鳴らないこともあります
以下、緊急地震速報(ETWS方式)の仕組みを交えてざっくりと説明いたします。
※ここでご紹介するETWSは、緊急地震速報だけでなく、自治体の防災情報やJアラート(ミサイル発射情報など)でも使われています。また、2024年時点で一般的に流通している機器を想定しています。2018年以前に発売された機器では動作が異なることがあります。
緊急地震速報の通信方式
緊急地震速報を扱っているアプリなどはいくつかありますが、地震の信号をスマホに伝える部分で、大きく方式が二つに分かれています。
データ通信方式※ | ETWS方式 |
---|---|
など、アプリをインストールして使うもの |
アプリインストールが不要なもの |
※統一された呼び方があるわけではありませんが、この記事では説明のためにこのように呼びます
データ通信方式は、YouTubeやLINEなどと同じ通信方式です。緊急地震速報のように同じ速報をすべてのスマホに送る場合でも、一台一台のスマホに対して個別に通信を行なっています。
これに対して、ETWS (Earthquake and Tsunami Warning System) 方式は特殊で、携帯電話の基地局は、個々のスマホを特定することなく、「地震発生」という信号を一斉に送信します。この信号を受信できたスマホが、警報音を鳴らすという仕組みなのです。
実は、スマホは、通話やアプリを利用していない「待ち受け」状態の時でも、自分が現在使用している基地局の電波を受信しています。これは、通話の着信を受けたり、基地局の電波が弱くなったときに、隣の基地局に電波を切り替える動作(ハンドオーバー)を行なうためです。
ETWSはこのような信号の中に、地震の速報を示す特別な情報を埋め込んでいます。この信号は、アプリなどのデータ通信とは別扱いで、携帯電話基地局の中で最優先で扱われます。数多くのスマホに対してできるだけ短時間で地震の情報を伝えるために、ETWSは通常のデータ通信とは異なる特別な仕組みを使っているのです。
緊急地震速報は大手だけでなく「格安スマホ」でも使える
現在日本の携帯電話市場では、docomo・au・SoftBank・楽天といった大手携帯電話会社のメインブランドだけでなく、ahamo・UQ・Y!mobileなどといった大手の「サブブランド」、さらに大手携帯電話会社から基地局などの設備を借りて営業する格安スマホ(MVNO)など、様々なブランドがあります。
緊急地震速報(ETWS方式)の信号を送信しているのは大手携帯電話会社ですが、サブブランドや大手の設備を借りているMVNOの契約であっても受信に制限はありません。
また、格安スマホが販売する「SIMフリースマホ」(オープンマーケット版スマホ)を使っていても、緊急地震速報の警報が鳴動します。
実は、2018年頃までに「格安スマホ」各社が販売していた「SIMフリー版 Androidスマホ (Android 8.0以前)」では、ETWSを用いた速報の一部で、警報が鳴らないという制限がありました。このため、かつて「格安スマホでは緊急地震速報が受信できない」という印象があったのですが、現在この問題は解消しています。
現状、以下のスマートフォン・タブレットであれば、緊急地震速報を受信し、警報を鳴らす機能が備わっていると考えて差し支えありません。
- iPhone 5c・5s (2013年頃) 以降のiPhone
- Android 8.1 (2018年頃以降) 以降の3G・4G・5G対応 Androidスマートフォン・タブレット
※海外向けモデルのAndroidスマートフォンで、緊急地震速報機能が無効になっている場合があります。日本向けモデルであれば問題ないと思われます。
携帯電話の契約をしていなくても緊急地震速報が鳴ることがある
意外に思われるかもしれませんが、ETWS方式の緊急地震速報は、携帯電話の契約をしていないスマートフォンでも警報が鳴ることがあります。たとえば、機種変をしてSIMカードを取り外し、Wi-Fiだけで使っているスマートフォンなどが該当します。
これは、先ほど紹介したETWSの「一斉送信」という仕組みが関係しています。ETWSの信号は個々のスマホを特定せずに送信しています。つまり、どのスマホが契約状態で、どのスマホが未契約なのかは気にしていないのです。また、緊急地震速報は非常に重要な速報なので、契約状態にかかわらず、信号を受信したら警報を鳴らして良い、ということになっています。
ETWSの仕様上は「警報を鳴らしても良い」というものなので、実際に警報を鳴らすかどうかはスマホの設計に任されています。未契約状態でも警報が鳴るスマホもあれば、鳴らないスマホもあると言うことです。
ただ、最近販売されているスマホの様子を見ていると、次のような動作をする機種が多いようです。
- スマホにSIMカードが取り付けられている場合
- SIMカードが有効・無効にかかわらず、SIMカードの携帯電話会社のETWS信号を元に警報を鳴らす
- スマホにSIMカードが取り付けられていない場合
- たまたま受信した基地局の電波※にETWS信号があれば、警報を鳴らす
※SIMが取り付けられていない状態で、画面表示が「圏外」であっても、基地局が送信する特定の信号を受信している場合があります。ただし、利用者がスマホの画面からその信号を受信できている状態かを判別することはできません。
自分だけ緊急地震速報が鳴らないことがある
電車の中や繁華街など、近くに多くの人がいるときに、周辺の方のスマホが緊急地震速報の警報が鳴っているのに、自分のスマホだけ警報が鳴らなかったという体験をされた方も少なくないと思います。
実は、これはETWSの仕組み上、あり得ることなのです。
ETWSの信号は、基地局が送信する様々な信号の中の、特定のタイミングで送信されます。信号を受信する側のスマホが、たまたまその瞬間だけ電波状態が悪かったり、スマホが別の処理をしていたりすると、信号を受信できないことがあるのです。
また、これらの信号は個々のスマホを特定せずに送信されています。そのため、基地局側も、どのスマホが受信に成功したか・失敗したかという追跡が行えません。仮にスマホが信号を受信に失敗したとしても、再度信号を送信したりはしません。つまり、たまたま信号を受信しなかったスマホは、警報が鳴らないままになります。
(できるだけ多くのスマホが受信できるように、基地局からは同じ信号が複数回送信されています。それでも受信できないスマホがでてしまいます)
確実に信号を伝えることよりも、できるだけ早く信号を伝えることを優先したために、このような設計になっているのです。もし、自分のスマホだけ緊急地震速報の警報が鳴らなかったとしても「そういうものだ」と考えていただけないでしょうか。
スマホの設定を確認しておきましょう
ETWS方式の緊急地震速報は、iPhone・Androidスマホであれば、特にアプリをインストールしなくても警報が鳴ります。ただ、スマホの設定によって、警報をOFFにすることもできます。「自分のスマホはいつも警報が鳴らない」……と思っていたら、実は警報機能がOFFだった、という可能性もありますので、一度確認しておきましょう。
iPhone
iOS 17での設定箇所を紹介します。OSのバージョンによっては画面が異なることがあります。
iPhoneの「設定」→「通知」→(画面の一番下)「緊急速報」を開くと次のような画面が表示されます。このスイッチがOFFになっていると警報は鳴りません。
Android
Pixel 8a (Android 14) での設定箇所を紹介します。機種・Androidのバージョンによってが画面が異なることがあります。
Androidの「設定」→「安全性と緊急情報」→(画面の一番下)「緊急速報メール」を開くと次のような画面が表示されます。このスイッチがOFFになっていると警報は鳴りません。
普段あまり意識しない設定ですが、この機会に再確認されることをおすすめします。