無線センサー導入前に重要な電波調査とは?~オフィスフロアでのセンサー導入レポート
2026年01月30日 金曜日
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はじめに
IIJでは、センシングデータの利活用と、センサー機器を管理・運用するためのクラウドサービスとしてIIJセンシングデータマネジメントサービス(以下、SDMS)を提供しています。 今回は、SDMSを利用して実際に社内のオフィスフロアに温湿度のモニタリング環境を構築した際、事前に行った電波調査について紹介したいと思います。
SDMSのネットワーク構成
SDMSは現在、LoRaWAN®という通信プロトコルを利用したセンサーおよびゲートウェイに対応しています。 センサーから取得したデータはLoRaWAN®のプロトコルを利用しながら、LoRa®とLTEという二つの無線通信を介してクラウドに送られます。

ここで重要になってくるのがセンサーとゲートウェイ間のLoRa®通信です。よくLoRa®は、数km単位で通信が届く規格として紹介されることがあります。これは半分正解で、半分間違いです。確かに数km単位で通信することもできますが、それは開けた屋外など通信に有利な条件が揃っている場合に限ります。屋内環境では壁や障害物があるため、Wi-FiやBluetoothよりは遠くまで届きますが、数km単位で安定して通信できることは滅多にありません。そのため、事前調査なしで設置をした場合、いざ機器を動かしてみると思ったよりも通信できていない、といったトラブルも起こり得ます。
電波測定機能について
SDMSではこの様な設置トラブルを防ぐため、事前調査用のツールとして電波測定機能が提供されています。この機能では、専用の電波測定デバイスを使って、設置予定のセンサーとゲートウェイ間の通信環境を簡易的に確認できます。ここからは実際の電波測定の方法について紹介していきます。
1. 道具の準備
用意するものは以下の3点。
- PC
- 電波測定用デバイス(LZ-01V2)
- ゲートウェイ(TLG3901BLV2)
2. ゲートウェイを設置予定場所に設置して電源を入れる
ゲートウェイは電源を接続すると自動で起動し、完全に立ち上がるまで3〜4分待ちます。 アンテナは以下のように垂直に立てて設置してください。 可能な限り高く遮蔽物の影響が少ない場所にゲートウェイを設置するとより広い通信範囲を確保できます。

3. 電波測定用デバイスをセンサー設置予定場所に設置する
正確な結果を得るために、アンテナは設置面に対して垂直になるように調整します。 想定しているセンサーの設置位置と同じ高さで測定することを推奨します。

4. 電波測定用デバイスに電源を入れて5分待つ
電源に接続すると自動で測定が始まり、測定が完了すると測定デバイス上に以下のような表示がされます。
※ここに出る結果はあくまで参考値のため、正確な結果は次のSDMS上で確認してください。

5. 結果を確認する
測定が完了するとSDMS上で以下のように各結果が表示されるのでPCで確認します。測定の結果、設置非推奨と判定された箇所は赤く表示されます。もし、設置非推奨の箇所がある場合は、設置場所の変更やゲートウェイの追加等の検討を推奨します。

実際に電波調査をしてみる
実際にオフィスの中で調査をしてみました。センサー6台、ゲートウェイ1台を設置する予定でした。事前調査では、センサーの代わりに電波測定デバイスを配置して通信状況を確認していきます。

ゲートウェイは来客用の飲料を保管している業務用冷蔵庫の上に設置しました。

測定デバイスは各部屋のテーブル上などに設置して計測しました。

調査結果
実際に調査を行ってみるとゲートウェイから一番離れたS1地点で通信が安定していないことが分かりました。
| 設置地点 | 判定 | 通信成功回数 | 平均RSSI | 平均SNR |
| S1 | X | 20/30 | -107.65dBm | -14.36dB |
| S2 | 〇 | 30/30 | -75.1dBm | 8.72dB |
| S3 | 〇 | 30/30 | -67.17dBm | 9.65dB |
| S4 | 〇 | 30/30 | -50.4dBm | 10.3dB |
| S5 | 〇 | 30/30 | -56.7dBm | 9.28dB |
| S6 | 〇 | 30/30 | -88.13dBm | 3.99dB |
要因は様々あると考えられますが、S1とG1の間に金属製のドアなど通信に影響を与える遮蔽物が多く存在していたため、通信が安定しなかったことが一因として考えられます。 改善案としては、ゲートウェイの配置変更もしくは増設が考えられましたが、設置できる場所に制約があったため、ゲートウェイをG2の地点に増設することにしました。

本設置後の結果
調査結果を踏まえて、実際にセンサーとゲートウェイを設置してみました。今回、センサーはLAS-603V2という温湿度センサーを設置しました。このセンサーは1時間間隔で温湿度のデータを送信するセンサーですが、3日分のデータを確認してみると欠損なくデータが受信できていることが確認できました。
| 設置地点 | 1日目 | 2日目 | 3日目 |
| S1 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
| S2 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
| S3 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
| S4 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
| S5 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
| S6 | 24/24 | 24/24 | 24/24 |
まとめ
今回は、SDMSを利用して実際に社内のオフィスフロアに温湿度のモニタリング環境を構築した際、事前に行った電波調査について紹介しました。 今回の結果からも分かるように悪条件が重なってしまうと、数km先まで届くはずのLoRa®であっても100m圏内でも通信が安定しない場合があります。 LoRa®に限らず、無線を利用した通信環境を構築する際は、事前調査が重要になってきます。 SDMSでは、皆さんをデバイス導入前の事前調査の段階から支援する機能を提供しています。実際に利用現場で調査から行ってみたい場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください(✉:sdms-info@iij.ad.jp)。