IoTビジネス事業部初の特許取得。DVIを用いた「生育状況に応じた自動水管理」の裏側

2026年04月03日 金曜日


【この記事を書いた人】
mkoseki

電機、建材、化学メーカを渡り歩いたあと、2021年からIoT、アグリ事業に参画。 やんちゃなゴールデンレトリーバーと暮らしています。

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はじめに:自己紹介とミッション

こんにちは、IoTビジネス事業部のmkosekiです。
現在所属しているアグリ事業推進部において、日々技術開発に邁進しています。

私はこれまで、エンジニアとしていくつかの特許出願に携わってきましたが、その中でも重要な役割の一つとして、当部署の齊藤と西川が開発した「自動水管理のコア技術」を、強固な知財として形にする実務を担当しました。
この度、その成果が実り、無事に特許として登録されました(特許第7425846号)。

実際の特許証

私個人としてはIIJに入社して初めて、そしてアグリ事業推進部としても記念すべき第1号となる特許です。今回は、農業現場の知恵を「DVI(発育指数)」という指標でロジカルに再構築し、権利化するまでの軌跡を、実務担当者の視点から振り返ります。

特許第7425846号:生育指数(DVI)に連動した水位管理の自動化

今回の特許の核心は、「気温や水温から算出される稲の生育指数(DVI)に基づき、刻々と変化する育成ステージに最適な『理想水位』を自動で導出し、許容範囲を考慮した目標水位を自律的に設定・制御する」という点にあります。

【技術のポイント】

農業工学の分野において、積算温度から稲の成長段階を推定するDVIDevelopment Index:発育指数)はよく知られた手法です。
しかし、本特許ではこれを単なる指標に留めず、以下のような具体的な自動化の仕組みとして実現しています。

  • DVIに基づく理想水位の導出: 圃場やその周辺の気温・水温(第1データ)からDVIを算出し、その数値に関連付けられた育成ステージごとの「理想水位」を自動的に求めます。
  • 許容範囲を考慮した目標水位の設定: 単一の目標値だけでなく、DVIごとに規定された「理想水位に対して許容できる水位の範囲」を考慮して、動的に目標水位を決定します。
  • フィードバックによる自律制御: 実際の圃場の水位(第2データ)を監視し、設定された目標水位に応じた給排水の指示をリアルタイムに生成・送出します。

これにより、カレンダー(日付)ベースの管理では対応しきれない、年ごとの気象変動や圃場ごとの生育差をシステムが吸収し、常に「今の稲」に最適な水環境を維持することが可能になりました。

既知の手法を「独自の権利」にするための実務的苦労

私の役割は、齊藤と西川による原案を、法的に価値のある特許へと昇華させることでした。そこには、実務担当者ならではの泥臭いプロセスがありました。

J-PlatPatを駆使した、自力での事前調査

実務を進めるにあたり、避けて通れないのが既存特許の調査(先行技術調査)です。今回は、工業所有権情報・研修館の「J-PlatPat」をフル活用し、自力で徹底的な調査を行いました。

DVIのような「よく知られた手法」を扱う場合、膨大な特許群の中から「何が公知で、今回の発明のどこに新規性があるのか」を精緻に切り分ける必要があります。検索式の組み立てから公報の読み込みまで、膨大な時間を掛けて既存技術を洗い出しました。この自ら手を動かして調べ尽くした経験が、その後の権利化に向けた大きな自信となりました。

専門家との対話による「技術の言語化」

特許事務所の弁理士さんと直接議論を重ねる中で、最も注力したのは「DVIを用いること自体は既知の知見だが、それをいかに自動化の仕組みに組み込み、実現していくのか」という実装上の創意工夫を抽出することでした。現場の仕様や物理的な挙動を、一文字の曖昧さも許されない明細書の論理へと落とし込んでいく作業は、非常にエネルギッシュな対話の連続でした。

「ベース特許」を創り出すプレッシャー

本件は部署にとって初めての特許であり、今後の自動水管理事業の根幹を支える「ベース特許」としての役割を担っています。齊藤・西川の想いが詰まった原案のポテンシャルを最大限に引き出し、他社が安易に回避できない「強い権利」として成立させるために、請求項(権利範囲)の表現一つひとつに最後まで考え抜きました。

取得を振り返って:組織へのインパクト

2022年のプレスリリース(IIJ、発育指数に基づいた水田の水管理を自動化する技術を開発)の時点では「特許出願中」だったこの技術。それが正式に登録されたことは、私たちの歩みが間違っていなかったという公的な証明になりました。

  • IIJでの初実務: 会社の知財フローを確認しながら、自身の経験を活かして完遂。
  • 部署初の特許: チーム全員の自信に繋がる第1号の創出。

終わりに

特許取得はゴールではなく、この強固な土台をもとにさらなるサービス進化を遂げるためのスタートラインです。
このベース特許を武器に、日本の農業を支える「確かな技術」を世に送り出していきたいと思います。

本特許のシステムの実証写真白井市の実証圃場にて

mkoseki

2026年04月03日 金曜日

電機、建材、化学メーカを渡り歩いたあと、2021年からIoT、アグリ事業に参画。 やんちゃなゴールデンレトリーバーと暮らしています。

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