耐障害性向上のための東京非経由回線を開通
2026年02月09日 月曜日
CONTENTS
はじめに
私は新卒配属が名古屋支社であり、そちらでは主にSIerの業務をしていました。6年程度経ち東京本社へ異動となってからは、一転してネットワークサービスの運用/構築/設計に携わることとなりました。これまでとは全く異なる分野への転身であり不安もありましたが、インターネットに関係する業務をこなすことにやりがいを感じてきました。現在の業務はバックボーン設備の担当をしております。
IIJが持つMPLSバックボーン設備とは?
私が担当している設備はMPLSプロトコルによって構築されたバックボーン上で、社内基盤向けにL2VPNを提供するネットワーク設備です。DC間の大容量かつ柔軟な通信を実現する基盤として稼働しており、以下の特徴を持ちます。
- PE(Provider Edge)と物理接続するだけでL2接続が可能

提供イメージ図 ※実態は東京/大阪/名古屋内に複数拠点ありますが、省略して記載
- 日本国内に加えて北米や欧州といった海外にも展開済み
- 東回りはアメリカ経由、西回りはロンドン経由の直通線を利用することで、世界一周も可能なトポロジ
- IIJバックボーンマップのPOPの9割は対応
- IIJのインターネットの拠点間通信に本設備が利用されており、AS2497を支える基盤として重要な役割

IIJ社内サービスとの関係図
- 物理構成においても耐障害性を重視しており、ラック配置やノード台数、キャリア回線本数、物理ルートなど、冗長化可能な部分は極力冗長化
本記事では、このバックボーン設備における耐障害性向上のための取り組みと、東京非経由での回線開通がもたらした効果について、実際の事例を交えながらご紹介します。
IIJバックボーンの設計思想
異POP×異キャリア×異ルート構成
- POP間は100〜400Gbps×複数本で異なるPOPへ多重接続
- 0系/1系のように、拠点により2系以上の多重冗長構成を確保
- マルチキャリア化によりキャリアの敷設ルート差を最大活用
その結果、ひとつの事故や災害が起きても通信が丸ごと停止するといった事態を避けられます。たとえば、同じトンネルや電柱にケーブルがまとめて通っている場合、工事のミスで“一気に全部切れてしまう”ことがありますが、ルートをきちんと離しておけば、そうしたリスクを抑えることができます。
また、地震や液状化、断層、火災といった“場所に依存するトラブル”にも強くなります。あるエリアで大きな被害が出たとしても、別のルートが生きていれば通信を維持できるからです。
さらに国際回線でも同じ考え方を取り入れており、可能な限り海底ケーブルだけでなく、陸揚げ局やバックホール区間も複数に分散させています。これにより、単一箇所での障害を防ぎつつ、海底ケーブルの長期断といった大きなトラブルにも備えられる構造になっています。
キャリアと連携した物理ルート可視化と設計反映
東京に依存する課題と、東京非経由ルートの必要性
- 東京の災害で白井DCCが孤立するリスク
- 東名阪トラフィックの増加による帯域逼迫
- 東京から地理的に離れた経路であること
- 既存の東京経由ルートと物理的に交差しない
- 災害リスクが低い区間を選定
- 遅延特性とのバランスが取れている

2025/11時点バックボーンネットワーク図

白井に限定した接続図
東京非経由回線の開通
2024年4月計画開始し、キャリア選定や開通手配/作業などで1年8ヶ月の月日が経ち、2025年12月東京非経由で白井-大阪間の100Gbps回線を開通しました。つづいて2026年2月、白井-名古屋の100Gbps回線が開通しました。
開通により
- 関東圏から東京に依存せずに大阪/名古屋への疎通性を確保
- BCP要件に対応した白井DCCの継続運用が可能
- 東名阪回線の帯域増強
といった成果につながりました。
(白井孤立におびえる生活から脱却され、運用メンバーも歓喜しております)
社内SNSでも大きな反響があり、IIJバックボーンマップにも新ルートとして反映されました。

開通イメージ図
東京非経由開通の苦労話と今後
苦労した点
東京非経由を実現するため、まず複数のキャリアに声をかけ、東京からできるだけ遠ざけるルート案を出してもらうところからスタートしました。ただ、今回はキャリアごとに個別設計が必要な要求であり、提案が出そろうまでにはどうしても時間がかかります。さらに、提示されたルートが要求仕様を本当に満たしているのか、そして今回の構成として妥当といえるのかを、社内で何度も議論しながら一つひとつ検証していきました。机上の条件だけでは判断できない部分も多く、実際にどう運用に影響するのかを想像しながら調整を続ける作業は、なかなか骨が折れました。最終的に「このルートで行こう」と社内で合意形成できるまでには約1年。ルートの選定から開通まで、予想以上に長いプロセスとなりました。
今後に向けて
耐障害性のさらなる向上を目指し、特定エリアへ依存した構成から脱却し、真の多ルート化を実現していきます。加えて、IIJバックボーンのさらなる強靭化に向けて、以下の取り組みを進めています:
- 余裕を持った主要POP間のさらなる帯域増強
- 物理多ルート化の継続(災害・断線リスク低減)
- キャリア回線のモニタリングと既存改善(品質監視・張替え・経路再設計など)
IIJネットワークの耐障害性向上と、安定したトラフィック転送を実現するため、今後も継続してサービス基盤の強化を進めていきます。
2026年2月11日~13日に大阪で開催されるJANOG57 Meeting in Osakaに、IIJはブース出展します。
「日本のインターネットを支えるIIJのバックボーンを図解してみた」と題したIIJバックボーンの展示を行いますので、ご来場の際にはぜひIIJブース(小間No.A05)にも足をお運びください。
JANOG57やIIJブースについては、以下のブログで紹介しています。
https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/35135