3Dプリンタで小型DC “DX edge” の模型を作る
2025年12月05日 金曜日
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【IIJ 2025 TECHアドベントカレンダー 12/6の記事です】
DX edge / マイクロデータセンター(Zella DC)
時折記事になっていることもありますので、なんとなく見たことがある方もいるかと思います。下のようなラックっぽい設備をIIJではDX edgeサービスとして提供しています。


IIJ はビルとしてのDCを使うのが難しいけど、DCのような設備が欲しいという要件に対して様々な設備を提供しています。そうしたDC代替設備で、一通りの機能が揃っており最も小型化されているのがマイクロデータセンター(以下、MDC)です。一見するとオフィスにたまにあるおしゃれラックのようですが、内部構成は以下のような全部入り構成になっています。

空調、電源、消火設備と一通りそろっています。写真のMDCはフリーアクセスではない普通の床に置かれていますが、これは展示専用というわけではなくて空調を自前で備えているのでこういうことができるというわけです。便利そうですね。特にDCまで光ファイバを簡単に引けるような状況にない開発途中の土地なんかにこれがあれば、MDCでネットワークとコンピューティングを支えつつ周辺の開発を加速してあげるなんてことができるかもしれません。こんな便利そうなMDCなのですが、ものとしては写真の通りの地味さです。展示会とかチラ見されても「単なるおしゃれなラック」と思われてしまう可能性があります。オフィスに馴染むように綺麗にまとめればまとめるほど、見た目のインパクトは無くなってしまいそうです。これは悔しい。
そんな経緯で、写真ではなかなか伝わりにくいMDCの仕組みをアピールするための模型を作ることになりました。模型制作時にはペーパークラフトによる模型がすでに存在していたのですが、お客様訪問ならともかくとして展示会に輸送したりお客様に触れてもらったりということを考えると耐久性に不安があります。IIJ技術研究所には 3D プリンタがありますので、ABS でがっしり作っておけば持ち運びにも耐える便利な模型になるのではないでしょうか。
試作一号機
模型を作るとして、そこで伝えたいことは何なのか、ということを検討していくと「これ一台に必要な機能性が全て備わっている」という点が一番大切であるという話になりました。模型制作でも映像制作でも同じですが、一番伝えたいことをしっかりと握っておくことは大切です。あれもこれもと欲を出すと、結局何が言いたいのかよくわからないものになってしまいがちです。そんなわけで、一番伝えたいことをなるべくストレートに作ってみたのが下の写真です。

全ての機材を埋めてあるわけではありませんが、消火設備、UPS、PDU、空調装置を並べてみました。横にある箱はシールは貼っていませんが、空調の室外機です。真ん中にある Equipment#1 というのはお客様機材ということで、MDC の中にマウントするようにしたら、他の心配は必要ありませんよ、という模型になりました。こういった試作が簡単にできるのは 3D プリンタの良いところです。もちろん CG にするのは簡単なのですが、CG から実物をイメージするというのは意外と高度な技能です。多くのものづくりに関わった経験がないと最終的にはこんな感じだろうか?というイメージを持つことができません。この試作品を見つつ、あとはどこに手をいれたいかを議論していきました。その結果、次のポイントとして空調の効率化に関する工夫を模型に盛り込むことになりました。
機材で埋め尽くされたラックの冷却は見た目よりもずっと難しい話です。DC に設置するラックでもちょっと油断すると空気がラック内で部分的に循環してしまい DC 建屋の冷却システムと排熱のやりとりができなくなってしまいます。DC で作業する人にとっては常識だと思いますが、これを回避するために空気の流れを制御する板やフィルムを色々と追加することも珍しくありません。DC に立ち入る機会がない方は、Interop という展示会がありますのでそちらに行ってみることをお勧めします。Interop では、毎年新製品や新技術を駆使したネットワークを構築し、ShowNet として展示しています。この ShowNet を構成するラックは展示物として誰でもみることができます。このラックをよくみると、機材の周辺にプラスチックの板が嵌め込まれているものがあります。この板は空気をエリア分けして、ラック内部での循環が起きないようにしています。ほとんどの機材は、前面パネルを横方向に拡大する形でラックを横に埋めるように整流版が取り付けられています。空きスペースがある場合、前面パネルと同じ位置にくるように大きな整流板を取り付けてフタをしてあるはずです。これはほとんどの機材が前面吸気・後面排気となるようにファンを内蔵しているためです。
ラックマウント機器の吸気と排気の方向は歴史的には一定せず、前面吸気・後面排気の機材もあれば、側面吸気・側面排気の機材もありました。中には側面吸気・後面排気の変態的な機材もあったと記憶しています。ですので、注意が必要ではあるのですが、現代的な機材であれば、空調設備は前面吸気・後面排気を前提に設計しておくと多くの機材に対応できます。
試作二号機

試作一号機に空調設備を追加したのが試作二号機です。イラストも書き直しているので、ちょっと印象が変わっています。最大の変更点は、機材の右側に冷気供給用の吹き出し口が付いていることです。これにより、前面吸気の機材に効率的に冷気を送り込むことができます。フリーアクセスに普通のラックを設置しただけだと、床下から冷気を吸って天井に向けて流すという基本的な流れは作れるものの、各機材の冷却事情にまで配慮が行き届かないこともあります。MDC であれば、IIJ が考える最低限の空調設計が最初から組み込まれていますので、機材の排熱不良が起きる可能性は大きく減るでしょう。見様見真似で自前のラックを設置するよりも安全なのではないでしょうか。そんな主張が模型に追加されました。
吸気はこれで良いとして、排気の方はどう処理されるのでしょうか?

排気に関しては、最下段の空調ユニットを引き出すことで確認できるようになっています。ユニット上面のメッシュ部分で排気を吸入し、右端の細長いダクトから冷気を供給します。どういう仕組みでそうなっているのかはフタを外してみるとわかるようになっており、内部には小型のエアコンが収納されています。実物はもうちょっと考えた作りになっていますが、模型ですのでコンセプトが伝わりやすいようにラフに組み合わせてあります。空調の仕組みを説明するには十分な材料が揃ったと言えるでしょう。空調ユニットの内部まで説明するかどうかは担当者の匙加減でしょうけど、収納しておけば悪目立ちもしないのでデメリットは少ないかと思います。

イラストを綺麗にした分、必要なものが一式収まっているのかという部分が弱くなる感もありますので、背面には文字による説明を強めに入れています。前後を使い分けつつ説明していけばうまく伝わるのではないか、という目論見です。
完全体

試作二号機で良さそうである、と話が進みましたので細部を調整して完成としました。全体にシールでお化粧してあったり、部品の強度を上げるためのリブを入れたりという工作物としての改良はいくつか追加されていますが、基本構造はこれまで見てきた通りのものとなっています。
色々と旅に出たりしていますので、どこからの展示会などで見かけることもあるかもしれません。その際には、手作り感もあわせてご賞味いただければと思います。

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