松江データセンターパーク 新棟開設からの運用状況

2026年04月02日 木曜日


【この記事を書いた人】
河内 海斗

2023年に中途入社し、データセンターファシリティの企画・開発全般を担当。最近は液冷設備や省人化、運用効率化などの検討に従事。将来の夢は南の島でのんびり暮らすこと。

「松江データセンターパーク 新棟開設からの運用状況」のイメージ

はじめに

IIJデータセンターを象徴する松江データセンターパークで新棟(システムモジュール棟)が竣工してから約9カ月が経ちました。
今回は竣工後に実際データセンターで行われている運用の様子をご紹介します。

松江データセンターパークの概要やシステムモジュール棟建設時の様子は以下の記事にて投稿をしていますので、併せてご覧ください。

サーバラックの搬入・立架

竣工式典が終わり、真っ先に松江データセンターパークで行われたのがサーバラック搬入・立架工事です。
従来、松江データセンターパークはコンテナ型データセンターを中心に運用していたため、ビル型データセンターにおける数百台規模のサーバラックを搬入する経験はありませんでした。
しかし、サーバ室を1日でも早く利用したいユーザの要望に可能な限り応えるため、品質とスピードを兼ね備えた構築を追求しました。
ユーザや協力会社等の関係各所と綿密な調整を行い、時にはビル型データセンターでの運用経験が豊富な白井データセンターキャンパスのメンバから協力を得て、構築に挑みました。

今回は実際に現地での作業風景を写真と共に紹介します。
作業は全て安全第一で実施しました。

まずは搬入の作業風景をAIで生成したイメージイラストと共に紹介します。

荷下ろし

サーバラックは大型のトラックで輸送され現地に届くため、早速システムモジュール棟で新しく構築したトラックヤードを活用します。

サーバラック荷下ろしの様子

運搬

トラックから無事に荷下ろしが完了したら荷捌き室へ移します。
また、場合によっては続くトラックが次々と来館されるため、速やかな荷下ろし等を行う必要があります。
1日に約40台近くのサーバラックを搬入する日もあり、一度に荷捌き室に入りきらないため、荷下ろしした後も速やかにサーバ室へ運搬していく必要があります。
サーバラック本体は大物なので運搬は1台ずつです。各々の役割を事前に明確化し、無駄のない作業と各所での連携が重要となりました。

運搬時は荷捌き室を始め、搬入ルート各所には養生を必ず施します。
せっかくの新棟なので傷や汚れがつかないよう、データセンター運用メンバや協力会社の皆様は普段以上に注意を払い、傷や汚れが付かないように徹底しました。

サーバラック運搬の様子

墨出し

サーバ室に搬入したサーバラックは順次立架作業に移ります。
立架作業前には図面から設置位置を特定し、サーバラックが一列キレイに並ぶように墨出し(マーキング)を行います。横から見たときにサーバラックごとで凹凸がなく、一直線に並ぶように1mm単位で調整をします。
作業はとてもスムーズに進み、協力会社様の手腕と経験値が光る場面でした。

墨出しの様子

立架固定

墨出しが完了したら、順次アンカーボルトの打設を行いサーバラックの立架固定を実施します。
サーバラックは重量物のため、作業中にサーバラックを落として本体や設備が損傷しないよう数人がかりで慎重に作業を進めます。
現場ではこまめな声かけもしており作業中の連携もバッチリでした。
また、サーバラックを立架したときに傾きがないようライナープレートを挟み、水平角を調整しています。

サーバラック立架作業の様子

完成

これらの作業を繰り返し、1架列キレイに収まった写真がこちらです。

サーバラック立架後

非常に美しくサーバラックが立架されています。
サーバラック本体の製作誤差や床面の水平精度、または墨出し時の誤差などから多少のズレはあっても不思議ではない作業を寸分の狂いなく、スピード感をもって完成させることができました。

液冷設備試作環境の構築

2025年9月11日にプレスリリースで発表した液冷設備試作環境の構築の様子も少しお届けします。

液冷設備試作環境

本試作環境の構築ではシステムモジュール棟のサーバ室に、既存の空調設備を活かして導入できるAALC(Air Assisted Liquid Cooling)と呼ばれる冷却技術を導入し、空冷空調技術と液冷技術を組み合わせたハイブリッド冷却方式の環境を試作しました。 
IIJは写真の一番右側に写っているAALCの構築工事を実施し、IIJのデータセンター内では初となる液冷設備実装の経験でした。 
取り組みの詳細はプレスリリースをご覧ください。 
プレスリリース:https://www.iij.ad.jp/news/pressrelease/2025/0911.html

搬入~設置

構築のスタートはサーバラック同様に搬入からです。
梱包は海外からの輸出となるため、厳重に木箱の姿で届きます。

荷姿

木箱から出し、サーバラック本体同様にAALC本体をサーバ室へ運搬します
紆余曲折がありつつも、無事に立架が完了しました。
立架作業はサーバラックと同様の手順で実施しました。

AALC立架後

止水堤防の設置

AALCやサーバラックを囲むように、L字鋼材で止水堤を設けました。

止水堤防設置後

これは万が一、水配管から液体が漏水してしまったときに他のサーバラック架列に被害がなるべく広がらないようにするための措置です。
用いる液体の総量を確認して、全ての液体が漏れてしまってもせき止められるように設計しました。
思っていたより止水堤のスペースやL字鋼材の高さが必要なく、見た目も違和感なく設置することができました。

水配管の敷設

次に水配管の敷設を行いました。
配管は工場で事前に製作し、現地で接続しながら構築していくやり方です。

水配管写真

配管は事前に3Dデータ等を活用して、曲げや長さ、分岐口の配置などを設計して製作をしています。
かなり狭いスペースに敷設することになったため、工場側ではとてもシビアに設計・製作をしていただきました。

ある程度準備が整ったら配管の接続をしていきます。
今回導入したAALCの配管接続口は上部にしかなかったため、一旦床上のレベルまで下ろします。

水配管敷設状況の様子

狭い隙間も事前の設計通り収まり、最難関ポイントであった床上部分もなんとか敷設できました。
配管素材は基本的に金属系を用いていますが、分岐して各サーバラックへ敷設する配管は可とう性のあるホースを使っています。
可とう性があるといっても約2インチサイズのホースとなるため、LANケーブル等ほどの柔軟性はなく、ここも事前の設計が非常に重要となるポイントでした。

リークテスト

丸1日かけて配管の敷設と接続を完了させ、最後にリークテストを行いました。
サーバ室内の床に水一滴でも垂らしたくなかったため、リークテストは液体ではなく窒素ガスを用いて行いました。

リークテスト中の様子

段階的に圧力を高めて、数分~数時間待機しながら減圧していないかを確認します。
ちなみに、結果は・・・

減圧しました(リーク発生)。

原因は一部加工したホースの接合部などから漏れていたため是正しました。
よく耳を傾けると対象の箇所から空気が抜ける「シューーー」という音がするので、場所の特定ができました。
いきなり注水をしなくて本当に良かったです。

圧力を高めたら別の箇所からもリークしたため、こういったことを2~3回繰り返し、ある程度の圧力をかけても減圧しないことを確認して注水作業に移りました。

注水作業の様子

注水が完了したら電源を投入し、試運転させ異常がないかを確認して構築完了です。
ここには書ききれないトラブルも乗り越え、事故なく構築を完遂させることができました。

本環境は既に役目を終え、本番環境移行のため撤収しています。
運用中も大きなトラブルなく、漏水等も発生せずに稼働を続けることができたため、初の設備構築としては上々の出来だったかと思います。

半年点検の様子

システムモジュール棟が竣工してから約半年が経過したため、実際に建設工事プロジェクトに携わった関係各社様と運用開始後の点検を実施しました。
このイベントは運用中の悩みがないか、建屋や設備の不調はないかを現地で確認し、何かあれば修繕・改善を図る取り組みです。
総勢10名以上でシステムモジュール棟を隅々まで点検した様子を簡単にお届けします。

初めは屋外からスタートし、普段あまり立ち入らない屋根の上にも上りました。
屋根の溝部分に少し枯葉等が見受けられましたが、大量ではないので一旦様子見です。

屋根上点検の様子

他にも屋上の設備架台に上り各設備や環境を確認しました。
屋上も屋根上同様、溝に枯葉が少し溜まっている様子が見られました。
これも現状では少量のため一旦様子見ですが、1年を通して量が多くなるようであれば対策を講じる必要があります。
実はIIJが保有しているデータセンターの1つである白井データセンターキャンパスでは枯葉に大変悩まされており、松江データセンターパークでも設計段階から警戒していましたが、今のところは大きな問題になってなく安心しました。

屋上点検の様子

その他にも外周と屋内を巡回し点検を続けました。
データセンターの肝となる空調設備もしっかりと点検し、外観だけでなく細かい監視や制御設定も確認しました。

空調設備点検の様子

設備の暗転稼働に向け、半日かけてシステムモジュール棟を文字通り隅から隅までを点検しました。
点検は大きな問題なく終了しましたが、今回見つけた要改善事項は直ちに対応してより良いデータセンターを目指していきます。

おわりに

IIJのデータセンターは設計・構築だけでなく、このような運用開始後もしっかりと力を入れています。
建屋の竣工をゴールとはせず、運用中でも常に改善に向けた取り組みを行い、時には全く新しい設備やシステムを導入していきます。
今後も松江データセンターパークでは安定稼働に向けた運用のみならず、新技術の導入や地域社会との連携も行いながら地方デジタル基板の核となるデータセンターとしてインフラの強靭化に寄与してまいります。

河内 海斗

2026年04月02日 木曜日

2023年に中途入社し、データセンターファシリティの企画・開発全般を担当。最近は液冷設備や省人化、運用効率化などの検討に従事。将来の夢は南の島でのんびり暮らすこと。

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