はじめよう!LoRaWAN(R)でHACCP食品温度管理!

2020年12月11日 金曜日


【この記事を書いた人】
寺井 優太

2019年に電力IoTサービスのプリセールスとしてIIJにJoin。 同年よりLoRaWANプロジェクトに参画し、プリセールスおよび企画推進を兼任。 呼ぶ声あらば全国どこでもご提案に伺います。 趣味は読書とウヰスキーと英国車。

「はじめよう!LoRaWAN(R)でHACCP食品温度管理!」のイメージ

IIJ 2020 TECHアドベントカレンダー 12/11(金)の記事です】

はじめまして。IIJの寺井と申します。
今夏「IIJ LoRaWAN(R)ソリューション for HACCP温度管理」というIoTソリューションを提供し始めました。
今回はその話をします。

屋内におけるLoRaWAN(R)利用の模索

表題のとおり、本ソリューションではLoRaWAN(R)という無線通信プロトコルを利用しています。LoRaWAN(R)については既に当ブログでも何回か紹介していますね。

LoRaWAN(R)は低消費電力で長距離通信可能な無線(俗にいうLPWA)の1つです。通信は低速のため、映像のような大きなデータの送信には不向きなものの、温度やCO2濃度、水位など小さなデータを送るのには最適です。
IIJでは既に農業分野(水田の水管理)でLoRaWAN(R)の活用実績があります。土地が広大で、電池駆動が求められる水田ではLoRaWAN(R)はまさにはまり役でした。LoRaWAN(R)はこのように長距離利通信が得意ということが知られており、屋外での利用にフォーカスが当たりがちですが、屋内での利用はどうなのでしょうか?
ということで、IIJ本社が入居している東京のオフィスビルや、とある商業施設で実際に通信試験を行ってみたところ、結果は以下のようになりました。

写真はIIJの東京オフィスビルでの試験の様子です。
16階の私の自席に割と適当に設置したゲートウェイと、IIJの総合受付のある2階に設置した測定用センサー、これがなかなかよく通信しています。

雑に設置した状態では通信成功率は70%でしたが、機器の設置位置を調整すれば成功率は上がります。また、通信失敗時には送信をリトライさせるなど、仕組みをちゃんと考えれば、実運用にかなうシステムが構築できることが確認できました。
当然、建物の材質や構造によっては必ずしも上記のような結果にならない場合もあります。ですが、対策を施せば屋内のフィールドでもLoRaWAN(R)実用的に利用できそうだと分かったため、このあと紹介するような建物内で使われるIoTシステムにもLoRaWAN(R)を適用する事にしました。

そもそもHACCPって?

表題のもう1つのアルファベット、HACCP(ハサップと読みます)という言葉は、IIJのブログをご覧いただいている方にはあまりなじみのない言葉かもしれません。HACCPとは5つの英単語の頭文字を組み合わせた造語ですが、日本語では「危害分析重要管理点」と訳されます。ちょっと難しいですね。簡単に言うと食品の製造・出荷・提供のどの過程で、微生物・異物混入が起きやすいか予測、分析、手順化して、被害を未然に防ぐ衛生管理手段です。
例えば、「この食品は何℃以下で保管しなさい」とか「この食品の原材料を明記しなさい」とか「製造工程を図式化しなさい」等々、、、
衛生管理という視点で共通のフレームワークを作り適宜改善を行っていくというものです。厚生労働省のもと、2021年6月に食品業界ではHACCPに則った衛生管理が義務化されます。義務化に先立って食料品の包装や外箱に「HACCP認定マーク」を見かける機会も増えました。皆さんも是非見つけてみてください。

IIJの食品衛生管理への取り組み

IIJ LoRaWAN(R)ソリューション for HACCP温度管理」では衛生管理工程の中で冷蔵庫/冷凍庫/ショーケースの温度管理に焦点をあてて課題を解決していきます。具体的にはセンサーで冷蔵庫の温度を自動取得して、クラウドに蓄積し、ユーザが任意のタイミングで閲覧確認、データ取得が出来る仕組みです。また閾値を設定して温度異常時にメール通知させることもできます。温度センサー、ゲートウェイ、アプリケーションと、必要な機器とクラウドサービスがセットになったパッケージで販売展開しており、ユーザは購入後、機器設置、電源を入れるだけで温度管理自動化のシステムを利用できます。

LoRaWAN(R)の技術を活かす

巷でよく見かける温度センサーはWi-FiやBluetooth、有線LANでデータ送信を行っています。
こういった通信方式では、次のような課題が考えられます。

  • Wi-Fi: 通信距離が短いので、ゲートウェイ(アクセスポイント)を多数設置する必要がある
  • Bluetooth: 一つのゲートウェイに接続できるセンサーの数があまり多くない
  • 有線LAN: そもそも冷蔵庫に穴をあけて配線を通せるかなど、物理的な課題

また、通信方式以外の観点では、電源工事や、配線などによる時間と人工のコストも課題として挙げられます。

そこで、冒頭でお話したとおり、屋内でのLoRaWAN(R)が活躍するのです。

この記事で紹介した屋内でも長距離通信が可能という特長以外に、食品業界でのユースケースを見据えたメリットとしては以下があげられます。

1.低消費電力と設置性

LoRaWAN(R)は低消費電力のため、センサーは電池で数年間稼働するため電源工事が不要です。また、センサーを小型に作ることができるため、取付自体も磁石やS字フックで取り付けるので施工工事も不要です。
センサーを設置する際の敷居が下がり、大量導入時のコストも削減できます。

2.少数のゲートウェイで多数のセンサーを接続可能

LoRaWAN(R)では1つのゲートウェイの配下に多数のセンサーを接続することができます。例えば、GMSでは1店舗あたりの冷蔵庫が数百台になることもあり、温度センサーも数百台になることもあります。LoRaWAN(R)であれば、少数のゲートウェイ(基地局)でそれをまかなうことができます。こうした環境ではLoRaWAN(R)の通信距離の長さも有利に働きます。

※GMS:General merchandise storeいわゆる総合スーパーのこと

3.他の無線との干渉を回避する

最近では飲食店やショッピングモールで消費者向けサービスとしてWi-Fiが提供されることは当たり前となり、製造現場でも工場無線にWi-FiやBluetoothが利用されている現場を多く見かけます。Wi-Fiやbluetoothは同じ2.4GHz帯の電波を使っているため相互に干渉します。ここにさらにセンサー類を追加しても、安定した通信ができない可能性があります。
一方、LoRaWAN(R)は日本では920MHz帯を利用しています。もちろん、920MHz帯だからといって必ずしも干渉がないわけではありませんが、2.4GHz帯と比べると干渉がおきにくく、安定した通信が確保できる可能性高い問いのは魅力でしょう。

LoRaWAN(R)ネットワークを効果的に利用する

LoRaWAN(R)に対応したデバイスは温度センサーだけではありません。IIJでは用途に応じて様々なLoRaWAN(R)デバイスを提供しています。
「IIJ LoRaWAN(R)ソリューション for HACCP温度管理」のパッケージを導入することで、飲食店、GMS、工場、倉庫等の現場LoRaWAN(R)の無線ネットワークが構築されることになります。これを利用して、例えば、CO2濃度を測定したり、製造機械の故障予測をしたり、といった、他の用途にもシステムを発展させることができます。

おわりに

IIJオフィスでも実際に本ソリューションを使って冷蔵庫の温度管理をしています。ご来社いただいたお客様にお渡ししている飲料水を保管している冷蔵庫にセンサーを合計3カ所設置しています。ゲートウェイからセンサーまでの距離は最大80m程度離れており、いくつか壁も挟んでいますが、データの欠損もなく、良好に通信が出来ています。
しっかりとした業務用冷蔵庫で常に温度が安定していますので温度異常のアラートがあがることは、まずありませんが。。。
実はご来社いただいた方が見ることの出来る位置にもセンサーが設置されていますので、ご興味のある方は是非お声がけください。

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寺井 優太

2020年12月11日 金曜日

2019年に電力IoTサービスのプリセールスとしてIIJにJoin。 同年よりLoRaWANプロジェクトに参画し、プリセールスおよび企画推進を兼任。 呼ぶ声あらば全国どこでもご提案に伺います。 趣味は読書とウヰスキーと英国車。

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