【前編】施工のプロ、ベイシス社に聞く IoTの施工現場における課題とは?
2023年06月27日 火曜日
CONTENTS
IIJではこれまでIoT分野において、自治体様や農家様など、様々な案件でIoTソリューションの提供を行ってきました。しかしソリューションを提供する上で重要になるのがIoT機器の「施工」です。
IoTではセンサーやカメラ、基地局など多くの機器を利用することが多いですが、IIJ自身もこれまで色々な環境下での機器設置に携わる中で、施工に関する課題やノウハウの不足に頭を悩ませてきました。
「施工」において、どんな課題があるのか、実際にどういったことを考慮しなければならないのか、現場に行って経験されたことのない方も多いのではないでしょうか。
今回は、全国にパートナーの施工会社を持ち、IIJとも協業しながらIoT機器や基地局、通信機器の施工管理・保守を行っているベイシス株式会社様の土田様、吉澤様にお話をうかがいました。
聞き手はIIJの大西元大が務めます。
※こちらの記事は前編・後編の2部構成になっております。
プロフィール
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ベイシス社とIIJ
IIJ大西:本日はよろしくお願いいたします。
まずはじめに、ベイシスのお2人の普段のお仕事をご紹介いただけますか。
ベイシス土田:私は普段営業をやっておりまして、いわゆる新規開拓に注力して活動しております。その中でもIoT分野のお客様からの引き合いが非常に多いので、IoT関連のメーカー様やSIer様向けの営業活動がメインになっておりまして、全国を飛び回っています。
ベイシス吉澤:私は基本的に、基地局の建設であったり、工事系の設計・施工管理をさせていただいております。
IIJ大西:ありがとうございます。
続いてベイシスさんとIIJとの協業のきっかけというところを、土田様からご説明いただけますでしょうか。
ベイシス土田:3・4年ほど前まで弊社はIoT分野はほとんどやっていなくて。何か新しいことにチャレンジしたいという会社の方針がありまして、これから流れが来るIoTに注目していました。それから色々調べていく中で「スマート農業」というキーワードがあり、Webで検索するとIIJさんの記事を至るところで拝見して、いつかIIJさんと一緒に仕事ができないかというのはずっと思っていました。
2020年に東京で開催されたスマート農業関連のシンポジウムにて実際にお声がけさせていただいたというのがきっかけになりますね。
IIJ大西:その時はちょうど静岡の最初の水田センサーの実証実験をやっている時で、基本的には地場の施工業者にお願いして基地局設置もやっていましたが、我々も施工のノウハウがあまりなく、図面は現地写真に機器のイラストを書き足したポンチ絵のようなもので済ませたこともありました。
これを全国できっちりやっていく上で施工パートナーがいないことが課題になっていたので、すごく良いタイミングでベイシスさんがちょうど当てはまって感激しましたね。
自治体向け水害監視ソリューションの施工
IIJ大西:そのあと一緒に色々案件をやらせていただいていますが、直近でいうとH市やF市の自治体様からの案件がありますね。
豪雨で水位が上がった際に、用水路や排水機場でセンサーを使って水位を見たり、どの程度水があふれているかなどの実際の現場状況をカメラで監視したりといった水害監視の案件で、IIJからはLoRaWAN®の水位センサーやカメラ(※下写真1枚目)、ソーラー基地局(※下写真2枚目)を提供させていただきました。
実際に現場で施工をする上で、どんな苦労や工夫がありましたか。
ベイシス吉澤:やはり一番は足りない部材があったときに急遽現場近くの店舗で施工のための材料を調達したところですね。この案件では弊社からも多めに材料を持って行っていたので、不測の事態にも対応できる状況が常に作れていました。
IIJ大西:そこは最初から調達しやすい部材で設計するのもポイントになるのかもしれないですね。
事前に電波調査などの準備をしますが、実際に設置すると事前の電波調査時との現場状況のズレが出てしまって思ったように通信性能が出ないこともあります。そこをアンテナの高さを少し上げたりして、柔軟に対応いただけたところが非常に助かりました。
あとは工期ですよね。天候などのトラブルでなかなか作業が進まないといったこともあるのかと思いますが、そこはやはり苦労されていますか。
ベイシス吉澤:そうですね。
この案件では天候などのトラブルはありませんでしたが、基本的にはそういった問題が「ある」前提で予定を組んでいます。
また効率的に現場を周れないパターンも考慮して工期を組みます。H市の場合だと予定よりも工期を短縮できたのですが、想定外の問題が発生した際に臨機応変に施工順を組み替えて対応したこと、また事前の工夫で施工性をある程度確立できたことが工期短縮の大きな要因かなと考えています。
IIJ大西:今回の案件では水位センサーとカメラをセットで20か所近く設置していますが、新たに水路の天端(壁面の最上部)にも付けられるようなスタンドを新規に設計していただいたというのは大きなポイントかと思っています。(※下写真:スタンド設置の様子)
そのスタンドの設計で工夫された点などありますか。
ベイシス吉澤:現場調査の際、機器を設置するスペースがないところが散見されていました。そこで省スペースでかつ強度が担保できるスタンドがあれば、工期短縮できるのではないかと考えました。あとは汎用性という意味で、省スペースを活かして全国展開できるものをイメージして設計しました。
またカメラやアンテナ、水位センサーがそれぞれ干渉しないようにミリ単位で綿密に設計しています。ただ1つ課題としては、それを設置するスペースさえない時にどうするか、ということですね。
IIJ大西:9割は水路の壁面にダクターで固定するか(※下写真:ダクター使用例)スタンドで固定するかのパターンで対応できるかと思いますが、1割ぐらいはどうしても個別の設計が必要な場所が出てきますよね。
ただ、このスタンドのおかげで9割くらいの現場で設置できるようになったのは非常に大きいことだと思います。
ベイシス吉澤:そうですね。
F市の案件では、H市で使ったスタンドを活用したことで工程を早めることができました。工期短縮という意味で、こちらのスタンドはかなり有効なものだったと思っています。
IIJ大西:近年、豪雨被害が増加しており、いろいろな自治体さんが水害監視というところに課題を持たれているかと思います。IIJとしても、これを機にそういった課題に対して、施工の信頼性を持って展開できるソリューションを確立できたのではないかと考えています。
ベイシス社が提供する施工にかかわる「講習」
IIJ大西:続いて話は変わりますが、ベイシスさんでは、現場作業にあたって専門の講師による各種講習を提供されていますが、これはなかなか珍しいのかなと思っています。
私も「職長安全衛生責任者教育」と「フルハーネス講習」を受講しましたが、実際に施工を担当していただいた御社の方が出演された実技ビデオを流したり、講師の方が分かりやすく説明してくださったりして、非常に楽しく受講することができました。
こうした講習を提供されるようになったのはなぜなのでしょうか。
ベイシス土田:経緯としては、IIJさんから「元請として安全に対してしっかり対策していきたい」とご相談いただいたところからになります。
弊社は安全に関する専任担当者がおり、弊社社員はもちろん、一緒に工事を行う協力パートナー様にもそうした安全講習を受講いただく環境が整っておりました。
IIJ大西:なるほど、そうなんですね。
例えば無線の基地局でいうと、高所の方が通信性能を出しやすいので、どうしても柵がないような建物の屋上などに設置しないといけなかったりします。そうなると高所作業ということでフルハーネスの着用義務が出てきますが、講習を受けていると自分たちで対応できるので非常に助かります。
ベイシス土田:せっかくなのでこうした環境をお客様にもご提供しようというところで、IIJさんにもお声がけさせていただいた経緯がございます。
IIJ大西:我々と同じように安全対策について課題をかかえているIoTのSIerやベンダーさんは多いと思うので、広く提供されていくと良いのではないかと思います。
ベイシス土田:今まで自社の社員や協力パートナーには当たり前のようにやっていたのですが、今回お声がけいただいて気付いたのは、IoTのお客様(ベンダー・SIer)だと工事の経験や知識・資格がまだまだ蓄積されていない方が多いということです。
お客様にとっても工事の際に何かあっては一大事ですので、我々としてはこれを機にお客様にも我々が持つ安全の「品質」をもとにこうした取り組みをご提供できればと思っています。
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