IIJの季刊技術レポート「IIR vol.67」(2025年9月号) 発行のご挨拶
2025年09月25日 木曜日

CONTENTS
※本記事は、2025年9月発行のIIR Vol.67より「エグゼクティブサマリ」を転載したものです。
エグゼクティブサマリ
「IIR(Internet Infrastructure Review)」は、IIJが2008年から四半期ごとに発行している技術情報誌です。本号(Vol.67)より「エグゼクティブサマリ」の執筆を前任の島上に替わり、染谷が担当します。以下、本号の内容について紹介します。
第1章「定期観測レポート(1)」では、IIJが運用するブロードバンド・モバイルサービスのトラフィック動向を詳細に分析しています。2024年から25年にかけても、トラフィックは全体として安定的な成長を続けており、利用傾向に大きな変化は見られませんでした。ただし、近年利用が拡大しているAIの普及がもたらすトラフィックへの影響は今のところ限定的ですが、今後も引き続き注視が必要です。
第2章「定期観測レポート(2)」では、IIJが2024年から本格導入した「ディフェンス対応」について報告しています。これは、従来のabuse(迷惑行為)対策を進化させ、悪意ある通信を事前に検知・遮断することで、利用者や社会全体の安全性を高めるものです。実際にディフェンス対応を導入したことで、迷惑メールやフィッシング攻撃の被害件数が大幅に減少し、IIJのメールサービスの信頼性も大きく向上しています。また、送信ドメイン認証(SPF、DKIM、DMARC、ARC)や経路暗号化(STARTTLS)の普及状況も分析し、国内外の最新動向を紹介しています。
第3章「フォーカス・リサーチ(1)」では、VMware問題を契機とした仮想化基盤の見直しや、Kubernetesを活用した次世代プラットフォームへの移行について、IIJの現場における実践と課題を解説しています。VMwareのライセンス価格高騰を受け、IIJでは自社開発のKubernetesディストリビューション「IKE(IIJ Kubernetes Engine)」をVMwareの代替として本格導入し、コスト削減、運用効率化、品質向上を図っています。本来Kubernetesはコンテナのオーケストレータでしたが、コンテナとVMを用途に応じて使い分ける混在環境での活用により、将来性を有した選択肢としてサービス価値の源泉になると考えられます。
第4章「フォーカス・リサーチ(2)」では、2026年3月末に予定されているNTTドコモの3Gサービス終了に向けたIIJの取り組みを解説しています。3G停波は、MVNO事業者や利用者にとって、音声通話、SMS、データ通信などに影響が出る可能性があります。IIJでは早期から技術的・運用的な課題を洗い出し、4G/5Gへ円滑に移行できるよう支援・準備を進めています。今回は特に、端末の実装内容に応じた動作の違いを解説し、具体的な対応方法も示しています。
「IIR」では、IIJのエンジニアが日々直面する課題や社会インフラを支える現場のリアルな声を通して、読者の皆様に新たな気づきや示唆を提供することを目指しています。変化の激しい時代において、IIJは「技術で社会を支える」という使命を胸に挑戦と進化を続けてまいります。
Internet Infrastructure Review(IIR) vol.67(2025年9月発行)